神田川の秘密27 窓の下には神田川・・(1)みなみこうせつ、喜多條忠の思い
二十七 窓の下には神田川 みなみこうせつと喜多條忠の思い
神田川はここで、かつては川としての流れを持っていた桃園川と合流する。
といっても、桃園川に今、水は流れていない。暗渠の中を人知れず流れている。埋められた桃園川の上は緑道となって、桃園川は川ではなくなった。水源のあった天沼弁天池から末広橋に至るかつての川は全長6キロ。水源だった弁天池も豊富な湧水があって、桃園川の水も田畑の灌漑、生活用水として使われていたそうだが、神田川や善福寺川と同様に、周辺の宅地化で湧水は枯渇している。遊歩道は中野区中野3丁目、西田橋から末広橋まで2、6キロが緑道になっている。
緑道の幅員は平均で6、5m、遊歩道はその中央部になっていて2、5~3、5mmあると表示されているから、ゆったり気分で歩くことができる。
「水の施設はカナール(水路)や壁泉があります」と区の掲示板に書かれていた。
壁泉は耳慣れない言葉だが、建築物の壁に取り付けられた噴水をさす。
この緑道は遊歩道の脇にアジサイ、カンツバキ、ドウダンツツジなど40種類の植え込みがされているそうだから、1年を通じて、四季折々の花や実を堪能できる仕掛けになっている。
桃園川緑道は上流の宮園橋を過ぎた辺りから大久保通りと並走している。大久保通りは末広橋で神田川を横切ると、南下して新宿区百人町を抜けて飯田橋方面へと向かっている。末広橋から見て、右岸は新宿区、左岸は中野区になる。
桃園川の緑道と神田川の遊歩道とが交差するところに、それはひっそりと置かれていた。背後の下草が伸び、一部は冬枯れしていて、その石碑は寂しげな顔に見えた。それが南こうせつとかぐや姫が歌って大ヒットした神田川の歌碑であることを、この旅が始まる前から知っていた。神田川逍遥、ぶら歩きの通過点としてこの歌碑を外すことはできない。