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人の名前が覚えられない

 人の名前を覚えるのが苦手だ。昔からそうだったわけではない。学生時代は、何度クラス替えしようと、苦もなくすぐにクラスメイトの名前を覚えたものである。まあ、あの頃は、脳みそも若かったし、人にも興味があったのだなあ、としみじみしている場合ではない。社会人になって以来、どんどん人の名前が覚えられなくなり、いろいろ失礼をはたらいているのである。早急に、対策を練りたいのである。

 私は、これからもまだまだ生きるつもりである。多くの人に出会うつもりである。やはり、努力と工夫によって、なんとか「名前覚え力」を取り戻すしかないのだが、努力と工夫には方向性が大切である。あさっての方向へ努力すると、徒労に終わる。今まで、徒労ばっかりしてきた私がいうのだから、間違いがない。

 そこで考えたのだが、大人になってからでも、すぐに覚えられた名前もある。ひとつは、「珍しい名前」である。例えば、先ごろ将棋のプロ棋士になられた「獺ヶ口笑保人」新四段の名前は、秒で覚えた。(笑保人は、笑顔を保つ人という意味と、英語のeffort=努力という意味があるらしい。素敵なお名前である)。他にも、珍しいお名前の人には時々会うが、たいてい、すぐに覚えるし、忘れない。

 また、「有名人と同じ名前の人」もすぐに覚えられる。日本では、まずは苗字を覚えることを求められるが、有名人と同じ苗字の人は印象に残りやすい。昔、同じ職場で短い期間一緒に働いた人で「志村さん」という方がいた。「志村」というと、私の世代では(たぶん、他の多くの世代でも)、まず「志村けん」を思い出す。尚且つ、リアルで「志村さん」に出会ったのは、今までの人生で私はその一回きりである。初日に「うわあ、志村けんと同じ苗字かあ」と、この時も秒で覚えられた。

 以上の二点を踏まえて、初めての人に会い、名前を告げられたら、「あ、有名人のあの人と同じ苗字ね」と頭のノートに書くようにしたらいいのではないかと思い付いた。例えば、よくあることなのだが、「はじめまして、吉村です」などと自己紹介され、会話を交わした後、家に帰ってから、「あー、吉村さんだっけ、それとも、吉岡さん?吉川さん?」となるのだ。だから、自己紹介の時点で、頭の中に大阪府知事とか、考古学者の人とかをその人の顔を見ながら思い浮かべれば良いのではないだろうか。

 もちろん、すぐに思い浮かべられない可能性の方が高いので、これは、普段からの練習が必要である。街中で「鈴木医院」という看板をみたら、その度に、拓さんとか福君とか、蘭々ちゃんとか、鈴木姓の人を思い浮かべるのだ。実は、ここ数日は、時々、道を歩くとその練習をしている。

 あと、この春は、久しぶりに甲子園の選抜高校野球を見ようかと思っている。そこで、一試合につき、18人以上の私と縁もゆかりもない高校生の名前を覚えて、人の名前を覚える練習をしようと思っている。その時も、毎回、同じ名前の有名人を思い浮かべる練習をしようと思っている。同じ名前の有名人がいない場合は、その人は「珍しい名前」ということなので、それだけで覚えやすいということになる。

 この方法がどれだけ効果があるかはわからない。しかし、まあ、何もしないよりは良いと思うので、実行にうつすつもりである。


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