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上手な並の先生は背中で語る


職場には、さまざまな人が働いています。かつては、教員は同じような力を持ち、同じような感覚で働くのが理想とされていました。同じ方向を向き、同じ価値観を共有することで、組織の統一感を保っていたのです。しかし、近年では働き方や生活様式の多様化が進み、そのような一体感を強いる風潮は薄れつつあります。

かつてなら「若手は早く来て掃除をするべき」「先輩には必ず挨拶を」といった指導がベテラン教師から行われることが普通でした。しかし今は、むしろ逆の光景が見られることもしばしばです。アプリやパソコンなどの技術が進化したことで、ベテランが若手に「このやり方で合ってるかな?」と尋ねたり、若手が「もっと効率的な方法に変えませんか?」と提案したりする場面が増えました。

これにより、得意分野を活かし合い、苦手な部分を補い合う柔軟な組織が生まれつつあります。素晴らしい時代だと思う反面、自ら経験する機会が減ったことで、他者の努力や工夫の凄さに気づきにくくなっているのも事実です。今日は、そんな状況を象徴するエピソードを紹介したいと思います。


ベテランの先生が背中で語ったこと

今年の冬、学校の前の道が大雪で塞がれてしまいました。最初の日、女性の教頭先生が早起きして雪かきをしていましたが、除雪機を使えないため手作業で行い、疲れ切った様子で職員室に戻ってきました。その様子を見たベテランの先生が、管理職に「除雪機を使わせてほしい」と申し出て、翌日から朝早く来て除雪を行うようになりました。

教頭先生は大変喜んでいましたが、他の職員たちは次第に「あそこもやってほしい」「もっとこうしてほしい」と要望を出し始め、その先生はますます忙しくなっていました。実は、除雪機の操作は簡単そうに見えても、ひっくり返ったり、人を巻き込んでしまったりするリスクがあり、過去に死亡事故も発生しています。また、燃料の補充や機械のメンテナンス、壊れた際の対応など、様々な責任が伴います。

それにも関わらず、黙々と除雪を続けるベテランの先生は、周りから「普通のおじさん」として扱われ、特に感謝されることもなく、むしろ当たり前のように見られていました。若い先生たちは、育児などの理由で遅れてくることもあり、その先生の姿を目にする機会が少なく、なおさらその努力には気づいていない様子でした。


背中で語ることの力

しかし、子供たちはその先生の姿をしっかりと見ていました。他の先生が「そこに登らないで」と注意しても聞かなかった子供たちが、その先生が「またここを雪かきするから、崩さないでね」と穏やかに言うと、すぐに言うことを聞き、別の場所で遊ぶようになりました。

特別な言葉を使ったわけでもなく、大声で叱ったわけでもありません。ただ、その先生が一生懸命みんなのために働いている姿が、行動を通して子供たちに伝わっていたのです。その姿が言葉以上に説得力を持ち、子供たちの心に響いたのでしょう。


行動で伝えることの大切さ

このエピソードから、行動で示すことの大切さを改めて感じました。言葉だけで考えを伝え、説得しようとする先生も増えていますが、行動で背中を見せる先生には、それ以上の影響力があります。特に、経験豊富なベテランが黙って手本を示す姿は、言葉では伝えきれない深いメッセージを周りに送っています。

皆さんの職場にも、そんな「背中で語る先生」はいませんか?もし思い当たる方がいれば、その方はとても貴重な存在です。ぜひ大切にし、時には感謝の言葉を伝えてみてください。その一言が、さらに良い職場環境を作り出す力になるはずです。

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