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雑損控除〜シロアリ駆除代で税金が安くなる?〜
今日は雑損控除についてご紹介します。
雑損控除とは、「生活用の資産が災害・盗難・横領によって損害を受けた場合」にその損害額のうち一定の金額を他の所得金額から控除できる制度です。
雑損控除の適用については、地震や火災で自宅が損壊してしまったようなレベルの出来事があれば当然思いつくのですが、意外にもっと身近な損害であっても雑損控除の対象になるものが多いにもかかわらず、あまりその点は考慮せず申告がされているように思えます。
そこで、これから身近な雑損控除の適用ができるパターンを3点ご紹介していきたいと思います。
①自宅のシロアリ駆除代
表題にも示したとおり、令和6年中に「自宅がシロアリの被害に遭っていた!!」方は、今年の確定申告でシロアリ駆除費とシロアリ被害を受けた建物の箇所の修繕費が雑損控除の対象となります。
具体的には以下の金額が雑損控除として総所得金額から控除されます
1.事例
①所得
給与 610万円(給与収入800万円)
②損失
シロアリによって生じた家の損害額 50万円
シロアリ駆除費 20万円
シロアリによって損壊した柱修理代 30万円
シロアリ防除費 15万円
合計 115万円
2.雑損控除額
①50万円+30万円+20万円-0円-610万円×10=39万円
②30万+20万-0円-5万円=45万円
①<② 控除額=45万円
自宅が部分的にシロアリ被害にあった場合のざっくりとした損害額の事例ですが、この場合雑損控除額として45万円が算出されました。
そして、この給与収入800万円のみ方の場合だと基本的にこれによって所得税が9万円、住民税が4.5万円の合計13.5万円が軽減されることとなります。
雑損控除の求め方としては、損害額がそのまま所得控除額になるわけではなく2の計算で示したとおり「①損害額と損害に関連して要した費用の合計から、この損害に対して受けとった保険金等の額と総所得金額の10%を控除した金額」と「②損害に関連して要した費用の合計額から、この損害に対して受け取った保険金等の額と5万円を控除した金額」のいずれか多い金額が雑損控除額となります。
家の損害額については、簡易的に家の取得価額から減価償却費を控除した金額に損害の割合を乗じて算出するので、その点は少し面倒かと思いますが、わりと簡単に雑損控除の金額は求められるので、該当する方は是非申告することをお勧めします。
②自動車・バイクの盗難被害
生活に通常必要な自動車やバイクが盗難被害に遭った場合も、雑損控除を適用することができます。
損害額としてはその車両の購入価額から減価償却費を控除した金額となりますが、通常車が盗難に遭うとそれに伴って生じる費用は考えられないため、損害額から保険金と総所得金額の10%を控除した金額が雑損控除額となります。
自動車保険で盗難保証をつける方も多いかと思うので、車両の場合は新車で購入してから2〜3年以内であっても計算したところ「結局雑損控除が算出されなかった」というパターンが多いかもしれないですが、不運にも盗難に遭った場合には一度この計算を試してみた方が良いかと思います。
なお、対象の車両は”通常の生活に必要な車両”であることを要するのですが、過去の裁決事例では、週に1回大学の通学に使用していた400ccのバイクが盗難被害に遭い雑損控除を適用した事例で、その程度の使用頻度では通常の生活に必要とはいえないとして、雑損控除が適用できない(昭和63年11月17日裁決)と判断されたものがあるほか、通勤や子供の通学に日々使われていないという点から通常の生活に必要とはいえないとして盗難になった自動車の雑損控除が適用できない(平成14年2月26日裁決)と判断された裁決があるため、車両の種類と使用頻度、その所有者に応じた主な用途は事前に要確認です。
③大雪による雪下ろし等費用
雪国にお住まいの方々にとっては常識かもしれませんが、大雪による雪下ろし費用等は雑損控除の対象となります。
金額としては、その雪下ろし等の費用が5万円を超えれば雑損控除が適用可能なため、自身で全て行えるようなら雑損控除額は算出されないかもしれませんが、業者に依頼する場合ならその頻度や単価によって控除額が算出されることになるのではないかと思います。
ちなみに「大雪は災害なのか?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、この雪下ろし等の費用が雑損控除の対象になるということは、国税庁が「豪雪の場合における雪下ろし費用等に係る雑損控除の取扱いについて」という個別通達を出して、大雪による雪下ろし等費用が雑損控除の対象になることを明言しています。
国税庁としても、大雪が災害等と言えるか微妙と思っていたからこそ、わざわざこのような通達を出しているのでしょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました^ ^