459円
お財布の中の余裕が、459円だった。
それでいいだろう、と思っていた。
大間違いだった。
クリニックに来ている。
また土砂降りになるだろう、降り出さないうちに、と思い、1時間ちょっと早い時間に歩いて来た。
帰りに土砂降りだったらタクシーを使おう、福祉のタクシーチケットで450円引きになる、と思っていた。
クリニックに来ると、注射の薬がまだ届いていない、待っていてほしい、とのことだった。
タバコを吸おうと思った。
けれどタバコを持ってきていなかった。
受付に、タバコ吸ってきますね、すぐ戻ります、と言ってセブンイレブンに行った。
お財布には余裕が459円あった。
300円のショートホープと159円のライターを買った。
1円も残らなかった。
ラッキーだと思った。
ちょうどお金が足りてタバコとライターを買えた、そう思った。
そしてショートホープを吸った。
なんてわたしは愚かだったのだろう。
ふと気づいた。
ああ、帰りにどんなに土砂降りになっても、タクシーには乗れないや。
それ以上に、今の季節、水分補給すらできなくなってしまったことは痛い。
ほんとうに、1円も持っていない。
物事には優先順位というものがある。
まずはこの季節、なにか水分をとるお金、それを150円前後取っておくべきだ。
それにこの季節、あまりの土砂降りならば歩いて帰ることはものすごく大変だ。
福祉のタクシーチケット、その450円を差し引いた300円前後は取っておくべきだ。
それらを全く考慮せず、わたしはたかが嗜好品(タバコ)に手持ちのお金を全部突っ込んだのだ。
タバコなんてやめちまえ!
ほんとうにそう思う。
けれどわたしにとってタバコはいちばんの楽しみ。
せめて、この季節、そしてそのあとやって来る猛暑には、十分な準備をしてクリニックに通院しようと思う。
追記。
とりあえず生きてグループホームに帰り着くことはできた。