見出し画像

Podcast#5お米業界の全体像

先日、Podcast「東大生の米談義」#5を配信しました。
#5のテーマは「お米業界を俯瞰して潮流を掴む」でした。
最初は手探り、手が届かないところもあるかと思います。
回を重ねる中で修正していくために「振り返り」まで含めてPodcast「東大生の米談義」とします。


一言名言

「俯瞰してものを見て全体の構造をはっきりさせたいという志向がある人はこれからの時代は有利になる。」

1990年代後半からシリコンバレーでIT業界でコンサルティングを行い、2000年には現地でベンチャーキャピタルを立ち上げた梅田 望夫 (うめだ もちお)さんの言葉である。

梅田望夫さんは日本人一万人シリコンバレー移住計画を提唱し、2012年には内閣府から新海誠、澤穂希、伊藤穰一さんらも選ばれた「世界で活躍し『日本』を発信する日本人[6]」の一人に選ばれている。

「Google」が日本語の検索サービスを開始し、「Amazon.co.jp」が日本でサービスを開始するなど「IT革命」がバズワードになった2000年、当時WEB2/ITの総本山シリコンバレーを駆け抜けた日本人である。

格言らしさはないが、「お米業界の全体像」についてまとめている今回、俯瞰する力の大事さを強調するために選んだ。

お米業界が今年大きな節目となる考察は「#3 米余りの現実と未来」でまとめた通りだが、今年はChat GPTを提供するOpen AIが日本に進出した年であり、またWEB3業界では通称DAO法がRICE DAOのような団体を法人として認めるよう改正され、GoogleとAmazonが日本市場に参入した2000年に並ぶ節目として認識している。

業界の盛り上がりとして、最近自身でAIカスタマーサービスとしてのChat Botのコーディングをしてみたがそれほど高い技術力が必要な認識はなかった中、どの会社もAIを導入するための多額の予算を組むために友人の企業を含めAI受託開発は未然のバブルを迎えており、またDAO法の改正でDAOの実証実験を開始する自治体や団体が増えた中、チャット機能からタスクやエンゲージメント管理までをオールインワン化したDAOプラットフォーマーは手が足りていない状況であると聞く。

お米業界はもちろんのこと、こうしたテクノロジー全体の潮流も読んで会社を経営していきたい。


お米業界の全体像

お米業界の全体像 導入

今回のPodcast「お米業界の全体像」は主に日本政策投資銀行の「コメ産業の環境変化と今後の発展に関する調査報告書」に基づいて進めた。

導入としてまず簡単に、お米の日本における重要さについてから始めている。

まず、お米は日本人の主食であり唯一自給可能な穀物として極めて重要な位置を占める作物である。そして白米や玄米に限らず、米菓・餅・日本酒をはじめ様々な食品・飲料の原料になる他、副産物としての米ぬか、籾殻、稲藁もコメ油とか機能性素材のように食用から工業用まで多種多様な活用方法がある。

そんな日本のお米産業の特徴は大きく2つ。

  1. お米は全国的に生産されてて、加工・流通も全国に広がっている。

  2. 生産から加工・流通と続くお米のバリューチェーンは、多くの企業が関与し裾野が大変に広い産業である。

では実際に、どのような産業があるのかを整理し俯瞰してみようというのが今回のテーマである。

以下に続くpart 1 ~ 4にかけて関係人口や市場規模を俯瞰する中で、将来的に拡大可能なRICE DAOの規模、輪郭が浮かび上がってくることを期待する。


お米業界の全体像 part 1「生産」

はじめに、生産分野。

コメ産業の環境変化と今後の発展に関する調査報告書

農林水産省(2022年)によると日本の農家数は97万経営体、そのうち稲作従事者の割合は54%あたりと2020年に比べると総数、割合ともに減少傾向にあるが、依然として50万経営体とそれぞれに家族・関係者がいることを考えるとその数倍は「農業生産」の関係人口として考えられる。

次に農業機械。
非農家でも聞き馴染みのあるヤンマー、クボタをはじめ、井関農機、コマツ、サタケの従業員数について単純合算すると12万7000人と、ここにもかなりの人口プールがある。(※エンジン、エネルギー、林業、建設等含む)

農業機械としては、コンバイン等だけでなく業務用精米設備や醸造用精米機器も該当する。アメリカの日本酒市場において「その数字が小さいと高い」と試金石的役割を持つ’精米歩合’。近所のスーパーで購入可能な「獺祭」で一番高価なものは2割3分、つまりお米の77%を削っているわけだが、そこまでお米を細かく削る技術の高度さは想像に難くない。

次に肥料・農薬。

住友化学、三井化学アグロ、日本曹達、クミアイ化学工業、日本農薬と続き、農業全般に用いられる肥料・農薬でお米に焦点を当てて関係人工を出すことは些か難しいが、住友や三井と聞き馴染みのある名前からそれなりの人口は想像できよう。

次に育種。

農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)や都道府県農業研究機関、富田通商、三井住友アグロ、住友化学が主要プレイヤーとして挙げられる。
農研機構や都道府県農業研究機関はブランド米開発を進めていることで知られ、他にも先日投稿したnoteで取り上げたところだと、茨城県つくば市農研機構の「スギ花粉米」という花粉症症状緩和を目指したお米開発なども進められている。

余談だが、先日スタンフォード大学の日本人研究者の学術振興会に参加した際には、貯蓄が困難な医薬品等に代わりワクチンとしてのお米の注目の高まりについてお話を伺った。お米は医療の分野にも歩みを進めているらしい。

これら育種産業も当然、全国に分布している。

最後にTech・IT。

NTTデータ、オプティム、ネタフィム、ソフトバンク、インターネットイニシアティブが主要企業とされ、個人的に意外であったソフトバンクは農業センサー、遠隔水位監視、意外に草刈り機等を手がけるなどスマート農業を推進し、2015年から農業AIブレーン「e-kakashi」を提供している。(2024年7月1日はソフトバンク社員らが独立して設立したグリーン株式会社に事業譲渡されるそう。)

高齢化や少子化と生産人口の減少が激化していくと予想される2030年に向け、こうしたスマート農業・省力化の進展は業界の、日本の希望である。


お米業界の全体像 part2「流通」

「流通」分野は消費者が一番目にする所であり、これまでに比べ卑近に思えるだろう。

コメ産業の環境変化と今後の発展に関する調査報告書

まず、卸売。

JA全農、全農パールライス、神明、木徳神糧、新潟ケンベイ、Wakka Japanが挙げられるが、JAだけを見ても1,027万2千人(2024年4月時点)が在籍し、全農業経営体の中でお米の割合が半分を超えていることを考えると500万人以上はお米業界に関係していると言えよう。

次に小売。

コメ専門小売店(お米屋さん)、食品スーパー、大手GMS(General Merchandise Store/総合スーパー)、生協Co-opなど、一般消費者が一番お米を見る場所であり、現在当社のパートナーである東京都墨田区の亀太商店もこの部類である。

亀太商店は創業1782年(天明2年)の超老舗で全国から選りすぐりのお米を集めて販売されており、全国の農家さんを廻るきっかけをくださった方でもある。ちなみに1782年と言えば天明の大飢饉が始まった時であり、翌年は浅間山の大噴火と、「#4 農業経営者の機能と能力」における森ビル創業者に似たピンチをチャンスに変えるアントレプレナー気質を持った商店である。

次に中食・外食

中食ではコンビニ、弁当チェーン、百貨店、外食では寿司チェーン、カレー・丼ものチェーン、ファミレスがある。

アメリカでお米ビジネスを始める際、日本食の流行で拡大する店舗数からto B、業務用でのお米販売をまず初めに考えたが、仕入れ値を出来るだけ下げたいニーズと日本から多少高くても良質なお米を届けるサービスはマッチせず真っ先に諦めたところである。低価格でのお米生産・流通が実現可能になれば是非とも進出したいところである。


お米業界の全体像 part3「加工」

お米業界を語る上で避けては通れぬ加工分野。

コメ産業の環境変化と今後の発展に関する調査報告書

加工米飯においてはパックご飯ならサトウ食品、冷凍米飯ならニッスイ、味の素、マルハニチロ、ニチレイ、乾燥米飯(水を注ぐと完成する類)ならサタケ、永谷園とブランドイメージが消費者に定着している。

米菓・包装餅においては亀田製菓、三幸製菓、岩塚製菓、ブルボン、包装餅においてはサトウ食品、越後製菓が第一想起となっており、長年のTVCM戦略の賜物であると言えよう。

他にこれまでもnoteで何度も取り上げた、お米周辺産業の花形のコメ油・米粉、日本酒・焼酎等はここに分類される。

同様に、これまでいくつもnoteに取り上げた内容として工業用途としてのお米製品がある。バイオマスレジンはバイオプラスチック、ファーメンステーションはオーガニックライスの化粧品、ライスインキコンソーシアムやペーパルの印刷業界でのお米の活躍などは原材料としてのお米の潜在能力を十二分に伝えている。

コメ産業の環境変化と今後の発展に関する調査報告書

お米業界の全体像 part4「行政」

日本のお米業界は、歴史的に重要な役割を果たしてきた農業分野であるため行政機関の関与は注視に値する。

日本における稲作は約3000年前に始まって以来、米は社会の中心的な存在として村や集落の形成を促し、江戸時代には幕府や藩が米を通じて経済を支配、戦後から現代にかけては計画経済的に生産調整が行われてきた背景があり、流通自由化や減反政策以降もお米生産には行政の姿が見え隠れしている。

農林水産省や都道府県・市町村は減反以前は生産量の割り当てにより需給調整を行なってきたが、2018年に減反政策が終了した後は、農家さんが生産量を調節するために必要な情報を提供することに貢献している。

農林水産省はお米業界の発展を企図し精力的に活動を進めており、お米の海外輸出支援をはじめ、米粉の消費拡大やインフルエンサー使ったお米消費拡大施策(#MK3)、また直近だとOkome-summaryというまとめサイトもオープンしている。


お米業界の全体像 まとめ

総括に入るが、ここまでを通してお米業界の裾野の広さが伝わっていると嬉しい。

例えば、生産分野の農業生産では約50万経営体、農機系は12万人の従業員、流通分野の卸売においてはJA約500万人。
お米は日本人の食を支えるだけでなく、国内有数の大規模経済圏を有しており、日本経済の基幹産業と言っても良い。

これらを統一し、全員でお米業界の未来を考える場所を作ろうというのがRICE DAOの目指す場所、ビジョンである。

最近は農業由来のカーボンクレジットやクライメイトテックの領域も増えたため、また一段と関係人口が増える可能性を見込んでいる。

食料・農業・農村基本法改正などの政治、人口動態や社会構造の変化、AIの発展に伴うスマート農業の高度化など、お米業界に関わるマクロ動向の分析から得られる洞察は多いだろう。

俯瞰して全体の構造を深く理解することで、連日の価格高騰ニュースで消費者のお米への関心も高まる変曲点であると見る2024年、次に行うことは明確になった。

RICE DAOに乞うご期待である。


ここまで読んでいただきありがとうございます!
#6は農業従事者減少の背景を配信しています!
次回もお楽しみに!

いいなと思ったら応援しよう!