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神田川の秘密30の(3)  南蔵院は怪談乳房榎の発祥の地

三十の3 南蔵院・乳房榎(怪談噺の凄さ)

 南蔵院は氷川神社の斜向かいで、通りの右手にある。
 氷川神社の案内ではこの通りは鎌倉街道だそうだ。
 南蔵院は真言宗豊山派の寺で、本尊は薬師如来。正式には大鏡山薬師寺南蔵院という。

南蔵院の門は開かれている

 豊島区が建てた案内看板では彰義隊9士の首塚、相撲年寄の片男波、粂川、雷、二子山、花籠の墓があると書かれていた。それもあるだろうが、この寺が三遊亭圓朝の『怪談乳房榎』の舞台だったことに興味を持っていた。

乳房の形をした瘤が見える

 主人公の絵師、菱川重信は南蔵院の本堂に雄龍、雌龍の絵を描くことになり、泊まりがけで出かけていた。その留守に、美人妻に邪心を持って弟子入りしていた浪人、磯貝浪江が謀をもって美人妻と関係を持つ。

その後、浪江は絵師の重信殺しを手始めに次々と人を殺めていく。美人妻は乳房に腫れ物が出て、松月院の境内の榎には乳房に似たコブが有り、そこから滴る液を塗ると乳房の病がいえると言われていて、それを求めるが、絵師重信の祟りが及んでくる。浪江は重信の祟りに動かされ、騙してまで関係を持った重信の美人妻まで殺してしまう。
 絵師の子、真良太郎は重信の亡霊の力を借りて遂に親の仇、浪江を討ち果たす。

南蔵院の来歴を説明する掲示板

 三遊亭圓朝は「怪談牡丹燈籠」も創作し、演じている。奇しくも、「むさしあぶみ」を書いた浅井了意が翻訳した中国明代の小説「牡丹燈記」を土台にして日本的な挿話を混じえ「牡丹灯籠」を書き上げたそうだ。圓朝25歳の時の作品だというから、物書きの才能に溢れていたんだね。ついでながら、「真景累ヶ淵」も圓朝の作品だというから驚く。
 と言うわけで、南蔵院には榎はない。境内は整備されていて、本堂の建物も近代的なビルディングになっていた。隣接地ではブルドーザーが入ってまさに工事進行中だったから、重信の亡霊に出くわす雰囲気は全くなかった。

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