2.0 4月1日(その1)勤務初日に痛感!学校って場所によって辺ぴだぞぅ問題〜何よりもまず、遅刻せず辿り着けるか?そこが一番肝心だ〜
4月1日。摩耶の、A小学校事務室への着任初日。
朝は、これまでの1時間以上早く起きた。
ご飯、トイレ、メイクをぱぱっとすませ、6時45分頃には家を出た。
正直、これまでの高校事務室勤務時代に比べて、「ありえないほど」早い。
新職場への要通勤時間は、異動発表直後、だから3月23日夕方頃にさっそく、経路探索アプリで調べておいた。
所要時間は、「1時間1分」。
アパートから最寄り駅まで、自転車で12分。
最寄りのB駅からC駅まで、電車で28分。
C駅ロータリーのCバス停から、Dバス停へ。ここが15分。
Dバス停からA小学校へ、徒歩で6分。
3月30日頃、事務室長からA小学校の副校長先生に聞いてくれて、
「勤務開始は8時15分です。それまでに、応接室へお越しください」
と、伝言だが指示を受けていた。
自転車で最寄り駅に向かいながら、摩耶は思った。
(だいぶ余裕を持って、遅れないように出られた、まずは順調だ)
自転車は、経路計算より少し早くB駅に着けて目当ての電車に時刻通り乗れた。
C駅までは混み合っており座れなかったが、車窓越しの見慣れぬ風景を眺めつつ、新鮮な気持ちで過ごせた。
C駅ロータリーで、Cバス停の時刻表を見て、
「ん?」
と思った。
「○○大学Cキャンパス行きのバスは、3/26〜4/6まで春休み特別ダイヤで運休」
とある。
運休……?
大学行きではない別の路線系統だけが走っているようだ。
(……あれっ?)
バス停に取り付けられたダイヤ表示を、ちょっと信じられない面持ちで眺める摩耶がいる。
「7時」の台は、「14」分とあり、7時32分の今、もうとっくに出た後だ。
「8時」の台は、「06」分とある。
(8時6分だと、普通に、始業に間に合わない……!)
タクシー?
歩き?
こんな朝から、脳内をフル回転させざるを得ない……。
摩耶ははっと思い、市教委のA小学校のホームページを急いで開き「アクセス」をクリックする。
この系統のバス停以外に、「または」として、全然別の系統で学校のかなり南を通るバス停が案内されている。
ロータリーを見回す。
遠くに、それらしい番号のバスが停まっている。
考えるより前に、摩耶はダッシュする。
駅寄りに戻り、横断歩道をずっと走って、別の系統のバス停に向かって走った。
「ふぁいはっしゃしまあす……」
と言ってドアを閉めそうになるバスに、摩耶はギリギリすべり込む。
なんとか乗れた……!
座席で、肩で息をしていた摩耶だが、少し落ち着くと、経路検索アプリを開く。
だが、この系統のバスでは、ヒットしない。
地図アプリを使って、最寄りと思われるEバス停の名前を入力すると、
8:04 Eバス停到着
8:15 徒歩でA小学校到着
の検索結果。
(信じられない……こんなに早く出たのに、初日なのに。もう最悪!)
マリリンマンソンめいた形相で摩耶は
「速くしろ速くしろ速くしろ速くしろ速くしろォォォォォ……」
と、口の中だけで唸るように、バス運転手に毒づいている。
学校の近く(注:そんなに近くはない)のバス停まで、本来乗りたかった系統よりも、全然時間がかかる理由がなんとなく見えた。
この路線のメインは、あくまでも途中の物流倉庫だったり、その近くの団地群、そして終点の大きな病院であって、学校のある住宅地は範囲外という感じみたいだ。
なんでこれに乗らざるを得なかったか……
一瞬冷静になった時に、「敗因」に思い当たった。
「3月23日に検索したから、大学のある期間の時刻がヒットしちゃったんだ。
というか、ゆうべもう一回改めて検索しておくべきだった……バカだーーー!」
バスは、法定速度で、途中停まったりしつつ、着実に走っている。
【当たり前のことだが、小学校の通学区(校区)の設定は、「勤務する教職員に交通至便かどうか」なんて全然関係がない。
だから、「めっちゃ駅前」の学校も存在するし、
反対に、「めっちゃ交通不便」な学校も存在するッ!】
8時5分頃に、降りるバス停に着く。
降車ボタンを連打したい激烈な気持ちを抑えて、摩耶はなんとか1回押すだけにとどめる。
降りたら、ビジネスリュックを上下にブンシャカ激しく揺らしつつ、住宅街をダッシュだ。
(あーもうマジ最低……私何やってんだろ!)
と情けなくなるけれど、情けなくなってる暇はない。走る一択の場面。
前方と、地図アプリを見る以外は、まさか的に脚に力を込め、走ることだけ。
真っ直ぐ、あるいは右折左折、曲がりくねった道、とにかく摩耶は走る……!
前方に、それっぽい高いフェンスと、高い木々、そして奥に校舎が見えてくる。
それらは学校を明示する「アイコン」だ。
時間を見ると、8時10分。
(着いた……なんとか間に合いそう)
この時の摩耶は、お気楽だったと言わざるを得ないだろう。
「初めて訪れる学校の恐ろしさ」は、ここからさらに発動するのだから……。
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