平良達郎と沖縄について思うこと
UFCファイターの平良達郎がアレックス・ペレス戦後にMMA HOURに出演し、今後の目標を訊かれ「日本人初のUFCチャンピオン」と答えていた。
私は彼が自身をためらいもなく「日本人」と言うことにひっかかった。
沖縄というと元々は琉球王国であり、戦前は日本に併合され、戦中は地上戦が行われ、戦後は現在まで米軍基地が置かれているという経緯から、沖縄は日本とは違うという意識を持つ者もいると聞き、そのような人がいるのは自然なことだと思う。
しかし彼くらいの世代だと本土の人間に対する負の感情を持つ割合は少ないのかもしれない。戦争があった時代からは時間が経ち、戦後数十年ほどの米兵の犯罪がすさまじかった時期も経験してはいない。
(一応インタビューは読んでみたが、やはり日本人であると言うことにためらいがない。祖父から戦争の話は聞かされていたそうだが、そのことについてインタビューでは掘り下げられていない。)
沖縄で米兵による強姦事件を聞いたとき、私は「またか」と気分が沈んだ。
アメリカで起きた銃撃事件の際、あるNBAのコーチは「いったいつになったら何か手を打つんだ」と言ったそうだが、同じことを想った。
戦後まもなく沖縄や他の進駐軍がいた地域では進駐軍による犯罪(強盗・強姦・殺人)が多発した。
戦争による犯罪、特に強姦は第二次世界大戦で負けた地域ではどこでも起きているだろうし、有史(に限らず)以来ずっとあると思うので、アメリカ人だけの人間性が原因だと言うつもりはない。近代の例を挙げると戦後ドイツや満州におけるソ連軍、ノルマンディー上陸作戦後のフランス、中国における旧日本軍、ベトナム戦争における韓国軍、アフリカ内戦、ユーゴスラビア、あるいは現在のイスラエル・パレスチナ等々。
ただ少なくとも、直接的に被害を受けている人からすればそんなことは関係ないだろう。歴史的・あるいは統計的にどこでも発生しているからと言って看過できることではない。
これはバイアスかもしれないが、性被害者に対する支援や研究の本は沖縄で行われているものが多い気がする。(『言葉を失ったあとで』、『海をあげる』,etc)
その後続報として15件を隠していたことが発覚した。
追記:神奈川でも
自分と沖縄のかかわりと言えば、修学旅行で行ったことがあるくらいで、そのころは何も考えていなかった。
修学旅行らしく、戦争に関するものを見たが当時一番興味を惹かれたのは中城城くらいで、他は興味を持っていなかった。
戦争の語り部を聞いた気もするが、よく覚えていない。
いつから沖縄に興味を持ったのかも覚えていないが、多分きっかけは空手ではないだろうか。(それだけではないだろうが)そこから近代における沖縄自体にも関心を持ったのだと思う。
white guilt という言葉がある。奴隷貿易、現地住民の虐殺、植民地主義を先祖が行っていたことに対する白人が持つ責任あるいは罪悪感という意味らしい。
先祖の罪を子が償うというのは、そんなことする必要がないだろうと思う。仮に「お前の先祖が私の先祖を攻撃した。だから今私の攻撃を受け入れろ」とでも言われたら「知らんがな」と思うし、今のところ絶対に受け入れるつもりはない。
他者に対する加害を考えればどの人間も、血筋をたどればその先祖に誰も加害をしていない人間などいないだろう。そういう意味では誰もが等しく加害者となる。
しかし、現在の沖縄の状況と本土のふるまいを考えると、沖縄の人間が本土に敵対心を持ったとしても当然のことだと思ってしまう。
中国ではコロナを機にネット上で日本バッシングが加速したらしいが、記事の内容が本当なら、もう取り返しがつかないところまで来ているのではないか。
私は昔から人間の持つ動物性が病的に嫌いで、自分が格闘技を含めてしていることは、ほとんどすべて動物性に対する逃避・あるいは理解のためではないかと思う。
仮に平良達郎がUFCのチャンピオンとなったとして、私は素直に喜べるだろうか。
沖縄の現状を少しだけ知っている身からすれば、平良達郎の活躍を直視しづらく、どうしても彼の育った環境について考えてしまう。
もしこれを読んだ人で沖縄の基地問題について興味を持ったなら以下の記事は役に立つかもしれない
参考
追記:小泉先生が沖縄の問題を黙殺することによってもたらせられるものについても語っている
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