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眠れるアメリカ文学たちをゆり起こす時が来た
1.はじめに
既読、積ん読含めてアメリカで書かれた長編、短編小説が僕の本棚で埃をかぶっている。ここ数年、完読するのは池波正太郎、藤沢周平といった日本の時代小説ばかり。海外文学は書店で衝動買い→前半をつまみ読み→本棚で仮眠という状態が続いているからだ。
子どもの頃から海外文学は好きなのだが、人名や地名が身近ではないだけに本腰で読まないと単なる文字追いになってしまう。ほろ酔い気分で飲んでいる缶ビールのラベルを見たら、ノンアルコールだったみたいな感じだろうか。(実際にそんな経験をしたことはないが)
気がつけば今年も4月。会社の決算が3月ではないのでこの時期が新年度という感覚はあまりないのだが、それでも桜が咲きはじめると新しく何かをスタートしたいという気になる。
自問自答を繰り返し導き出したのは、『本棚に眠るアメリカ文学を丁寧に読み返そう!』というコミットメント。かつての(自称)文学少年が(仮称)文学中年となる2023年度のスタートである。
2.起こしたアメリカ文学をどう推すべきなのか?
昔から読後の余韻を残すには、読書感想文が良いと決まっている。だが令和の時代に原稿用紙を広げて「800字から1200字以内」ではクラシック過ぎる。とにかく現代社会はDX推しなのだ。
ずっと前から記事を読むために利用していたnoteというプラットホームが頭に浮かんだ。これを使って読み返した小説の記録を残していこう!Web上ではあるが、それは間違いなく僕の書斎だ。
たしかにさえない部屋ではあったものの、そこは僕が生まれて初めて手にした自分だけの場所だった。
僕の蔵書が置かれ、ひとつかみの鉛筆が鉛筆立ての中で削られるのを待っていた。
作家志望の青年が志を遂げるために必要なものはすべてそこに備わっているように、少なくとも僕の目には見えた。
トルーマン・カポーティ著
3.さてどれから起こそうか?
・妻から貰った誕生プレゼント
「アメリカ文学」といえば忘れることのない本がある。
われわれ夫婦は毎年、誕生日のプレゼントに本を贈り合う。「相手が自分では買わない(であろう)本」を選ぶというのが唯一のルールだ。
2015年の秋、僕は44歳になった。その年に妻から貰ったのが『アメリカン・マスターピース 古典篇』(柴田元幸翻訳叢書)だ。
柴田元幸が長年愛読してきたアメリカ古典小説から選りすぐった、究極の「ザ・ベスト・オブ・ザ・ベスト」がついに登場!ホーソーン「ウェイクフィールド」、メルヴィル「書写人バートルビー」、O・ヘンリー「賢者の贈り物」......アメリカ古典文学の途方もない豊かさを堪能できるアンソロジー。ポー「モルグ街の殺人」、ヘンリー・ジェイムズ「本物」の豪華訳し下ろしもたっぷり収録の、贅沢極まりない傑作集
たくさんの人たちに読み継がれている名作を集めた、まるでお菓子の詰め合わせのような一冊。これを選んだ妻のセンスに脱帽した記憶がある。
いや記憶ではなく確かに脱帽し、感動すら覚えたのだが、なぜかこの本も3/4ほど読んで、冒頭の仮眠メンバーに加わっている。
あれから8年近く経ち、僕も50歳を過ぎた。老眼もベテランになりつつある。このまま本棚のアメリカ文学たちが永眠しないように、一冊ずつゆり起こして記録していきたい。
これは個人的な僕の読書の記録だが、これからこの書斎で紹介する小説たちが、誰かの心に火を灯すことがあれば嬉しく思う。
・収録作品
☆ ナサニエル・ホーソーン「ウェイクフィールド」
☆エドガー・アラン・ポー「モルグ街の殺人」
☆ハーマン・メルヴィル「書写人バートルビー」
☆エミリー・ディキンソン「詩」
☆マーク・トウェイン「ジム・スマイリーと彼の跳び蛙」
☆ヘンリー・ジェイムズ「本物」
☆O・ヘンリー「賢者の贈り物」
☆ジャック・ロンドン「火を熾す」