お引越しそして失恋

精神疾患を持っている。
住まいは障害者グループホーム、仕事はB型作業所だ。
今度、今の相部屋のグループホームから、ひとり部屋のアパートタイプのグループホームに移る話が出ている。

相談員さんは言った。
「とりこさんは、ひとり部屋のグループホームにステップアップしていいレベルだと思う。
それに、これからどんどん歳をとっていくと、ステップアップはどんどん難しくなっていく。
ステップアップするのは、1日でも若いうちがいい」
その言葉に、勇気づけられた。

大好きだった、憧れの、今のグループホームの社長にさよならを言わなければならない。
とうとう、そのときは近づいてきた。
わたしは社長に言った。
「わたしがいるうちに、またたこ焼きパーティーしてください。
思い出づくりです」
社長は言った。
「是非たこパしましょう」

グッバイマイラブ。
さよなら愛しの社長。
とってもせつない。
けれど新生活への夢と希望はたしかに芽生えている。

わたしは惚れっぽいから、すぐにまた誰かに恋をする。
その恋が叶わなくてもかまわない。
わたしは片想いをしているだけでも幸せでいられる、そんな女だ。
わたしはきっと、社長のことを忘れていく。
こんなに憧れていた、社長のことを、少しずつ少しずつ忘れていく。

ここのグループホームに来て、ほんとうに幸せだった。
ここのグループホームが、わたしを守ってくれて、わたしを支えてくれた。
ここのグループホームが、第二のわたしのふるさとだ。
感謝を忘れまい。
そして、今まで受けたご恩を、いつか出会う知らない誰かに返していくことができたら、それでいい。

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