神田川の秘密29の7 都電にたくさん乗っておけばよかったなあ、今では荒川線だけになってしまった
二十九の7 都電にたくさん乗っておけばよかったなあ、
今は荒川線だけになってしまった
今になって思えば、自由な時間がたっぷり有った青年時代、都電にたくさん乗っておけばよかったと後悔する。今更60年前に戻るのは難しい。とはいえ、乗った都電の幾つかは今でも記憶に残っている。新宿・角筈から終点の水天宮までの13番。角筈電停から四谷、市ヶ谷、九段下、神保町、淡路町、岩本町、両国へと抜ける12番。
路面電車から見る街の景色は車で通り過ぎる街並みとは違っていた。渋谷駅前からの都電も記憶に残っている。先ずは6番。渋谷駅前・宮益坂下を出ると青山車庫前、高樹町、材木町、六本木、溜池、新橋へと向かう。同じ渋谷発でも34番は方向が全く違っていて、並木橋、天現寺、二の橋、金杉橋へと向かっていた。昭和37年(1962年)には1日150万人が利用し、総延長213km、40系統があったというから、都民の大事な足だったことは間違いない。昭和42年(1967年)に廃止が決まり、1系統だけ残して1972年までに全線が撤去されたのだった。
その、唯一残った都電がさっき、明治通りの脇の鉄路をやって来た荒川線で、高戸橋交差点の信号手前を左折しようとしているのだった。老人にはたまらない光景に映ってしまう。そこをほぼ直角に左折した都電は次の停留所、曙橋に停まると終点の早稲田になる。荒川線は新宿区・早稲田と荒川区・三ノ輪の間を走っている。早稲田からの所要時間は王子まで28分、三ノ輪の終点まで行くと56分。乗り換えなければ、全区間を乗って大人1人170円。全長12、2キロ。複線で、停留所数は30カ所ある。
懐かしさのあまり、神田川の逍遥を一区切りしたところで、始発の早稲田から大塚駅前まで都電に乗った。乗客は思ったより多く、年寄りはもちろん、若者の乗客も少なくなかった。懐かしさで乗った人たちではなく、交通手段として利用している人たちだろう。これを民営化しろという人がいるそうだが、都営のままで何の問題もなさそうだけどね。何でも民営化すれば効率が良くなってサービスも向上するというのはほとんど迷信に近い。
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