R5年度航空大学校受験記録(総合Part2編)

今回は、航空大学校の総合Part2の試験内容と、僕が試験を突破した際の勉強法について話していきます。

追記:この記事はR5年度の受験記録であり、情報が古くなっている可能性があります。あくまで過去の記録としてご覧ください。参考にするかどうかは自己責任でお願いします。

この記事は1次試験の総合Part2編です。その他の記事については以下のリンクから飛んでください。

英語編
総合Part1編
2次試験編
3次試験編
その他編


航大受験前の状態

英語編でも書きましたが、僕はもともと国立大学を志望し、現在文系の私立大学に通っています。もっといえば、パイロットを目指す上で、今でも「理系に行けばよかったかなぁ」と考えてしまうほどです。

なぜ国立大学に進学できなかったのか。それはひとえに、「数学と物理ができなかったこと」につきます。数学でいえば、もともと計算が遅いうえ、めんどくさがって演習問題を解かずにテストに臨み悪い点数を乱発、それによりもっと問題を解かなくなり、テストで悪い点数を取り…という負のループに陥っていました。また、物理は高校1年で受けた物理基礎の授業がとてもつまらなかった(個人比)ことで嫌いになり、結果、高校2年からは文系を選択しました。が、肝心の大学入試では数学が足を引っ張り浪人、予備校時代も高校生の習慣が抜けずに勉強に力が入らず…といった状態でした。

そんな状態だったので、結果的に浪人時代に受けたセンター試験でも数学1Aは56点、数学2Bに至っては40点(各100点満点)というひどいスコアを叩き出し、この点数が響いて結果的に第一志望への進学は叶いませんでした。

そのため、航大受験を決意した時の状態として、「数学は高校3年間やってきたけれど嫌い」、物理は「完全とはいかないまでもほぼ初学」という、考えうる限り最悪の状態で勉強を始めたことはここに書いておこうと思います。

総合Part2の概要と対策

総合Part1の記事でも触れましたが、R5年度の試験から「総合1」と「総合2」が合体し、新しく「総合」として実施されました。Part2の配点は150点(25問)となっています。試験時間は120分のため、Part1とPart2の時間配分をどのようにするかというところも自由となっています。また、Part2に関しては、試験終了後に問題を持ち帰ることができます。

こちらから問題を見ることができますので、雰囲気を掴んでみてください。

まず、どの科目にも言えることですが、試験の範囲を掴みましょう。これから紹介する参考書やテキストは全て、高校生が用いる大学受験用のテキストです。しかし、航大の試験は大学受験とは異なります。そのため、テキストを端から端までやろうとすることが、結果として無駄な努力になってしまいます。(特に僕のようなゴリゴリの文系は、ここで1点でも多く点数を稼ぐことが合格への近道です。80%→100%まで点数を上げるよりも、50%から70%まで点数を上げる方が簡単です。)

そのため、募集要項の試験範囲を確認し、やるべき問題とやらなくてもいい問題の仕分けをキッチリ行いましょう。以下、僕が使用したテキストで試験範囲がどこだったかも、合わせて紹介したいと思います。

時事問題・気象問題

傾向

試験問題の一番最初に登場する問題です。例年、時事と気象を合わせて30点(6問)の出題となるようです。R5は時事問題が4問、気象問題が2問出題されました。

求められる技能としては、以下のようなものがあげられています。

時事問題を含む社会常識及び(中略)自然科学(気象、…)…

令和5年度航空大学校学生募集要項より引用(以下2つも同様)

時事問題の出題の範囲としては、前年の1次試験終了直後〜当該年の1次試験の約2ヶ月前の範囲から出題される印象です。例えば、問24の「日本における水平型宇宙港はどこか(答え:大分空港)の問題は、R4年の12月のニュースです。

対策

主に4つの方法を実践していました。

時事問題

・パイ予備のテキストで勉強する
毎年1次試験の数ヶ月前に、パイ予備から予想問題の形式で問題集が送られてきます。試験前の腕試しとして主に使用していました。

・パイ予備提供の航空時事ニュースを読む
誰でも無料で、一度登録さえしておけば毎日1回無料で航空時事に関するニュースがメールで届くという、実に太っ腹なシステムでした。しかし、パイ予備→航ゼミとなってからは受講生にのみ表示される形式となったらしく、終了してしまい残念です。

・日経電子版を購読する
今年の航大受験を始めるにあたり、就活準備と時期が並行していたこともあり、先輩に勧められて購読を始めました。「日経U23割」というキャンペーンを実施していたため、初回2ヶ月は無料、その後6ヶ月は料金が半額、というとてもお得なキャンペーン中に入ったことを覚えています。

航空時事のみならず、政治・経済からスポーツに至るまで、幅広い分野の知識を手にいれることができるため、個人的には一番のおすすめです。実際にR5の問21では、「2022年4月1日時点での北大西洋条約機構加盟国の組み合わせとして正しいものを選べ」という問題が出ました(日本、フランス、トルコ、エジプトのうち正解はフランスとトルコ)。全問正解を目指すならアンテナを広く張っておく必要性がわかると思います。

・世界史・日本史(・政治経済)を勉強する
R5の試験でNATOについての問題が出たこともあり、歴史を少し学習する必要があるかもしれません。僕は高校時代に世界史B・日本史Bを、さらに高1時代に政治経済の一部を勉強していたため、ほぼ常識の範囲内で解くことができましたが、理系の皆さんは高校で地理を選択している人が多いかもしれません。その場合、世界史Aと日本史A(B科目より簡単な科目)、もしくは政治経済のそれぞれ戦後史分野に一通り目を通しておくといいかもしれません。

また、同じくR5では最高裁判所裁判官国民審査についての問題が出題されました。こちらも政治経済で出てくる分野です。各国の政体、日本の各種制度などについては大学受験レベルの知識が問われるため、高校で勉強していない人はやっておくことをおすすめします。

・Twitterで航空時事のニュースを拾う
こちらもかなり有益です。航空時事だけにピンポイントに絞った情報が得られるので、スキマ時間にささっと見るだけでもだいぶ知識がつきます。また、疲れた時のモチベーションアップにもなります。

以下、参考になったTwitterアカウントを貼っておきます。(随時追加予定)

気象問題

高校時代、僕が(物理を捨てて)進んだ文系では、理科分野で「生物基礎」と「地学基礎」を学びました。結論から言うと、航大の気象問題はほぼこの「地学基礎」分野から出題されます。そのため、気象問題についてはパイ予備のテキストで復習をして、各種の模試で腕試しをする、といった勉強方法で、R5の試験では2問中2問を正解することができました。

そのため、おすすめの参考書としてここでは
・地学基礎の問題集
・センター試験の地学基礎過去問
をあげたいと思います。

勉強する分野ですが、教科書の中の「第3部:大気と海洋」「第5部:自然との共生」の2つを勉強しましょう。その他の範囲は切り捨て、物理や数学の勉強に時間を割いた方が効率的です。

物理

1度目の受験の時、僕が不合格となった原因の分野です。

傾向

R5の試験では54点(9問)分の配点で出題されました。例年約10問程度出題される印象です。難易度としてはそこまで難しくなく、センター試験レベルだと感じました(センター試験受けてないけど)。R5から出題傾向が変わり、公式を丸暗記していれば解けるといった問題よりも、事象の成り立ちや変化の言語的説明が求められる問題が増えました。

求められる技能としては、以下のようなものがあげられています。

自然科学(力学、熱力学、波動、電気と磁気等)…

同上

対策

1年目と2年目で使用した教材が大きく異なるため、それぞれ分けて解説しようと思います。

・1年目
パイ予備のテキストと過去問を主に使用していました。物理はほぼ初学の状態からだったので、まずはパイ予備の基礎テキストを使用し、映像を見ながら理解を深めました。

かなり分かりやすい解説でとても理解が深まりましたが、その後少しYoutubeを見ていると同じ先生がTry itの映像授業で出ていました。おそらくこの人だとは思いますが…

(航大模試の解説映像などもこの先生が担当していたので、委託して授業をやってもらっていたんですかね?)

話を戻します。

結論として、1年目(R4)は物理の分野で不合格となってしまいました。原因としては、英語の記事でも書いたように「演習が足りなかった」こと、また「勉強を始めた時期が圧倒的に遅かった」こと、さらに「そもそもパイ予備のテキストが試験範囲を網羅していなかったこと」が挙げられます。

恥を忍んで告白しますが、1年目に僕が本格的に勉強を始めたのは7月でした(1次試験が8月中旬)。今思えばよくそれで合格できると思っていたなぁと自分で自分に呆れるばかりですが、とにかく圧倒的に時間が足りず、テキストも上述した基礎テキストのほかに何もやることができず、ただただ過去問を回している状態でした。しかし、過去問は出題の傾向を教えてくれますが、試験範囲を網羅している訳ではありません。案の定本番では実力不足がモロに露呈し、打ちひしがれて会場から帰ったのを覚えています。

また、パイ予備のテキストには航大物理の試験範囲の公式がしばしば載っていないことがありました。そのため、分からない公式が出てきた時にテキストに戻って勉強することができず、自分でググって公式を覚える…なんてことが多々ありました。

・2年目
昨年の反省から、まずは物理の効率的な勉強法を知ることが先決だと考え、R4の試験に合格した先輩・不合格だったが1次試験で高得点をとった先輩・理系の友達などに話を聞きました。そしてそれを元に、以下のテキストを使って勉強を進めました。

2年目は、ほぼこの1冊で物理の勉強を完結させました。
リードαのおすすめポイントとして、以下の2点をあげたいと思います。

・問題構成が分かりやすい
・航大の問題に出題形式が似ている

この問題集は単元ごとの公式が冒頭に列挙されており、その後に「基礎CHECK→基本例題→基本問題→応用問題」といいう順で問題が載っています。そのため、解くうちに少しずつ自分自身がレベルアップしている実感があり、とても面白かったです。

加えて、航大物理と問題のレベルが似ている点もポイントです。

実は、航大の過去問を見てみると、リードαの中からそっくりそのまま出されている問題が存在します。どの問題がどの試験問題とそっくりさんかは割愛しますが、とにかく出題形式が似ており、それによって自分がどのレベルまで理解をしていればよいのかを見極めることができる、とてもよい問題集でした。

また、この問題集は大学受験用のため、解かなくてもよい問題が存在します。そのため、総合2で高得点をとった先輩に問題の仕分けをお願いし、「解けないとお話にならないレベル」「いい問題だから何回もやろうレベル」「解けなくてもいいけど、答えを見て理解しようレベル」「時間の無駄レベル」の4つにレベル分けをしてもらいました。文系出身で初学者だった僕にとってはこの仕分けがとてもありがたかったです。

ちなみに、僕は以下の範囲を勉強しました。参考にしてください。


第1編:全て
第2編:全て
第3編:第14〜16、18章
第4編:27章以外全て
第5編:なし
第6編:なし

その他、補助教材的に使っていた教科書・サイトなどを以下にあげます。

現象を理解するために先輩から勧められて購入しましたが、あまり見る機会がなかったです。

公式を公式として捉えるのではなく、なぜその式に至ったのかを分かりやすく説明してくれるサイトです。リードαだけでわからない時によく閲覧していました。

こちらも、公式に至る流れを理解したいときに見ていました。パイ予備の先生が解説していたということもあり、頭に入ってきやすかったです。

数学

傾向

R5の試験では60点(10問)分の配点で出題されました。こちらも例年10問程度が出題されます。難易度も物理と同様、そこまで難しくない印象です。

ただし、注意点として、毎年1〜2問の割合で数学3を知っていると楽に解ける問題が存在します。この問題の扱いをどのようにするかという点が、合格のための1つのポイントです。

求められる技能としては、以下のようなものがあげられます。

数学(数と式、二次関数、二次方程式、三角比、三角関数、指数関数、対数関数、微分、積分、平面図形、ベクトル等)…

同上

対策

数学についても物理と同じく、1年目はパイ予備の基礎テキストと過去問を中心に勉強していましたが、2年目は市販のテキストを使いました。

何をやったのか。ズバリ、青チャートです。チャートには様々な種類がありますが、この青チャートが完璧に解けるようになれば、航大の数学は満点が狙えると思います。それほど高校数学の全範囲を網羅し、基本から応用まで幅広い問題が詰まった問題集だと感じています。また、実際の1次試験で出た問題がリードαと同じく何問か掲載されています。どちらが先でどちらが後かは分かりませんが…

(余談ですが、チャートは分厚く持ち運びが不便なので、僕は本体からページを切り離し、1章ずつ切り離して持っていくようにしていました。)

これは物理にも言える勉強法ですが、僕はリードαや青チャートの問題を解く時、最低3回は問題を解くようにしていました。具体的には、

1回目:答えを見てもいいからとにかく解法を覚える
2回目:1回目の直後に、答えを見ずに問題を解く
3回目:1〜2日の時間をあけ、答えを見ずに問題を解く

といった具合です。僕は「公式を覚えていない」「解法を覚えていない」という弱点を抱えていたので、まずは問題を見た時に解法をきちんと思い出せるようにし、また使うべき公式をしっかりと覚えるようにしました。こうして演習量を相対的に増やしたことで苦手意識もなくなり、結果的にそれが1次試験突破に繋がったと思っています。

青チャートについても、リードαと同じく先輩に問題の仕分けを頼みました。本当に感謝しています。

参考までに、僕が勉強した範囲を載せておきます。


数学Ⅰ:第1章、第3章、第4章
数学A:第3章

数学Ⅱ:第3章、第4章、第5章、第6章、第7章
数学B:第1章、第2章

*数学Ⅲの取り扱いについて
結論から言うと、僕は捨ててしまってもいいと思います。数Ⅲを使って解く問題は数ⅡBの知識でも解ける問題ですし、また出題量は1〜2問です。加えて大学の勉強など、時間的制約もあると思います。1次試験で1桁台の順位を目指しているならもちろん対策が必要ですが、僕は「まずⅠA・ⅡB分野を完璧にする」という戦略で勉強を進め、実際にこれで1次試験を突破しました。

それでもどうしても数Ⅲを学習したいという方には、白チャート(チャートの中で一番簡単なもの)をおすすめします。仕分けをしてくれた先輩曰く、このレベルで十分対応可能だそうです。

最後に

航大受験前の僕にとって、数学と物理はテストで全く点が取れない、一番嫌いな科目でした。しかし、航大を受験すると決め、コツコツと演習を積む中で、問題に対して正しい公式を当てはめ、正しい解法を用いて答えを導くことの楽しさに気づきました。

これを見ている方の中にも、文系で数学が苦手、あるいは物理の勉強をしたことがなく受験に対して不安になっている方がいるかもしれません。しかし、そういう「できない」科目ほど、得点を伸ばすチャンスです。そして、「できない」の根底にあるのは大抵、「勉強量が足りない」です。数学・物理ができる理系(もしくは文転した文系)の人は、僕たちが社会・英語を勉強している間にコツコツ数学・物理の勉強をしてきたのですから、これはある意味当たり前のことです。

僕はもともと英語が得意だったため、2年目の受験の際、数学・物理と英語の勉強時間の比率を「9:1」もしくは「8:2」にするよう心がけて毎日を過ごしていました。「ここが苦手を克服する最後のチャンスだ」と自分に言い聞かせ、毎日勉強を続けてこれたことで、本番でなんとか及第点の点数を取ることができました。

結論、やる気と正しい計画さえあれば、数学と物理は得意科目になります。

ぜひ、数学と物理を克服して1次試験を突破してほしいと思います。

いいなと思ったら応援しよう!