
この歳になって胸を盛ることを覚えた
トリンプのブラジャーがほしいと思っていた。
4年半前に、清水の舞台から飛び降りる気持ちで2枚買ったトリンプのブラジャーを着けているとめちゃくちゃナイスバディに見えていたからだ。
見えていた、というだけだ。
わたしは一応E75のブラジャーを着けていたけれど、ブラジャーを外すとCカップ、いやBカップくらいにしか見えない胸をしているからだ。
恐らく、周りの無駄肉を詰め込み寄せて上げてEカップだったということだろう。
そして年老いたわたしはこの4年半で、体型もさらに崩れてきた。
下着屋でサイズを計ってもらうと、左がD80、右がC80だと言われ、大きいほうに合わせたブラジャーを買うよう言われた。
なぜその下着屋で、フィッティングまでさせてもらった上で新しいブラジャーを買わなかったのだろう。
来週また来ます、と言って下着屋から帰ってきたわたしは、通販を調べ始めた。
そして先日、トリンプのバーゲンセールを見つけた。
そして衝動的に、D80のブラジャーを4枚代引きで注文した。
その結果、わたしのささやかな胸には巨大すぎるブラジャーが4枚も届いたことに打ちひしがれた。
サイズは確かにD80だ。
それなのにとんでもなくでかい。
ブラジャーはデザインごとにフィット感が変わってくるから要試着、という基本を無視して多額の買い物をしてしまったことに絶望した。
メルカリで売れば良い、という周りの声はあった。
でもメルカリはよくわからない。
パッドを詰めればちょうどよくなるかも知れない、と、手持ちのブラジャーのパッドを外して、届いた巨大なブラジャーに3つも4つも詰めてみた。
まぁまぁ隙間は埋まってきた。
ブラジャーの上にタートルネックを着てみると、胸はロケットのように突き出して見えた。
まあいいや、これでいこう、と思った。
職場のみんなはわたしの突然巨大化した胸をどう思うだろう。
豊胸疑惑が生まれたらどうしよう。
この歳になって胸を盛ることを覚えた、なんて恥ずかしい。
けれど通販の失敗とは、ほぼ誰もが通る道だ。
くじけてはいけない。
パッドを詰めまくった巨大なブラジャーを毎日着けて職場に通い、失った金額を取り戻せるくらい仕事を頑張ろう、と思う。