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神田川の秘密 杉並大宮神社

十六の(1) 杉並大宮神社

 神田川に合流する支流の一つに善福寺川がある。
 杉並区善福寺池を水源として、中野区弥生町6丁目の和田廣橋の先で神田川に合流する。全長1、5キロと短いが、一級河川だ。本流の神田川にとって大事な支流だが、善福寺川も湧水は枯渇して地下水をポンプで組み上げて流している。井の頭池も善福寺池も宅地化が進んで地下に雨水が浸透しなくなったし、地下水を大量に汲み上げたために湧水が枯れてしまったのだが、川が川の機能を喪失しないために地下水を再度汲み上げて流す羽目になってしまった。

 大雨ともなると、浸透する場所を失った雨水が神田川、善福寺川めがけて流れ込む。そして、洪水となる。川床を深くし、側壁をセメントで護岸をする。調節池を建設する。セメントで覆われた川には蛍やトンボがいなくなった。魚もいなくなって、野鳥も来ない。それで近隣住民と役所が中心になって自然を回復する運動と事業をする。人間の営みは複雑で時に愚かしい。

大宮神社の正面
神田川の支流・善福寺川は
大宮神社の裏手を流れている
最寄りえきは永福町。

 そんなことを考えながら、永福通りを10分ほど真っ直ぐ進み、井の頭線・永福町駅を左手に見ながらそこを通り越し、善福寺川に向かった。神田川に合流するこの支流にはどうしても見ておきたい場所があった。

 交通量の多い方南通りとの交差点を越したところに杉並大宮八幡神社が有るのを知っていた。杉並(大宮)八幡神社は東京に数ある神社の中でも規模の大きさが抜きん出ている。明治神宮(21万坪)が都内最大で、次が靖国神社(2万8000坪)。杉並八幡神社は3番目の規模(1万5000坪)を誇る。明治の新政府に領地を削られる前は6万坪を擁する広さだったそうだから往時はかなりのものなのだ。いち八幡神社とはわけが違う。

 永福通りと方南通りが交差する変則五叉路の信号は大宮公園前という。真っ直ぐ渡ってほんの20メートルほどの左手に一対の大きな石灯籠があって、一之鳥居が見える。鳥居の下に立って境内を眺めると、短い石段の先にゆったり幅の正参道が直線に伸び、二之鳥居、楼門と続く。この距離感が大宮神社の規模の大きさを象徴している。楼門は神社の境内にある案内板では神門と表示されていた。

銀杏にも髪が宿る
雌雄一対の銀杏が本殿の前にある

 門を挟んで両脇に銀杏の大木が見えるが、しめ縄が結ばれていて、御神木になっていた。日本では樹木にも神が宿る。本殿に向かって右手の銀杏が男、左が女になっている。銀杏には雌雄があるので御神木を男女に見立てているのだろうか。巨木だ。春にはみどりの葉を体いっぱいに付け、秋には黄金の葉を見せて銀杏の実をたくさん落とすことだろう。今は骨ばった枝を空に向かって広げているばかりだ。

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