見出し画像

法人税シリーズ〜会社が全額負担した忘年会費用は福利厚生費!?①

 今日から法人税シリーズも始めます^ ^
 記念すべき最初のお題は、福利厚生費と社内交際費の区別に関する論点です。この点は実務上非常に区別が曖昧になっていることが多く、私も先日新たに顧問を受け持つこととなった顧客の帳簿を見たところ、社内での飲み会が全て福利厚生費にあがっているのを目の当たりに、改めて実感したところです。

社内飲食は原則交際費等

 会社の従業員のみで行う飲み会費用を会社が負担した場合、原則交際費等に該当します。交際費等の該当要件は以下のとおりです。
 ①支出の相手方が事業関係者であること
 ②支出の目的が事業関係者との間の親睦を深めて取引関係を円滑にすること
 ③行為の形態が接待や贈答等であること
 
 この要件に会社内の飲み会を当てはめてみると、①従業員は会社の事業関係者に該当(社外の人間だけでなく従業員や株主も含まれます)し、②従業員との親睦を深める目的であり、③飲み会は接待行為(会社内なので会社が会社に対して行うという少し歪な態様ですが・・)である、ことから交際費等に該当すると考えられます。
 また、交際費等の要件に当てはまるものであっても一人当たり5,000円以下の飲食代であれば交際費ではなく会議費(=交際費に該当しない)として処理できるという規定がありますが、その場合でも社内関係者のみでの飲食は除かれていますので、この点からも社内の飲み会は原則交際費であることが読み取れます。

 ただし、交際費等の規定ではこれに該当するものでも「もっぱら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用」すなわち福利厚生費となるようなものは除く、としています。

どんなものが福利厚生費になる??

 福利厚生費に該当するものについて、通達ではもう少しだけ具体化していますが、「創立記念日,国民祝日,新社屋落成式等に際し従業員等におおむね一律に社内において供与される通常の飲食に要する費用」というような例を示しているだけです。
 この例からすると、年に1〜2回の大イベントくらいしか当てはまらないようにも見える(国民祝日・・・なぜ??笑)し飲み会が含まれるのかもよく分かりません。
 一方、「おおむね一律に社内において供与される」という基準は読み取れるため、社員が一律対象となる飲み会ならこれに当たるのでは?それなら、友達と二人でやってる会社で毎日二人で飲み会をしても全部福利厚生費になるのか?など、疑問はつきません。

 こういった場合は、過去に国と争った裁判例から基準を読み取っていく必要があります。

最高裁H6.2.8 判決

 10ヶ月の間に福利厚生費として46回、会議費として7回、その都度出席できる従業員を対象(従業員派遣業者のため一同に会する機会が乏しい)に中華料理屋や寿司屋等様々な飲食店で慰労のため懇親会を行なっていた事例です。
 
 ここで、最高裁判所が判断したポイントを簡単にまとめると以下のとおりです
①飲み会は福利厚生費となるか
 法律上福利厚生費に飲み会が含まれないとは読み取れない
飲み会も福利厚生費の対象となる

②10ヶ月間で53回も慰労会を行なっている回数について
 全従業員が参加可能な企業でも運動会、演芸会、春秋旅行及び忘年会といえば5回に及ぶのであり、或は演芸会を行わず新入従業員歓迎会と入れ替えても同様5回となり派遣先が十数社であれば必ずしも多いとはいえず寧ろ少い位である
 →慰労会の開催可能単位ごとに回数を数えれば飲み会をし過ぎとは言えない

③飲み会の一人当たりの金額について
 今回の否認対象となった支出額は合計108万円であり、1回当たりの金額はそれほど多額でなく、一人当たりの費用も必ずしも多額とは言えない。
 →1回あたり20,000円程(108万/53)は多額とは言えない

 あくまで裁判例は個別事例なので、ここで判断された数値や条件がそのままどの事案にも当てはまるものではありませんが、こうして見てみると私にとっては普通の感覚に近いな〜という印象を受けましたが、皆様はいかがでしょうか?

 今回は福利厚生費となる事例を掲載いたしましたが、逆に社内交際費と認められてしまった事例も確認することで両者を区分するある程度の目安が見えてきます。

 次回は社内交際費と認められてしまった裁判例をみてみたいと思いますので、引き続きご覧頂ければ幸いです。


 最後まで読んでいただきありがとうございました^ ^


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?