贈り物が嬉しいとは限らない
お兄に振り回されるのは慣れっこだけど……
クリスマスを目前に控えたある朝、玄関のベルが鳴った。
宅配便で、ZOZOから着払いだと言う。
自分は何も頼んでいないし、夫も休みだったので聞いてみるが心あたりはない。その金額2万円越え。
あー これって着払いで送り付けてくるタイプの詐欺か? と身構えつつ玄関へ出た。
誰宛の荷物かと思えば、長男の名前がそこにはあった。
品名「マイメロ財布」
女の子へのプレゼントだろう。
『あいつ…… こっちに着払いで注文したな?』
ドスの効いた心の声は宅配業者のおじさんの前で漏れていた。
支払いをしなかったら(受け取らなかったら)返品されるのだろうし、
何も聞いていないのだからそうしてやろうかと思った。
時は師走。クリスマス直前。年末で忙しい宅配のおじさんも困っている。
早く決断しなくてはならない。
「ええいっ!! ヤツが支払いに応じなかったらマイメロ財布使ったる!痛いおばさんになってやる」
と心を決めた。
最近キャッシュレスに慣れてしまったため、家の中の現金をなんとかかき集めた。バタバタだ。もうこういうのやめてほしい。
お兄へ電話するがいつも通り出ない。LINEも見ない。
しばらく放っておくしかないのだ。
後日やっと返信がきた。
「間違えて送り先家にしちゃった」だとお??
ADHDもあるから本気ともそうでないともとれる。
取りにくるというから顔も見られるしお金と引き換えにすればいいやと思った。
が、こない。
もうクリスマスイブ当日。
「やっぱいけない。寮までもってきて」
ときたもんだ。
馬鹿らしいが、それでも顔をみたい気持ちもあって朝一で届けに行った。
食べ物やら飲み物やら思いつくあれこれを一緒に詰めて。
過保護すぎると言われていたのに私は変わらず、
あいつはちゃっかり利用するんだ。
昼夜逆転の生活で寝不足や肌荒れ。
何度も色を変えたであろう髪のダメージはものすごくて人形のごわごわの毛のようだった。
色々言いたいことがあったけど、顔を見たら泣きそうになってしまった。
見ていられないのだ。「早く寝なよ」これしか言えなかった。
飽きっぽいのに仕事(ホスト)が続いているのは頑張っているということだ。そこは認めようと思う。
自分の居場所があるってことなのだろう。
端数はまけてあげたけど支払いもしてもらった。
次回いつ会えるかわからないけど、幸せでありますように。
世界は広いと気づきますように。