ABA(応用行動分析)について②理論について
今日は理論に関する話で、応用できる内容もお話ししたいと思います。
行動が変化したり、新しい行動が起こることを学習と言います。
行動には2種類あり、レスポンデント行動とオペラント行動があります。
レスポンデント行動とは、刺激を受けて自然に反応することで、パブロフの犬の実験で知られる唾液分泌や汗が出ること、または感情などを指します。
オペラント行動は、私たちが積極的に環境に働きかける行動です。それぞれに学習が行われ、行動の変化が起こります。
レスポンデント学習についてもう少し詳しくお話しします。
レスポンデント学習とは、レスポンデント行動に関して起こる学習です。
例えば、涙が出たり、大声を出したりすることはすべてレスポンデント行動です。
この反応の原因は先行する刺激です。環境刺激が原因となります。
レスポンデント学習は、レスポンデント条件付けとも言われ、条件反射とも呼ばれます。
これは100年前にロシアの生理学者パブロフによって発見されました。
レスポンデント学習のメカニズムを簡単に説明すると、例えば、梅干しを見たことがない赤ちゃんや外国人の方に梅干しを見せた時、初めは何の反応も起こりません。
これを中性刺激と言います。
しかし、口に入れた途端に酸っぱい感覚が生じ、唾液が出るなどの反応が見られます。
これは無条件刺激による無条件反応です。無条件反応を引き起こす刺激が梅干しです。
そして、梅干しの前に出される言葉や姿はもともと中性刺激ですが、繰り返されると、これらの中性刺激が唾液分泌や酸っぱい感覚を自然に引き起こすようになります。
これを条件反応と言い、中性刺激が条件刺激となります。
私たちは、「梅干し」という言葉だけで頭の中にその味を思い浮かべることができますが、
これは関連フレーム学習(条件反応)の一例です。直接梅干しの味と姿が関連していくと、梅干しの姿を見ただけで、あるいは言葉を聞いただけで、酸っぱい感覚が自然に生じるようになります。
これも条件反応です。外国の方も、何度か梅干しを食べると、同様の条件反応が起こります。
これはレスポンデント学習によるものです。
レスポンデント学習は自然に起こりますが、私たちが環境に適応する上で非常に役に立ちます。
例えば、歩いている時に獰猛な犬が近くにいたら、私たちはその鳴き声を聞いただけで恐怖反応を示し、危険を感じるようになります。
この恐怖反応は、条件刺激になり、私たちはそれを避けるようになります。
これはオペラント行動です。
ただし、これが過剰になると、不適応行動を引き起こすことがあります。
代表的なものが不登校や引きこもりです。
不登校になる人は、学校を恐怖や不安を引き起こす刺激として条件付けられてしまいます。
もともとはそうではなかったものが、何かきっかけによって直接不安や恐怖を引き起こすような出来事が起こります。
これが無条件刺激です。
様々な原因がある中で、よくある例としては、嫌いな給食を無理やり食べさせられることが挙げられます。
これがきっかけで学校に行かなくなる子もいます。
他にも、友達にいじめられる、先生に厳しく叱られる、学校の騒音が大きい、などが原因で恐怖や不安を引き起こすことがあります。
これらの無条件刺激から恐怖や不安が引き起こされます。
無条件刺激と中性刺激が結びつくと、問題が発生します。
例えば、嫌な記憶が学校という中性刺激に結びつくと、嫌な経験がなくなっても、この中性刺激が条件刺激となり、恐怖や不安を引き起こすようになります。
これが原因で学校に行きたくなくなるわけです。
これを解消するためには、暴露療法として昔から行われている方法がありますが、自閉症や発達障害のある人にはうまくいかないことがわかっています。
不安を克服するための方法としては、フラッディングや系統的脱感作(法)などが用いられています。フラッディングは、無理やり恐怖や不安を感じる場面や刺激にさらす方法です。
しかし、これがうまくいかない場合もあります。特に自閉症のある人には、不安や恐怖の記憶がなくなりにくいため、効果が限定的です。
そこで考えられたのが、徐々に不安が少ない場面から慣らしていく方法です。
これは、不安を感じる場面を順番に並べて、弱いものから順に対処していく方法です。
この方法では、リラクゼーション訓練も行います。
リラクゼーション訓練は、不安や恐怖を減らすためのトレーニングで、体をリラックスさせることによって心理的な緊張を緩和します。
不安階層表の例としては、対人不安が強い人の場合が挙げられます。
この場合、不安を感じる場面を書き出して、順番に対処していく方法が有効です。
また、アサーション訓練という自分の権利を適切に主張する訓練も役立ちます。
これは、適切な言葉遣いや対応を練習し、実際の場面で適用することで、対人不安を軽減することができます。
これらの方法は、レスポンデント学習に基づく不安や恐怖を克服するための効果的なアプローチです。
しかし、個々の状況に合わせて適切な方法を選択し、適用することが重要です。
学習のメカニズムを理解し、それに基づいた対処法を用いることで、不安や恐怖と効果的に向き合うことができるでしょう。
今度はオペラント行動について話したいと思います。
実は、行動分析学ではレスポンデント行動の研究も行っていますが、オペラント行動の研究がより多く行われており、事例も豊富です。
オペラントとは、私たちが環境に積極的に働きかける行動です。
例えば、自動販売機が詰まった時にポンポン叩いてみる、スマホが動かない時にいじってみるなど、何かしらのアクションを環境に対して起こします。
オペラント行動は、環境事象の影響を受けます。
環境事象とは、行動すると必ず環境から何らかの反応が返ってくるものです。
自然に変化する場合もあれば、人からの反応が返ってくることもあります。
その影響を受けて、次に行動が変化していくのがオペラントの特徴です。
この行動を分析したり理解するためには「行動の随伴性」という概念を理解することが重要です。
オペラント行動においては、行動を起こす前の環境事象のことを先行刺激と言います。
これは行動を起こすきっかけや合図になるような環境の刺激のことです。
例えば、部屋が暗い時に電気のスイッチを押す、テレビがついていない時に少し寂しいと感じてテレビのスイッチを押すなどがあります。
行動の後に起こる環境変化のことを後続事象と言います。
電灯のスイッチを押すと部屋が明るくなる、テレビのスイッチを押すと画面がついて番組が流れるなどの環境変化が起こります。
変化が起きない場合もありますが、それも後続事象の一部と考えます。
この先行刺激(先行事象)、行動、後続事象の三つを考えることで、行動が理解できます。
行動が持続する原因は後続事象によるものです。
例えば、シャワーを浴びる時に水道のレバーを操作すると、水が出ることから、レバーを引っ張る行動が強化されます。
このように行動が持続するか強まることを強化と言います。
これは、行動の後に起こる環境変化に注目して理解できます。
行動の強化には2種類あります。
一つは、行動の直後に何か望ましい事象が起こることで強化される正の強化です。
もう一つは、嫌な事象がなくなることで強化される負の強化です。
行動が減少することを弱化と言います。
例えば、子供が悪さをしておもちゃを投げたとき、厳しい目を向けられたり叱られたりすると、その行動をやめる可能性があります。
これは行動した直後に嫌な事象が起こるため、行動が減少する例です。
また、フードコートで子供がアイスクリームを落としてお母さんに叱られる場合、このような嫌な事象が起きるため、次からはアイスクリームを慎重に持つようになるでしょう。
これも行動が減少する弱化の一例です。
行動を弱化するだけでは、何も新しいことは習得されません。
また、反復的な叱責に慣れてしまうと、より強い刺激が必要になり、結果的に罰を使うことがエスカレートする可能性があります。
このため、罰を使う場合は慎重に行うことが大切です。
行動分析学では、罰を使う際の倫理規定がありますので、それに従って使用してください。
また、罰を使う場合は、それが本当に必要で効果的なのかを常に考慮することが重要です。
つぎにオペラント行動における強化スケジュールについて話したいと思います。
行動分析では、強化をするタイミングやパターンを「スケジュール」と呼びます。
これは予定表のことではなく、強化の方法を指します。
毎回強化する方法を「連続強化スケジュール」と言います。
これに対し、一部のみを強化する方法が「部分強化」です。
部分強化は、例えば何回かに1回だけ、あるいはランダムに強化するといった具合です。
連続強化の例としては、スイッチを押せば毎回電気がつくことが挙げられます。
停電でなければ、ほぼ毎回つくと思います。
強化がなくなった時、つまり電源が切れた場合に行動が消去されるというのは、行動がなくなることを指します。
例えば、電池が切れたリモコンを何回も押し続ける人は少ないでしょう。これが消去される例です。
しかし、部分強化は消去されにくい性質があります。日常用語で言えば、諦めにくく、粘り強くなるということです。
部分強化にはいろいろなパターンがあります。
例えば、反応数や経過時間に基づいた強化スケジュールが存在します。
「固定比率スケジュール」では、特定数の行動が完了したら報酬が得られます。
例えば、工賃で支払われる仕事や、内職で特定数の作業を行ったら報酬が得られる場合などです。
それに対して、強化されるまでの行動の回数が毎回ランダムに変わるのが「変動比率スケジュール」です。
ギャンブルや懸賞ハガキ、潮干狩りなどがこれにあたります。
これらの行動は、強化されるまでの回数が不定であるため、消去されにくく、行動の頻度が高まりやすい特徴があります。
「固定間隔スケジュール」では、一定時間が経過すると必ず強化されます。
例えば、仕事で決まった休憩時間がこれにあたります。
これに対し、「変動間隔スケジュール」では、強化されるまでの時間が毎回ランダムに変わります。
メールのチェックなどがこの例です。
これらのスケジュールを理解し、適切に使うことで行動分析や指導に活かすことができます。
トークンシステムなどは、固定比率や変動比率の原理に基づいており、飽きが生じにくい工夫がされています。
行動がなくなる原因には、「消去」の概念があります。
例えばリモコンのボタンを押してもテレビがつかない場合、やがて押すのをやめてしまいます。
これは、行動しても環境変化が起こらないため、行動が止まる現象です。これを「消去」といいます。
消去の副産物として、「消去バースト」があります。これは、リモコンのボタンが効かない時に強く押したり、叩いたりするような行動です。
攻撃的な行動が起こり、悪循環に陥りがちです。消去を適切に使わないと、不本意な行動を強化してしまう可能性があります。
続いて、「弁別」の概念です。
私たちは、結果だけでなく、先行する刺激によっても行動を変えます。これが弁別現象です。
例えば、注目されている時にだけ特定の行動をする子供がいます。
これは、人の注目の有無によって行動が変わることを示しています。
「動機づけ操作」は、講師や刺激の効力に間接的に影響を与えます。
例えば、お菓子を食べすぎるとご飯を食べなくなるのは、お腹がいっぱいであるため、ご飯の講師の価値が下がるからです。
これは動機づけ操作の例です。
次の話題に移ります。
例えば、「魚が花子を食べた」と言われたら、私たちは驚くでしょう。
通常は「花子が魚を食べた」と言いますよね。
このように、言葉の順序が重要であり、誤った順序では意味が通じなくなることがあります。
オートクリティック(autoclitic)とは、言語行動の機能の一つで、発話に対して効果を高める役割を持ちます。
例えば、「魚が花子を食べた」と言うと驚かせる効果がありますが、「花子が魚を食べた」と言えば、普通の反応になります。
つまり、オートクリティックは言語行動が先行事象という要素に効果的な影響を与えます。オートクリティックにはさまざまな機能があり、それは複雑です。
大きく分けて、基本的なオートクリティックと拡張的なオートクリティックがあります。
基本的なものは、具体的かつ記述的です。
これは、話し手の状況が聞き手に理解されるものです。
例えば、「消防車が見える」と言うと、話し手が消防車を見ていることが分かりますし、「消防車が聞こえる」と言えば、話し手が消防車の音を聞いていることが分かります。
これが視覚的および聴覚的なオートクリティックです。
量的限定的なオートクリティックは、話し手の確信の程度を示します。
「多分そうだ」と言えば曖昧ですが、「絶対そうだ」と言うと、はっきりとした確信を示します。
さらに、様限定的なオートクリティックは、話し手が述べている内容の量の程度を示します。
例えば、「ご飯の一部を食べた」と言うのと、「ご飯を全部食べた」と言うのでは、明らかに意味が異なります。
拡張的なオートクリティックには、関係的、要求的、遂行的などがあります。
関係的オートクリティックは、話し手の言語行動の関連性を示します。
例えば、「そして」とか「しかし」という接続詞を使うことで、前の文との関連性が明らかになります。
要求的オートクリティックは、話し手の言葉の影響力を強めるものです。
例えば、「あれを取って」と言うより、「お願いだから取って」と言った方が、相手が行動する可能性が高まります。
遂行的オートクリティックは、文法的な構造を使って、話の意味を明確にするものです。
例えば、「魚が花子を食べた」と言うと混乱しますが、「花子が魚を食べた」と正しく主語と目的語を区別することで、意味が明確になります。
日本語では助詞を使ってこれを区別します。
次に、関係フレーム理論について説明したいと思います。
これは、直接行動が強化または弱化されない状況でも、人が行動を変えることができる現象です。
関係フレーム理論は、過去の経験に基づいて新しい行動を学習することを可能にします。
例として、モデリング(模倣学習)があります。
これは、他人の行動を観察して、その行動を模倣することです。
例えば、子供が大人が暴力的な行動をするのを見ると、その子供も同様の行動を取る可能性があります。
このように、直接強化されていなくても、観察によって新しい行動を学習します。
ルールもまた、直接経験しなくても行動を変えることができる例です。
ルールは言語によって伝えられる指示や規則で、これに従うことで期待される結果を得ることができます。
例えば、「レストランが美味しい」という情報は、そのレストランを訪れる行動を強化するルールです。
逆に、「先生を怒らせると怖い」という情報は、先生を怒らせる行動を避けるルールです。
関係フレーム理論では、さまざまな関係性(例えば、大きい/小さい、前/後)を学習し、それを言語行動や思考に応用することができます。
これにより、文字や数字を教えたり、計算問題を解いたりすることが可能になります。
関係フレーム理論を応用することで、例えば文字と絵のマッチングを使った教育が行えるようになります。
最後に、ABA(応用行動分析)の実践についてです。
具体的な行動を選び、その行動に関するデータを収集し、介入方法を検討し、実施します。
この過程で、行動の変化を観察し、効果的な介入を行うことが目的です。
例えば、特定の行動(例:風呂に入らない)に焦点を当て、その行動が生じる状況や原因を分析し、それに基づいて介入計画を立てることが重要です。
次は刺激透過性についてです。
これは、一定の関係性(例:AはBと同じ、BはCと同じ)が教えられた後、教えられていない関係性(例:AはCと同じ)が自然に理解される現象です。
これは言語学習や概念学習において重要な役割を果たします。
例えば、子どもが絵を見て「電車」と言えるが、文字を読むことはできない場合、マッチングトレーニングを用いることで文字読解能力を向上させることが可能です。
最初は同一の物体や文字をマッチングさせ、徐々に異なる刺激(例:絵と文字)をマッチングさせる訓練を行います。
この方法により、文字とその意味の関連付けが強化され、読解能力が向上する可能性があります。
また、関係フレーム理論では、様々な関係性(大きい/小さい、前/後など)を理解し、それらを言語行動や思考に適用することができます。
これにより、文字や数字の教育、計算問題の解決などが可能になります。
具体的な教育ツールとしては、マッチングタスクやフォルダータスクなどがあります。
このように、ABA(応用行動分析)は、具体的な行動に焦点を当て、その行動に関するデータを収集し、介入方法を検討し、実施する方法です。
この方法を通じて、行動の変化を観察し、効果的な介入を目指します。