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個人事業主の国家公務員!?

   個人事業主と国家公務員。

 前者は自らの能力、技能、人脈を駆使して収益を獲得していくような方である一方、国家公務員というと採用されれば年功序列で何をするしないに関わらず国から給与を貰い続ける仕事(表現に悪意がありすぎますね笑)というように、イメージとしては完全に真逆ですよね。

 しかし、国家公務員の中には税法上個人事業主とされる、すなわち給与所得者ではなく事業所得者として確定申告を要する職種があります。

 その名は執行官

 執行官は特別職の国家公務員で、民事執行法に基づく強制執行や競売法に基づく競売手続き等を行う者であり、法律の規定に基づき私人が有する資産を強制的に換価する権限をもっています(もちろん「執行文」という裁判所のお墨付きが必要ですが)。

 雑学として見ていただくのであればここで読むのを終了していただいて良いかと思いますが、今回はあくまで税金の記事なのでこの公務員たる執行官が国から受け取る手数料が給与となるのか事業収入に該当するのかが争われた裁決の結論部分をご紹介したいと思います。
 この「給与か事業収入か」というテーマは税務調査においていうと、「外注先への支払いが外注費となるか給与となるか」といった問題に直結する話であり、数多くの裁判例があるのですが、今回はその触り部分の要素として見ていければと思います。


審判所 昭和47年7月21日 裁決

審判所の判断
以下の理由から執行官は自由職業(物の用役又は人役務を提供することを目的とするもの)と認められ、その受け取る手数料所得は所得税法上「その他の事業」にあたるものと判断される

①裁判所法等において「執行官は手数料を受けるものとし、その手数料が一定額に
 達しないときは、国庫から補助金を受ける。」と規定されているところから、他
 の国家公務員と異なる手数料制の職員であることを宣言していて、国から定額の
 給与を受けるものではないこと。
②執行をするたるめに必要な支出をしたときはその支出額を費用として受けること
 ができる、その反面すでに支払いを受けた費用によって、職務の執行に必要な物
 等を調達するという支払義務者にもなる等、裁判所の指図を受けることなく、自
 己の責任と負担において独立採算的な体制のもとに運営されることになっている
 
こと。


 上記理由①から、まず給与所得となるか事業所得となるかの差は、「誰からどのような地位に基づいて金銭等が支払われるのか」で判断されるのではないということが分かります。
 すなわち、国家公務員という地位に基づき国から金銭の支払を受けるといっても、執行官の収入は定額ではなく仕事の内容に応じた金額がその都度支払われるという「支払いの態様」が給与か事業かの判断基準の一つになるということです。

 また、②では金銭の支払い者である裁判所からの指図を受けることなく運営されていること、自己の責任と負担において独立採算で運営されていることを挙げていますが、この点はサラリーマンと個人事業主の仕事内容で考えてみると分かりやすいかと思います。

 例えば、注文住宅の販売会社が販売する住宅の建築を自社のサラーマンAに行わせる場合、建築に必要な木材等の材料や、その建築現場に向かう交通費、建築に使用する工具等は基本的にその会社自身が負担のうえで、Aが建築作業に従事することとなります。そして、仮にAが途中で怪我をして建物を完成させることができなくなってしまったとしても、「建物を完成させていないから給与の支払いは無し」なんてことにはなりません。

 一方、Aがサラリーマンではなく個人事業主として戸建建築の請負契約を当該販売会社と締結した場合には、材料や交通費、工具等は通常Aが自らの負担で購入したものを使い、建物の建築を進めることになるため、仮に仕入等にかかった費用が請負契約で受け取ることと決めた対価を上回る赤字工事になってしまったとしても、Aはそれを受け入れなければなりません。また、Aが建築中に怪我をして建物を完成させることができなかった場合には、原則的にAは当該販売会社から一円ももらうことができないこととなります。

 自己の責任と負担において独立採算で運営されているといのは、簡単にいうとこのように赤字になるも黒字になるも全てその人の責任の下行われていることということができます。
 
 執行官の話に戻ると、まさに裁判所の判断②ではこの点について「執行官は強制執行に必要な費用を裁判所から受け取ることができるものの、その支払いを受けた費用で自ら必要なものを調達しなければならない」という、仮に必要なものの調達によって赤字になったとしてもそれは自己責任であることを挙げています。まあ、執行官について言えば赤字にならないような手数料の取り決めになっているのだろうとは思いますが・・・


 最後まで読んでいただきありがとうございました^ ^





 


 
 



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