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2023年度 記事 まとめ



部分分数分解っぽく積分を解く (2023/04/22~2023/04/30)

部分分数分解という方法がある。

$${S = \frac{1}{1\cdot2} + \frac{1}{2\cdot3} + \frac{1}{3\cdot4} + \dots + \frac{1}{n(n+1)}}$$

一つの項$${\frac{1}{k(k+1)}}$$に着目して、隣接二項の差に分解する。

$${\frac{1}{k(k+1)} = \frac{1}{k} - \frac{1}{k+1}}$$

隣り合う二項の和$${\frac{1}{1\cdot2} + \frac{1}{2\cdot3}}$$に着目すると、中間項が相殺されて初項と末項のみが残る。

$${\frac{1}{1\cdot2} + \frac{1}{2\cdot3} = (\frac{1}{1} - \frac{1}{2}) + (\frac{1}{2} - \frac{1}{3}) = \frac{1}{1} +(- \frac{1}{2} + \frac{1}{2}) - \frac{1}{3} = \frac{1}{1}- \frac{1}{3}}$$

$${S}$$全体に適用する。

$${S \\= \frac{1}{1\cdot2} + \frac{1}{2\cdot3} + \frac{1}{3\cdot4} + \dots + \frac{1}{n(n+1)} \\ = (\frac{1}{1} - \frac{1}{2}) + (\frac{1}{2} - \frac{1}{3}) + (\frac{1}{3} - \frac{1}{4}) + \dots +  (\frac{1}{n} - \frac{1}{n+1}) \\ = \frac{1}{1} + (- \frac{1}{2} + \frac{1}{2}) + (- \frac{1}{3} + \frac{1}{3})  + \dots + (-\frac{1}{n} +\frac{1}{n}) - \frac{1}{n+1}\\ = \frac{1}{1}+ 0 +0+\dots+0- \frac{1}{n+1}\\ = \frac{1}{1}- \frac{1}{n+1}}$$

このようにして、一見計算できなさそうな総和の値を求めることができる。

$${\int_{b}^{a}x^2dx}$$を計算する。

積分の定義から次式が成り立つ。

$${\int_{b}^{a}x^2dx = x_n^2(x_n-x_{n-1}) + \dots + x_2^2(x_2-x_1) + x_1^2(x_1-x_0)}$$
$${(n \to \infty; a = x_0 < x_1 < x_2 < \dots < x_{n-1} < x_n = b)}$$

$${n \to \infty}$$の条件下では次式が成り立つ。(微分)

$${x_k^2 = \frac{1}{3}\frac{x_k^3-x_{k-1}^3}{x_k-x_{k-1}}}$$

上式から下式を得る。

$${x_k^2(x_k-x_{k-1}) = \frac{1}{3}(x_k^3-x_{k-1}^3)}$$

一つの項$${x_k^2(x_k-x_{k-1})}$$に着目して、隣接二項の差に分解する。(上式適用)

$${x_k^2(x_k-x_{k-1}) = \frac{1}{3}(x_k^3-x_{k-1}^3)}$$

隣り合う二項の和$${x_2^2(x_2-x_1) + x_1^2(x_1-x_0)}$$に着目すると、中間項が相殺されて初項と末項のみが残る。

$${x_2^2(x_2-x_1) + x_1^2(x_1-x_0) = \frac{1}{3}\{(x_2^3-x_1^3)+(x_1^3 - x_0^3)\} = \frac{1}{3}\{x_2^3+(-x_1^3+x_1^3) - x_0^3)\} = \frac{1}{3}\{x_2^3- x_0^3\}}$$

$${\int_{b}^{a}x^2dx}$$全体に適用する。

$${\int_{b}^{a}x^2dx \\= x_n^2(x_n-x_{n-1}) + \dots + x_2^2(x_2-x_1) + x_1^2(x_1-x_0) \\=\frac{1}{3}\{(x_n^3-x_{n-1}^3) + \dots + (x_2^3 - x_1^3) + (x_1^3 - x_0^3)\} \\=\frac{1}{3}\{x_n^3 + (-x_{n-1}^3 + x_{n-1}^3) + \dots + (-x_2^3 + x_2^3) + (-x_1^3 + x_1^3) -x_0^3\}\\=\frac{1}{3}\{x_n^3 + 0 + \dots + 0 + 0 - x_0^3\}\\=\frac{1}{3}\{x_n^3-x_0^3\}\\=\frac{x_n^3}{3}-\frac{x_0^3}{3}\\=\frac{b^3}{3}-\frac{a^3}{3}}$$

このようにして、計算不可能に見える総和の値を求めることができる。


別アプローチによる冪関数の微分 (2023/05/13)

$${x^n}$$を$${x}$$で微分することを考える。

$${x_- < x < x_+}$$となる2点$${x_-, x_+}$$を取ると
$${(x^n)' = \lim_{(x_+ - x_-) \to 0} \frac{x_+^n - x_-^n}{x_+ - x_-}}$$

右辺の分子に対して、恒等式$${b^n-a^n = (b-a)(b^{n-1}a + b^{n-2}a^2 + \dots + ba^{n-1})}$$を適用すると
$${\lim_{(x_+ - x_-) \to 0} \frac{x_+^n - x_-^n}{x_+ - x_-} \\=\lim_{(x_+ - x_-) \to 0} \frac{(x_+ - x_-)(x_+^{n-1}x_- + x_+^{n-2}x_-^2 + \dots + x_+x_-^{n-1})}{x_+ - x_-} \\=\lim_{(x_+ - x_-) \to 0} (x_+^{n-1}x_- + x_+^{n-2}x_-^2 + \dots + x_+x_-^{n-1})}$$

$${(x_+ - x_-) \to 0}$$は、即ち$${x_+ \to x, x_- \to x}$$であるため
$${\lim_{(x_+ - x_-) \to 0} (x_+^{n-1}x_- + x_+^{n-2}x_-^2 + \dots + x_+x_-^{n-1}) \\=x^{n-1}x + xx^{n-2} +\dots + x^{n-1}x \\=nx^{n-1}}$$

したがって、下式を得る。
$${(x^n)' = nx^{n-1}}$$


第三の連立方程式の解き方 (2023/05/20)

連立方程式の解き方は2つある。

$${2x+3y = 11 \\3x+4y=15}$$

1.代入法
方針:一方の式で$${x=}$$の形を作ってからもう一方の式に代入する。

$${2x+3y = 11 \\3x+4y=15}$$

$${x+\frac{3}{2}y = \frac{11}{2} \\3x+4y=15}$$

$${x = \frac{11}{2}-\frac{3}{2}y \\3x+4y=15}$$

$${x = \frac{11}{2}-\frac{3}{2}y \\3(\frac{11}{2}-\frac{3}{2}y)+4y=15}$$

$${x = \frac{11}{2}-\frac{3}{2}y \\\frac{33}{2}-\frac{9}{2}y+4y=15}$$

$${x = \frac{11}{2}-\frac{3}{2}y \\-\frac{9}{2}y+4y=15-\frac{33}{2}}$$

$${x = \frac{11}{2}-\frac{3}{2}y \\-\frac{1}{2}y=-\frac{3}{2}}$$

$${x = \frac{11}{2}-\frac{3}{2}y \\y=3}$$

$${x = \frac{11}{2}-\frac{3}{2}\cdot3 \\y=3}$$

$${x = \frac{11}{2}-\frac{9}{2} \\y=3}$$

$${x = \frac{2}{2} \\y=3}$$

$${x = 1\\y=3}$$

2.加減法
方針:式同士で加算・減算を行う

$${2x+3y = 11 \\3x+4y=15}$$

第一式の両辺に$${3}$$を掛ける 第二式の両辺に$${2}$$を掛ける($${x}$$の係数が揃う)
$${6x+9y = 33 \\6x+8y=30}$$

第一式から第二式を減ずる
$${y = 3}$$

第一式に$${y = 3}$$を代入
$${2x+3\cdot 3 = 11}$$
$${2x+9 = 11}$$
$${2x= 2}$$
$${x= 1}$$

よって
$${x = 1\\y=3}$$

このように連立方程式の解き方は2つあるが、筆者にとってはどちらの方法も符号を間違えたり片方の辺のみを定数倍してしまったりとミスが多い解き方だった。

そこで、第三の方法を考案した。

3.(名称未定)
方針:$${x, y}$$の恒等式を立ててから条件式(解きたい連立方程式)を代入する。

$${2x+3y = 11 \\3x+4y=15}$$

連立方程式の変数項を材料に、$${x=}$$の形で恒等式を立てる。
 第一式と第二式の左辺を並べる。
 $${(2x+3y) \quad (3x+4y)}$$
 $${y}$$の項が消えるように係数を立てる。
 $${4(2x+3y)-3(3x+4y)}$$
 $${x}$$の係数が$${1}$$になるように全体を割る。
 $${\frac{4(2x+3y)-3(3x+4y)}{4\cdot2-3\cdot3}}$$
 このようにして得た式は常に$${x}$$と等しい。
 $${x=\frac{4(2x+3y)-3(3x+4y)}{4\cdot2-3\cdot3}}$$
 $${y}$$についても同様にする。
 $${y=\frac{3(2x+3y)-2(3x+4y)}{3\cdot3-2\cdot4}}$$

条件式(解きたい連立方程式:$${2x+3y = 11,3x+4y=15}$$)を代入する。
$${x=\frac{4\cdot11-3\cdot15}{4\cdot2-3\cdot3}}$$
$${y=\frac{3\cdot11-2\cdot15}{3\cdot3-2\cdot4}}$$

$${x=\frac{44-45}{8-3\cdot3}}$$
$${y=\frac{33-30}{9-8}}$$

$${x=\frac{-1}{-1}}$$
$${y=\frac{3}{1}}$$

$${x=1}$$
$${y=3}$$

この方法だと計算に必要な手順が抜け漏れなく紙に書き出されるため思考過程が整理される。
また、一方の辺からもう一方の辺への移項や両辺定数倍などのミスしやすい計算手順がない。
欠点は式が複雑になり、計算に手間がかかる。


積の微分 (2023/05/27)

$${{f(x)}{g(x)}}$$の微分を定義に則って導く。

$${\{f(x)g(x)\}' \\= \lim_{\Delta x \to 0}\{\frac{f(x+\Delta x)g(x+\Delta x)-f(x)g(x)}{\Delta x}\} \\=\lim_{\Delta x \to 0}\{\frac{f(x+\Delta x)g(x+\Delta x)+(-f(x+\Delta x)g(x) + f(x+\Delta x)g(x))-f(x)g(x)}{\Delta x}\}\\=\lim_{\Delta x \to 0}\{\frac{\{f(x+\Delta x)g(x+\Delta x) - f(x+\Delta x)g(x)\} +\{f(x+\Delta x)g(x)-f(x)g(x)\}}{\Delta x}\}\\=\lim_{\Delta x \to 0}\{\frac{f(x+\Delta x)\{g(x+\Delta x) - g(x)\} +\{f(x+\Delta x)-f(x)\}g(x)}{\Delta x}\}\\=\lim_{\Delta x \to 0}\{f(x+\Delta x)\frac{g(x+\Delta x) - g(x)}{\Delta x}+\frac{f(x+\Delta x)-f(x)}{\Delta x}g(x)\}\\=f(x+0)g'(x)+f'(x)g(x)\\=f(x)g'(x)+f'(x)g(x)}$$

途中で$${-f(x+\Delta x)g(x) + f(x+\Delta x)g(x)\,(=0)}$$を差し込むのが肝。
$${A-B}$$に$${-C+C \,(=0)}$$を差し込んで$${A-B=A+(-C+C)-B=(A-C)+(C-B)}$$と変形する。


恒等式から微分積分の関係を導く (2023/06/03)

以下の式は$${x}$$に関して常に成り立つ。

条件
$${a = x_1 < x_2 < … < x_n < b}$$
$${g(x_i,x_{i-1}) = \frac{f(x_i)-f(x_{i-1})}{x_i-x_{i-1}}}$$

結果
$${f(b)-f(a)\\=f(x_n)-f(x_0)\\=f(x_n)+0+0+…+0-f(x_0)\\=f(x_n)+(-f(x_{n-1})+f(x_{n-1}))+(-f(x_{n-2})+f(x_{n-2}))+…+(-f(x_1)+f(x_1))-f(x_0)\\=(f(x_n)+-f(x_{n-1}))+(f(x_{n-1})-f(x_{n-2}))+…+(f(x_1)-f(x_0))\\=g(x_n,x_{n-1})(x_n-x_{n-1})+g(x_{n-1},x_{n-2})(x_{n-1}-x_{n-2})+…+g(x_1,x_0)(x_1-x_0)\\=\sum_{i=1}^ng(x_i,x_{i-1})(x_i-x_{i-1})}$$

$${n \to \infty}$$を取ると
微分の定義から
$${\sum_{i=1}^ng(x_i,x_{i-1})(x_i-x_{i-1}) \to \sum_{i=1}^nf'(x_i)(x_i-x_{i-1})}$$
積分の定義から
$${\sum_{i=1}^nf'(x_i)(x_i-x_{i-1}) \to \int_{a}^bf'(x)dx}$$

よって
$${f(b)-f(a) = \int_{a}^bf'(x)dx}$$


1a, 2a, 3a, …, (b-2)a, (b-1)aをbで割った余り (2023/06/03)

以下の定理-1を証明する。

定理-1
自然数$${a,b}$$が互いに素であるとき、
$${1a, 2a, 3a, …, (b-2)a, (b-1)a}$$のそれぞれを$${b}$$で割った余りは
昇順に並べ直すと$${1, 2, 3, …, b-2, b-1}$$である。

証明
$${1a, 2a, 3a, …, (b-2)a, (b-1)a}$$から2数$${ia, ja(i < j)}$$を選ぶ。

もし$${ia, ja}$$のそれぞれを$${b}$$で割った余りが等しいならば、
$${ja-ia=(j-i)a}$$は$${b}$$で割り切れる。

一方の因数$${a}$$は$${b}$$と互いに素だから、
もう一方の因数$${j-i}$$が$${b}$$で割り切れる。

ところが、$${i}$$と$${j}$$は$${i < j}$$かつ$${1}$$以上$${b-1}$$以下の自然数だから、
$${1 \leqq j-i \leqq b-2}$$である。

この範囲に$${b}$$で割り切れる自然数$${j-i}$$はない。

矛盾が導かれたので、仮定が誤りである。

したがって、
$${ia}$$と$${ja}$$を$${b}$$で割った余りは異なる。

言い換えると、
$${1a, 2a, 3a, …, (b-2)a, (b-1)a}$$のそれぞれを$${b}$$で割った余りは
全て異なる。

ここで、
$${1a, 2a, 3a, …, (b-2)a, (b-1)a}$$の一つ$${ma}$$を$${b}$$で割った余りを$${r_{m}}$$とする。

先程の結論から
①$${r_m}$$は全て異なる。

また、$${a}$$は$${b}$$と互いに素であり
かつどの$${m}$$も$${b}$$で割り切れないため、
常に$${ma}$$は$${b}$$で割り切れない。

$${r_m}$$は常に$${b}$$で割り切れない$${ma}$$を$${b}$$で割った余りだから
②$${r_m}$$は$${1}$$から$${b-1}$$までの$${b-1}$$個の自然数のうちから、
 いずれかの値を取る。

さらに、
$${ma}$$が取り得る値は$${1a, 2a, 3a, …, (b-2)a, (b-1)a}$$の$${b-1}$$個だから
③$${r_m}$$が取り得る値も$${b-1}$$個である。

①〜③より
$${r_m}$$が取る全ての値は、$${b-1}$$個の自然数$${1, 2, 3, …, b-2, b-1}$$である。

つまり、
自然数$${a,b}$$が互いに素であるとき、
$${1a, 2a, 3a, …, (b-2)a, (b-1)a}$$のそれぞれを$${b}$$で割った余りは
昇順に並べ直すと$${1, 2, 3, …, b-2, b-1}$$である。
証明終

この定理-1を応用して一次不定方程式の整数解の存在とフェルマーの小定理の成立を証明する。

1.一次不定方程式の整数解の存在

$${a}$$と$${b}$$が互いに素な自然数のとき、
$${ax+by=1}$$を満たす整数$${x,y}$$が存在する。

証明
定理-1から$${b}$$で割ると余りが$${1}$$であるような
$${1a, 2a, 3a, …, (b-2)a, (b-1)a}$$の一つ$${m'a}$$が存在する。

$${m'a}$$を$${b}$$で割った商を$${n'}$$とすると
$${m'a=n'b+1}$$
$${n'b}$$を左辺に寄せると
$${m'a-n'b=1}$$
並べ替えると
$${a\cdot m'+b\cdot (-n')=1}$$

この式は、
$${(x, y) = (m', -n')}$$が一次不定方程式$${ax+by=1}$$の解であることを表す。

以上より、$${a}$$と$${b}$$が互いに素な自然数のとき、
$${ax+by=1}$$を満たす整数$${x,y}$$が存在する。
証明終

2.フェルマーの小定理の成立

素数$${p}$$が自然数$${a}$$に対して互いに素であるとき、
$${a^{p-1} \equiv 1 \mod p}$$

証明
定理-1から
$${1a \cdot 2a \cdot 3a \cdot … \cdot (b-2)a \cdot (b-1)a\equiv 1 \cdot 2 \cdot 3 \cdot … \cdot (b-2) \cdot (b-1) \mod b}$$
まとめると
$${(b-1)!a^{b-1} \equiv (b-1)! \mod b}$$

今、自然数$${b}$$が特に素数$${p}$$であるとき
$${(p-1)!a^{p-1} \equiv (p-1)! \mod p}$$

$${p}$$が素数であることから、
$${1, 2, 3, …, p-2, p-1}$$のそれぞれと$${p}$$は全て互いに素である。

したがって、
$${(p-1)!}$$と$${p}$$も互いに素となる。

よって、合同式の両辺を$${(p-1)!}$$で割ることができる。
$${a^{p-1} \equiv 1 \mod p}$$
証明終


記事「第三の連立方程式の解き方」のフィードバック (2023/06/10)

知り合いに記事「第三の連立方程式の解き方」を読んでもらったときの感想をまとめます。

初読
記号が読めなかった、自分の知っている連立方程式ではない
→$マークが表示されていたらしく、数式が正しく表示されていなかった
(作り手用のサイトに飛んでいた可能性がある)

分量が丁度よい、サクッと読める
カジュアル数学の方針が相手に伝わっていてヨシ

文章が押し付けがましくない(ので読みやすい)
→例えば「〜のやり方は間違っています!!」みたいな主張がなく、
読みやすかったとのこと。
言われてみればそういったことは書いていない。
自分でもそのような文章は読みにくいので、
今後も数学上の政治的な(?)主張は避ける。

あなた(スーカズ)らしい文章
→端的な文章で個性が現れているとのこと。
書き物を人に見せるとよく”あなたらしい”と言われる。
端的なことは良いこと(だと信じている)ので、褒め言葉として受け止める。

二回目
今度は正しく数式が表示された
→正しい数式を読んだ上では内容(連立方程式)を理解できたとのこと。
 初読時は内容を理解できないと返されてショックだったが、解決してよかった。
 (初読時数式が正しく表示されなかった理由は依然不明)

第三の方法は加減法に似ている
→加減法の手順を一つの式の上で行っているものなので、そうだと思う。

よく教科書以外の方法が思いつくと褒められた
→褒められて嬉しい。そのうえで、なぜ教科書にないこと思いつくのかと考えると、うまく答えられなかった。
見せた相手から「二次創作みたいなもんじゃない?」と提案されて、合点がいった。
二次創作もできるできないが分かれる。
(自分は小説や漫画の二次創作はできない。)

思考の整理と手順の簡略化なら、手順の簡略化優先
(なので、第三の解き方は使わない)
→自分は連立方程式は計算ミスしまくっていたので、
スピードが落ちても確実な方法があるならそちらを採用したい。
でも、従来の方法でミスなく解け、かつ高スピードで処理できるなら
それでいいと思う。
次に解き方を考案するならスピードや機械的に解けるかもカバーしたい。

このレベルの数学の記事なら読めた。
→文系の相手に見せたので、理解してもらえるかが不安だった。
最初見せたときに理解できないと返されたのでショックだった。
次に見せたときは数式が正しく表示されていなかったことが原因だと判明し、
内容は問題なく理解できることがわかった。
逆に、この難易度で気を遣わないでくれと怒られた。
中学数学の内容までならガシガシ書いても問題ないのかもしれない。

まとめ
・第三の方法は、高スピードで解きたい・機械的に解きたい人には不評
 →機械処理派のニーズも考慮する(自分は意味理解派)
・教科書にない方法を思いつくのは素晴らしい。
・今の分量(少なめ 1200字程度)を続ける。
・(数学上の)政治的な主張や価値観の押しつけはできるだけ避ける。
・中学数学の内容なら躊躇せずに書く。
・カジュアル数学の信条は読み手に伝わっている。


連立方程式、第三の方法の機械化 (2023/06/10)

記事『第三の連立方程式の解き方』を知り合いに見せたところ、
「解く手順が増えるのならその方法は使わない。
効率よく解ける方法を選ぶ。」
と意見をもらった。

解く手順が複雑になるのでその欠点を改善できないかと考えたところ、
一般化された答えを覚え、個別の連立方程式に当てはめればいいじゃん!
と思いついた。

$${ax+by=e}$$
$${cx+dy=f}$$

上記の連立方程式が与えられたとする。
ただし、各式が表す直線は互いに平行ではない。
(2直線が1点で交わる、つまり1組の解を持つ。)
つまり、$${-\frac{a}{b} \neq -\frac{c}{d}}$$
整理して、$${ad - bc \neq 0}$$

まず、変数の項を並べる。
$${ax+by\quad cx+dy}$$

第二に、$${y}$$が消えるように係数を立てる。
$${d(ax+by) - b(cx+dy)}$$

第三に、$${x}$$の係数が1となるように全体を割る。
$${\frac{d(ax+by) - b(cx+dy)}{ad - bc}}$$

こうして得られた結果は常に$${x}$$と等しい。
$${x = \frac{d(ax+by) - b(cx+dy)}{ad - bc}}$$

$${y}$$についても同様である。
$${y = \frac{-c(ax+by) + a(cx+dy)}{ad - bc}}$$

今、
$${ax+by=e}$$
$${cx+dy=f}$$
が与えられているので
$${x = \frac{de - bf}{ad - bc}}$$
$${y = \frac{-ce + af}{ad - bc}}$$

整理すると、
$${x = \frac{ed - bf}{ad - bc}}$$
$${y = \frac{af - ec}{ad - bc}}$$

つまり、始めに$${ad - bc}$$(たすきがけに掛けて差を取る)
というかたまりを覚えておき
(1)$${x}$$を求めたければ$${x}$$の係数$${a, c}$$を定数項$${e, f}$$に置き換える。
(2)$${y}$$を求めたければ$${y}$$の係数$${b, d}$$を定数項$${e, f}$$に置き換える。
$${ad - bc}$$を分母に、置き換えたものを分子に据えれば完成!
というわけである。

例えば、
$${2x+3y=11}$$
$${3x+4y=15}$$

この場合、$${(a, b, c, d) = (2, 3, 3, 4)}$$で$${(e, f) = (11, 15)}$$なので
$${x = \frac{11 \cdot 4 - 3  \cdot 15}{2 \cdot 4 - 3 \cdot 3} = 1}$$
$${y = \frac{2 \cdot 15 - 11 \cdot 3}{2 \cdot 4 - 3 \cdot 3} = 3}$$
と求まる。


積分の計算方法 (2023/06/17~2023/07/22)

関数$${f(x)}$$を$${a}$$から$${b}$$まで積分する、とは

$$
\lim_{n \to \infty}\sum_{i=1}^{n}f(x_i)(x_{i}-x_{i-1})
$$

を計算することです。
(ただし、$${a = x_0 < x_1 < … < x_n =b}$$とします。)

これをまとめて$${\int_a^bf(x)dx}$$と表します。

この積分の計算方法を考えてみます。


$${\int_a^bx^2dx}$$を解きます。

まず、定義通りに式を展開します。

$${\int_{b}^{a}x^2dx \\=\lim_{n \to \infty}\sum_{i=1}^{n}x^2_i(x_{i}-x_{i-1}) \\= \lim_{n \to \infty}\{x_n^2(x_n-x_{n-1}) + \dots + x_2^2(x_2-x_1) + x_1^2(x_1-x_0)\}}$$

ここで、多くの方が手を止めるのではないかと思います。
どうやって計算すればいいのかと。

1.一般項を隣接二項の差に分解する

もし、一般項$${x_i^2(x_i-x_{i-1})}$$が
ある関数$${F(x)}$$による隣接二項の差に分解できたらどうでしょう。
$${x_i^2(x_i-x_{i-1}) = F(x_{i}) - F(x_{i -1})}$$

先程の計算が進みます。
$${\int_{b}^{a}x^2dx \\=\lim_{n \to \infty}\sum_{i=1}^{n}x^2_i(x_{i}-x_{i-1}) \\= \lim_{n \to \infty}\{x_n^2(x_n-x_{n-1}) + \dots + x_2^2(x_2-x_1) + x_1^2(x_1-x_0)\} \\=\lim_{n \to \infty}\{ (F(x_n) - F(x_{n-1})) + \dots + (F(x_2) - F(x_{1})) +\\ (F(x_1) - F(x_{0}))\} \\=\lim_{n \to \infty}\{ F(x_n) + (- F(x_{n-1}) + F(x_{n-1})) + \dots +(- F(x_{2}) + F(x_2))+ (- F(x_{1}) + F(x_1)) - F(x_{0})\}\\=\lim_{n \to \infty}\{ F(x_n) + 0+ \dots +0+ 0- F(x_{0})\} \\=\lim_{n \to \infty}\{ F(x_n) - F(x_{0})\}\\=\lim_{n \to \infty}\{ F(b) - F(a)\}\\=F(b) - F(a)}$$

関数$${F(x)}$$の正体を突き止めれば、積分の結果を求められそうです。
$${x^2}$$に対して$${F(x)}$$はどういった関数なのでしょうか?

定数項$${F(x_i),F(x_{i-1})}$$は
$${x_i^2(x_i-x_{i-1}) = F(x_{i}) - F(x_{i -1})}$$
を満たします。

両辺を$${x_i-x_{i-1}}$$で割ります。
($${x_{i-1} < x_i}$$より$${x_i-x_{i-1} \ne 0}$$が保証されています。)
$${x_i^2=\frac{F(x_{i}) - F(x_{i -1})}{x_i-x_{i-1}}}$$

$${n \to \infty}$$より$${x_{i -1} \to x_i}$$です。
ということは、右辺$${\frac{F(x_{i}) - F(x_{i -1})}{x_i-x_{i-1}}}$$は
$${x = x_i}$$における関数$${F(x)}$$の微分係数です。

$${x_i^2=\frac{F(x_{i}) - F(x_{i -1})}{x_i-x_{i-1}}}$$は微分係数$${\frac{F(x_{i}) - F(x_{i -1})}{x_i-x_{i-1}}}$$
が$${x_i^2}$$に等しいことを示しています。

したがって、$${F(x)}$$は
$${x = x_i}$$で微分すると$${x_i^2}$$になる関数
です。

つまり、微分すると$${x^2}$$になる関数が$${F(x)}$$です。
そのような関数のひとつは$${\frac{1}{3}x^3}$$です。
(定数項$${C}$$の自由度はありますが、省略します。
$${C}$$がどのような値でも結果は同じです。)
(この部分は「$${\frac{1}{3}x^3}$$を微分すると$${x^2}$$になる」
ということを既に知っている必要があります。)

関数$${F(x)}$$が割り出せたので、$${\int_a^bx^2dx}$$が求まります。
$${\int_{b}^{a}x^2dx}$$
$${=}$$(中略)
$${=F(b)-F(a) \\=\frac{1}{3}b^3 - \frac{1}{3}a^3}$$

この方法は部分分数分解を用いて数列の総和を求める方法から類推されます。

2.対称式・交代式の性質を使う

一般項$${x_i^2(x_i-x_{i-1})}$$を差の形$${F(x_{i}) - F(x_{i -1})}$$に変形できれば勝ちです。

そのままでは変形できないので、$${n \to \infty}$$を利用して
被積分関数$${x_i^2}$$を別の関数に近似することを考えます。

求める結果$${F(x_{i}) - F(x_{i -1})}$$は$${x_i,x_{i-1}}$$について交代式です。
一般項が持つ一方の因数$${x_i-x_{i-1}}$$も交代式です。

であるならば、もし$${x_i^2}$$が$${x_i,x_{i-1}}$$についての対称式であれば
$${x_i^2(x_i-x_{i-1})}$$は$${F(x_{i}) - F(x_{i -1})}$$に変形できるだろう
と見通しを立てられます。
($${x \cdot (-1) = -1}$$ならば$${x=+1}$$だろう、というイメージです。)

$${x_i^2}$$は二次の項ですので、二次の対称式との近似を考えます。
$${x_i,x_{i-1}}$$の二次の項は全部で$${x_i^2,x_ix_{i-1},x_{i-1}^2}$$です。
この3つの項を含む対称式、かつ$${x_i-x_{i-1}}$$を掛けると$${F(x_{i}) - F(x_{i -1})}$$に
なるものは$${x_i^2+x_ix_{i-1}+x_{i-1}^2}$$です。
$${(x_i^2+x_ix_{i-1}+x_{i-1}^2)(x_i - x_{i-1})\\ = (x_i^3 + x_i^2x_{i-1} + x_ix_{i-1}^2) - (x_i^2x_{i-1} + x_ix_{i-1}^2 + x_{i-1}^3)\\=x_i^3-x_{i-1}^3}$$

(二次の対称式は他にもありますが、なぜ$${x_i^2+x_ix_{i-1}+x_{i-1}^2}$$だと
うまくいくのかは今の自分ではわかりません。)

さて、$${x_i^2}$$を$${x_i^2+x_ix_{i-1}+x_{i-1}^2}$$と近似します。

まず、$${x_i^2}$$を3つに増やします。
$${x_i^2+x_i^2+x_i^2}$$
次に、帳尻合わせとして全体を3で割ります。
$${\frac{1}{3}(x_i^2+x_i^2+x_i^2)}$$
最後に、$${n \to \infty}$$より$${x_{i} \to x_{i-1}}$$であるため
$${(x_i^2+x_i^2+x_i^2) \to (x_i^2+x_ix_{i-1}+x_{i-1}^2)}$$であることを当てはめます。
$${\frac{1}{3}(x_i^2+x_ix_{i-1}+x_{i-1}^2)}$$

近似が完了したため、一般項$${x_i^2(x_i-x_{i-1})}$$に適用します。
$${x_i^2(x_i-x_{i-1}) \\= \frac{1}{3}(x_i^2+x_ix_{i-1}+x_{i-1}^2)(x_i-x_{i-1}) \\=\frac{1}{3}\{(x_i^3 + x_i^2x_{i-1} + x_ix_{i-1}^2) - (x_i^2x_{i-1} + x_ix_{i-1}^2 + x_{i-1}^3)\}\\= \frac{1}{3}(x_i^3 - x_{i-1}^3)}$$

差への分解に成功したので、積分の計算は以下の通りとなります。

$${\int_{b}^{a}x^2dx \\=\lim_{n \to \infty}\sum_{i=1}^{n}x^2_i(x_{i}-x_{i-1}) \\= \lim_{n \to \infty}\{x_n^2(x_n-x_{n-1}) + \dots + x_2^2(x_2-x_1) + x_1^2(x_1-x_0)\} \\=\lim_{n \to \infty}\{ \frac{1}{3}(x_n^3 - x_{n-1}^3) + \dots + \frac{1}{3}(x_2^3 - x_{1}^3) + \frac{1}{3}(x_1^3 - x_{0}^3)\} \\=\lim_{n \to \infty}\\\{ \frac{1}{3}x_n^3 + (- \frac{1}{3}x_{n-1}^3 + \frac{1}{3}x_{n-1}^3) + \dots +(- \frac{1}{3}x_2^3 +\frac{1}{3}x_2^3)+ (- \frac{1}{3}x_1^3 + \frac{1}{3}x_1^3) - \frac{1}{3}x_0^3\}\\=\lim_{n \to \infty}\{ \frac{1}{3}x_n^3 + 0+ \dots +0+ 0- \frac{1}{3}x_0^3\} \\=\lim_{n \to \infty}\{ \frac{1}{3}x_n^3 - \frac{1}{3}x_0^3\}\\=\lim_{n \to \infty}\{ \frac{1}{3}b^3 - \frac{1}{3}a^3\}\\=\frac{1}{3}b^3 - \frac{1}{3}a^3}$$

3.数列の冪乗和から類推する

アナログな実数の定義域で考えると難しそうなので
まずはデジタルな自然数の定義域で考えてみましょう。

$${\sum_{k=1}^nk^2}$$を計算します。

一般項$${k^2}$$に着目します。

隣接二項の差を取ると$${k^2}$$が現れるような数列の一般項を探します。

$${k^3}$$が該当します。
$${(k+1)^3-k^3=3k^2+3k+1}$$
($${k^3}$$の隣接二項の差を取ると$${k^2}$$が出るのは分かりますが、
$${k^2}$$から$${k^3}$$を導く方法は今の自分には分かりません)

$${k=1, 2, \dots , n}$$について辺々を足し合わせます。
$${\sum_{k=1}^n\{(k+1)^3-k^3\}=3\sum_{k=1}^nk^2+3\sum_{k=1}^nk+\sum_{k=1}^n1}$$

左辺の$${\sum_{k=1}^n\{(k+1)^3-k^3\}}$$は以下のように中間項が相殺されて初項$${1^3}$$と末項$${(n+1)^3}$$のみが残ります。
$${\sum_{k=1}^n\{(k+1)^3-k^3\} \\=\{(n+1)^3-n^3\} + \{n^3-(n-1)^3\} + \dots + (2^3 - 1^3)\\=\\(n+1)^3  + (-n^3 + n^3) + \{-(n-1)^3 +(n-1)^3\} + \dots + (-2^3+2^3) + 1^3 \\=(n+1)^3 + 0 + 0 + \dots + 0 + 1^3 \\= (n+1)^3 -1^3 }$$

右辺は$${\sum_{k=1}^nk=\frac{1}{2}n(n+1),\sum_{k=1}^n1=n}$$が適用されます。
($${\sum_{k=1}^nk=\frac{1}{2}n(n+1),\sum_{k=1}^n1=n}$$の根拠は省略します。)

$${\sum_{k=1}^nk^2}$$を左辺に、その他の項を右辺に寄せてまとめると
$${\sum_{k=1}^nk^2=\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)}$$となります。

同じようにして$${\int_a^bx^2dx}$$を求めます。

被積分関数$${x_i^2}$$に着目します。

隣接二項の差と$${x_i - x_{i-1}}$$の比に$${x_i^2}$$が現れるような関数を探します。

$${x_i^3}$$が該当します。
$${\frac{x_i^3 - x_{i-1}^3}{x_i - x_{i-1}}=x_i^2 + x_ix_{i-1} + x_{i-1}^2}$$
(数列のときと同じように、$${x_i^2}$$から$${x_i^3}$$を導く方法は
今の自分には分かりません)

両辺を$${x_i - x_{i-1}}$$倍します。
$${x_i^3 - x_{i-1}^3=(x_i^2 + x_ix_{i-1} + x_{i-1}^2)(x_i - x_{i-1})}$$

$${i=1, 2, \dots , n}$$について辺々を足し合わせます。
$${x_n^3-x_0^3=\sum_{i=1}^n(x_i^2 + x_ix_{i-1} + x_{i-1}^2)(x_i - x_{i-1})}$$
(左辺は数列のときと同じように中間項が相殺されて初項$${x_n^3}$$と末項$${x_0^3}$$のみが残ります。)

$${x_0=a, x_n=b}$$を当てはめます。
$${b^3-a^3=\sum_{i=1}^n(x_i^2 + x_ix_{i-1} + x_{i-1}^2)(x_i - x_{i-1})}$$

両辺に対して$${n \to \infty}$$を取ります。
$${\lim_{n \to \infty}\{b^3-a^3\}=\lim_{n \to \infty}\sum_{i=1}^n(x_i^2 + x_ix_{i-1} + x_{i-1}^2)(x_i - x_{i-1})}$$

左辺は変化なしです。
$${\lim_{n \to \infty}\{b^3-a^3\} = b^3 - a^3}$$
右辺は$${x_{i-1} \to x_i}$$となります。
$${\lim_{n \to \infty}\sum_{i=1}^n(x_i^2 + x_ix_{i-1} + x_{i-1}^2)(x_i - x_{i-1}) \\= \lim_{n \to \infty}\sum_{i=1}^n(x_i^2 + x_ix_{i} + x_{i}^2)(x_i - x_{i-1}) \\= \lim_{n \to \infty}\sum_{i=1}^n(x_i^2 + x_i^2 + x_{i}^2)(x_i - x_{i-1})\\=\lim_{n \to \infty}\sum_{i=1}^n3x_i^2(x_i - x_{i-1})}$$

従って、次式が成り立ちます。
$${b^3-a^3=\lim_{n \to \infty}\sum_{i=1}^n3x_i^2(x_i - x_{i-1})}$$

両辺を$${3}$$で割ると$${\lim_{n \to \infty}\sum_{i=1}^nx_i^2(x_i - x_{i-1})}$$が求まります。
$${\frac13b^3-\frac13a^3=\lim_{n \to \infty}\sum_{i=1}^nx_i^2(x_i - x_{i-1})}$$
$${\therefore \lim_{n \to \infty}\sum_{i=1}^nx_i^2(x_i - x_{i-1}) = \frac13b^3-\frac13a^3}$$

積分の定義から$${\int_a^bx^2dx=\lim_{n \to \infty}\sum_{i=1}^nx_i^2(x_i - x_{i-1})}$$なので
$${\int_a^bx^2dx= \frac13b^3-\frac13a^3}$$です。

4.階差数列と導関数の関係から類推

数列$${\{A_n\}}$$とその階差数列$${\{a_n\}}$$$${(a_n  = A_{n+1} - A_n)}$$の間には
次の関係が成り立つ。
$${A_n - A_1 = \sum_{k=1}^{n-1}a_k}$$

関数$${f(x)}$$と微小変化量$${\Delta x}$$に対する$${f(x)}$$の変化率$${g(x,\Delta x)}$$$${\left(g(x,\Delta x) = \frac{f(x + \Delta x) - f(x)}{\Delta x}\right)}$$の間には次の関係が成り立つ。
$${f(b) - f(a) = \sum_{i = 0}^{n-1}g(x_i,\Delta x_i)\Delta x_i}$$

$${n \to \infty}$$を取り、区間$${[x_{i},x_{i + 1}]}$$の幅を限りなく小さくしていくと
平均変化率$${g(x_i,x_{i-1})}$$→導関数$${f'(x_i)}$$
微小変化量$${\delta x_i}$$→極小変化量$${dx_i}$$
総和$${\sum_{i = 1}^n}$$→積分$${\int_a^b}$$
にそれぞれ収束する。

したがって
関数$${f(x)}$$とその導関数$${f'(x)}$$の間には次の関係が成り立つ。
$${f(b) - f(a) = \int_{a}^bf'(x)dx}$$

5.積分全体を微分して、微分の逆だよねパターン

積分全体を微分してみましょう。

以下の値を設定します。
$${\sum_{i = 1}^{n}f(t_i)(t_{i-1} - t_i)}$$
$${a = t_0 < t_1 < … < t_n = x}$$

$${t_{n-1}}$$から$${t_n}$$までの変化量を取ります。
$${\sum_{i = 1}^{n}f(t_i)(t_{i-1} - t_i) - \sum_{i = 1}^{n-1}f(t_i)(t_{i-1} - t_i) = f(t_n)(t_{n} - t_{n-1})}$$

両辺を$${t_{n} - t_{n-1}}$$で割ります。
$${\frac{\sum_{i = 1}^{n}f(t_i)(t_{i-1} - t_i) - \sum_{i = 1}^{n-1}f(t_i)(t_{i-1} - t_i)}{t_{n} - t_{n-1}} = f(t_n)}$$

$${n \to \infty}$$を取ると、積分・微分それぞれの定義が当てはまります。

積分
$${\frac{\int_{t_0}^{t_n}f(t)dt - \int_{t_{0}}^{t_{n-1}}f(t)dt}{t_{n} - t_{n-1}} = f(t_n)}$$

微分
$${\frac{\mathrm{d}\int_{t_o}^{t_n}f(t)dt}{\mathrm{d}t_{n}} = f(t_n)}$$

$${t_0 = a, t_n = x}$$を当てはめます。
$${\frac{\mathrm{d}\int_{a}^{x}f(t)dt}{\mathrm{d}x} = f(x)}$$

この式から、
$${\int_{a}^{x}f(t)dt}$$は$${x}$$で微分すると$${f(x)}$$になる関数である
と読み取れます。

したがって、$${f(x)}$$の原始関数を$${F(x)}$$とすると
$${\int_{a}^{x}f(t)dt}$$は$${F(x) +C}$$($${C}$$は積分定数)で表されます。
$${\int_{a}^{x}f(t)dt = F(x) +C}$$

$${\int_{a}^{x}f(t)dt = F(x) +C}$$は$${x}$$に関して常に成り立ちます。
常に成り立つためには、
$${x =  a}$$のとき$${\int_{a}^{a}f(t)dt = 0}$$より$${C= -F(a)}$$でなければなりません。

よって
$${\int_{a}^{x}f(t)dt = F(x) - F(a)}$$

特に、$${x = b}$$のとき
$${\int_{a}^{b}f(t)dt = F(b) - F(a)}$$

順像法・逆像法 (2023/07/29)

問題1
$${1 \leqq x \leqq 2}$$のとき、$${y = -2x +1}$$の値域を求めよ。

順像法
$${y = -2x +1}$$は傾きが負の直線を表すので
区間$${1 \leqq x \leqq 2}$$で狭義単調減少する。
$${x =1}$$のとき、$${y = -2 \cdot 1 + 1 = -1}$$
$${x =2}$$のとき、$${y = -2 \cdot 2 + 1 = -3}$$
したがって、値域は$${-3 \leqq y \leqq -1}$$

逆像法
$${y = k}$$に対応する$${x}$$が$${1 \leqq x \leqq 2}$$に属するかを判定する。
$${y = k}$$のとき$${x = \frac{1-k}{2}}$$
この$${x}$$が$${1 \leqq x \leqq 2}$$に属するとき
$${1 \leqq \frac{1-k}{2} \leqq 2}$$
$${2 \leqq 1-k \leqq 4}$$
$${1 \leqq -k \leqq 3}$$
$${-3 \leqq k \leqq -1}$$
$${-3 \leqq k \leqq -1}$$のとき$${x = \frac{1-k}{2}}$$は$${1 \leqq x \leqq 2}$$に属することがわかったので
求める値域は$${-3 \leqq y \leqq -1}$$


問題2
実数$${t}$$に対する2直線$${tx+y = 1, x-ty = -t+1}$$の交点の軌跡を求めよ。

逆像法で解く。

逆像法
①:$${tx+y = 1}$$
②:$${x-ty = 2t-1}$$
とする。
$${(x, y)}$$に定数組を代入したとき
①から得られる$${t}$$の値を$${t_1}$$
②から得られる$${t}$$の値を$${t_2}$$とする。
$${t_1 = t_2}$$であれば①と②を同時に満たす$${t}$$が存在し
$${t_1 \neq t_2}$$であれば①と②を同時に満たす$${t}$$が存在しない。

例えば$${(x, y) = (1, 1)}$$のとき
①:$${t_1 \cdot 1 + 1 = 1}$$より$${t_1 = 0}$$
②:$${1 - t_2\cdot 1 = 2t_2 - 1}$$より$${t_2 = \frac23}$$
$${t_1 \neq t_2}$$より①と②を同時に満たす$${t}$$は存在しない。
(どのような実数$${t}$$に対しても$${(x, y)}$$は$${(1, 1)}$$を取ることがない)
したがって、点$${(1, 1)}$$は2直線①, ②の交点の軌跡上にない。

例えば$${(x, y) = (1, 0)}$$のとき
①:$${t_1 \cdot 1 + 0 = 1}$$より$${t_1 = 1}$$
②:$${1 - t_2\cdot 0 = 2t_2 - 1}$$より$${t_2 = 1}$$
$${t_1 = t_2 (=1)}$$より①と②を同時に満たす$${t}$$は存在する。
($${t = 1}$$のとき、$${(x, y)}$$は$${(1, 0)}$$を取る)
したがって、点$${(1, 0)}$$は2直線①, ②の交点の軌跡上にある。

では、$${(x, y) = (X, Y)}$$$${(XY \neq 0)}$$のとき
①:$${t_1 \cdot X + Y = 1}$$より$${t_1 = \frac{1 -Y}{X}}$$
②:$${X - t_2\cdot Y = 2t_2 - 1}$$より$${t_2 = \frac{X + 1}{Y + 2}}$$
$${t_1 = t_2}$$のとき①と②を同時に満たす$${t}$$が存在する。
($${t_1 \neq t_2}$$のとき①と②を同時に満たす$${t}$$は存在しない。)

$${t_1 = t_2}$$であるような$${X, Y}$$の関係は$${\frac{1 -Y}{X} = \frac{X + 1}{Y + 2}}$$
整理すると$${(X+\frac12)^2+(Y+\frac12)^2=\left(\frac{\sqrt{10}}{2}\right)^2}$$

今の議論から
$${XY \neq 0}$$において
$${(X+\frac12)^2+(Y+\frac12)^2=\left(\frac{\sqrt{10}}{2}\right)^2}$$が$${X, Y}$$間で成り立つとき、
$${t_1 = t_2}$$であり、
①と②を同時に満たす$${t}$$が存在する
ことが分かった。

したがって、
$${(X+\frac12)^2+(Y+\frac12)^2=\left(\frac{\sqrt{10}}{2}\right)^2}$$を満たす点$${(X, Y)}$$$${(XY \neq 0)}$$は
2直線①, ②の交点の軌跡上にある。
$${(X+\frac12)^2+(Y+\frac12)^2=\left(\frac{\sqrt{10}}{2}\right)^2}$$は中心$${(-\frac12, -\frac12)}$$、半径$${\frac{\sqrt{10}}{2}}$$の円を表す。
ただし、$${XY \neq 0}$$より4点$${(0, 1), (0, -2), (1, 0), (-2, 0)}$$を除く。

一方で、$${(x, y) = (X, Y)}$$$${(XY = 0)}$$のとき
(1)
$${X = 0}$$のとき、①から$${Y = 1}$$、$${t_1 = }$$(任意の実数)
このとき、②より$${t_2 = \frac13}$$
$${t_1 = t_2 (=\frac13)}$$より①と②を同時に満たす$${t}$$は存在する。
($${t = \frac13}$$のとき、$${(x, y)}$$は$${(0, 1)}$$を取る)
したがって、点$${(0, 1)}$$は2直線①, ②の交点の軌跡上にある。
(2)
$${Y = 0}$$のとき、②から$${X = 2t_2 -1}$$
①に代入すると$${t_1(2t_2 - 1) = 1}$$
$${t_1 = t_2}$$であるような値は$${-\frac12, 1}$$
つまり、①と②を同時に満たす$${t}$$は存在する。
($${t = -\frac12, 1}$$のとき、$${(x, y)}$$は順に$${(-2, 0),(1, 0)}$$を取る)
したがって、2点$${(-2, 0),(1, 0)}$$は2直線①, ②の交点の軌跡上にある。

そして、3点$${(0, 1), (-2, 0),(1, 0)}$$は全て$${(X+\frac12)^2+(Y+\frac12)^2=\left(\frac{\sqrt{10}}{2}\right)^2}$$を満たす。

以上の全てをまとめると
実数$${t}$$に対する2直線$${tx+y = 1, x-ty = -t+1}$$の交点の軌跡は
点$${(0, -2)}$$を除く中心$${(-\frac12, -\frac12)}$$、半径$${\frac{\sqrt{10}}{2}}$$の円。

↓参考サイト


放物線 (2023/08/05)

※順像法・逆像法の考え方を用いています。

放物線は本当に2次関数が描く軌跡であるかを調べる。

鉛直下向きに重力加速度$${g}$$の重力が働く空間で、
速さ$${v_o}$$、仰角$${\theta}$$で水平右向きに物体を投射する。

水平右向きに$${x}$$軸、鉛直上向きに$${y}$$軸を取る。

投射から時間$${t}$$後の物体の加速度$${(a_x,a_y)}$$は
$${(a_x,a_y) = (0, -g)}$$

初速度$${(v_o\cos\theta, v_o\sin\theta)}$$に留意すると
投射から時間$${t}$$後の物体の速度$${(v_x,v_y)}$$は
$${(v_x,v_y)\\=(v_o\cos\theta, v_o\sin\theta - \int_0^tgdu)\\=(v_o\cos\theta, v_o\sin\theta - gt)}$$

投射から時間$${t}$$後の物体の位置$${(x,y)}$$は
$${(x,y)\\=(\int_0^t(v_o\cos\theta)du, \int_0^t(v_o\sin\theta - gu)du)\\=(v_ot\cos\theta, v_ot\sin\theta - \frac12gt^2)}$$

時間$${t}$$に応じて位置$${(x, y)}$$が定まる。
ということは、位置$${(x, y)}$$が描く軌跡上の点には
対応する時間$${t}$$が必ず存在する。

例えば点$${(0, 0)}$$は位置$${(x, y)}$$が描く軌跡上にあるだろうか?
$${x = v_ot\cos\theta}$$と$${x = 0}$$より
$${0 = v_ot\cos\theta}$$
$${\therefore t = 0}$$
$${y = v_ot\sin\theta - \frac12gt^2}$$と$${y = 0}$$より
$${0 = v_ot\sin\theta - \frac12gt^2}$$
$${t = 0}$$はこの式も満たす。

対応する時間$${t}$$が存在するので、
点$${(0, 0)}$$は位置$${(x, y)}$$が描く軌跡上にある。
(逆に、$${t = 0}$$のときの位置は$${(x, y) = (0, 0)}$$である。)

例えば点$${(1, 1)}$$は位置$${(x, y)}$$が描く軌跡上にあるだろうか?
$${x = v_ot\cos\theta}$$と$${x = 1}$$より
$${1 = v_ot\cos\theta}$$
$${\therefore t = \frac{1}{v_o\cos\theta}}$$
$${y = v_ot\sin\theta - \frac12gt^2}$$と$${y = 1}$$より
$${1 = v_ot\sin\theta - \frac12gt^2}$$
$${t = \frac{1}{v_o\cos\theta}}$$はこの式を満たさない。
(右辺 = $${\tan \theta-\frac{g}{2v_o^2\cos^2 \theta}}$$となり、左辺の$${1}$$と一致しない)

対応する時間$${t}$$が存在しないので、
点$${(1, 1)}$$は位置$${(x, y)}$$が描く軌跡上にない。
(実数$${t}$$に対して
$${(x,y)=(v_ot\cos\theta, v_ot\sin\theta - \frac12gt^2)}$$は
$${(1, 1)}$$を取ることがない。)

では、点$${(X, Y)}$$は位置$${(x, y)}$$が描く軌跡上にあるだろうか?
$${x = v_ot\cos\theta}$$と$${x = X}$$より
$${X = v_ot\cos\theta}$$
$${\therefore t = \frac{X}{v_o\cos\theta}}$$
$${y = v_ot\sin\theta - \frac12gt^2}$$と$${y = Y}$$より
$${Y = v_ot\sin\theta - \frac12gt^2}$$
$${t = \frac{X}{v_o\cos\theta}}$$がこの式も満たすとき
点$${(X, Y)}$$は位置$${(x, y)}$$が描く軌跡上にある。
つまり、
右辺$${v_o\frac{X}{v_o\cos \theta}\sin\theta - \frac12g\left(\frac{X}{v_o\cos \theta}\right)^2}$$と左辺$${Y}$$が一致するとき、
点$${(X, Y)}$$は位置$${(x, y)}$$が描く軌跡上にある。
$${Y = v_o\frac{X}{v_o\cos \theta}\sin\theta - \frac12g\left(\frac{X}{v_o\cos \theta}\right)^2}$$
整理して
$${Y = X\tan \theta-\frac{g}{2v_o^2\cos^2 \theta}X^2}$$

したがって、
$${Y = X\tan \theta-\frac{g}{2v_o^2\cos^2 \theta}X^2}$$が成り立つとき、
対応する時間$${t}$$が存在するので、
点$${(X, Y)}$$は位置$${(x, y)}$$が描く軌跡上にある。

ゆえに
位置$${(x,y)}$$が描く軌跡の方程式は
$${y = x\tan \theta-\frac{g}{v_o^2\cos^2 \theta}x^2}$$

この式は$${x}$$についての2次関数だから、放物線は2次関数が描く軌跡である。

参考資料


運動エネルギーと運動量 (2023/08/12)

下記サイトを参考にしています。

運動方程式

ニュートン力学には運動の第二法則があります。
$${F = ma}$$
$${F}$$は物体に加えた力、$${a}$$はそのときの加速度、$${m}$$はその比例定数(質量)です。
この式は力と加速度は比例することを示しています。
運動方程式とも言います。

運動の第二法則はニュートン力学の基本原理であり、証明すべき定理ではありません。
ニュートン力学体系における仮定です。
この基本原理から様々な結果を導けます。

仕事と力積

物理、特に力学では「力を加えて物体を動かす」ことに着目します。
そこで、「物体がどのように動いたか」「物体がどのくらい動いたか」を示す物理量があると便利ですよね。
物理では時間と距離(空間)の次元における物体の振る舞いを考えますので、距離に着目するか、時間に着目するかの2通りの方針が考えられます。

「物体をどのくらいの 距離 動かしたか」を測る量を仕事、
「物体をどのくらいの 時間 動かしたか」を測る量を力積、
とします。

仕事と力積はどのように定義すると便利でしょうか?

まず仕事から考えます。

仕事は物体に加えられる力$${F}$$と、動かした距離$${x}$$で構成されるので、ひとまずこの2つの物理量を使用しましょう。

加えられる力が大きければ仕事も大きい、動かした距離が長ければ仕事も大きいと考えるのが自然ですので、引き算や割り算よりも足し算や掛け算で$${F}$$と$${x}$$を組み合わせるのがよさそうです。

足し算と掛け算、どちらが適切でしょうか。

Aさんはある物体をF[N]の力を加えて3m動かしました。
Bさんは同じ物体をF[N]の力を加えて9m動かしました。
このとき、直感的に「Bさんの仕事はAさんの仕事の3倍である」と捉えたいです。

力$${F}$$を固定し比例定数としたとき、「Bさんの仕事はAさんの仕事の3倍である」という内容を数式で表すとしたら$${F + x}$$ではなく$${F \cdot x}$$が適切です。

したがって、仕事は以下の式で定義します。
$${Fx}$$

さらに、物体を動かしている間に加えている力$${F}$$が刻々と変化する場合があります。

この場合、動かしている間の一瞬一瞬に関して仕事$${Fx}$$を計算し、開始から終了までの合計を取るのがよさそうです。

刻々と変化する$${F}$$にとって、その一瞬一瞬の仕事は距離の極小変化量$${dx}$$に対して$${Fdx}$$となります。

一瞬一瞬の仕事$${Fdx}$$を物体を動かした始めから終わりまでの合計を取るので、全体では$${\int Fdx}$$となります。
(説明の簡略化のため、積分区間は明示しません)

結局、物体に力$${F}$$を加え続けて距離$${x}$$だけ動かしたときの仕事は次の式で定義すると最も都合が良いです。
$${\int Fdx}$$

仕事の定義は以上です。

力積の定義も、仕事の場合と同様に考えて定義します。

仕事における距離$${x}$$を時間$${t}$$に置き換えます。
$${\int Fdt}$$

エネルギー

物理(特に力学)では「物体を動かす」ことに特別関心を払います

注目の仕方は「時間」で捉えるか「空間(距離)」で捉えるの2通りの方針がありありますが、今回は「空間(距離)」で考えてみましょう。

「空間(距離)」で捉えた場合、対応する物理量は力と距離の積である仕事です。

この「物体に仕事を与えるなにか」全般には呼称が与えられています。

仕事をすることのできる能力をエネルギーと呼びます。

例えば高所にある物体は、落ちる勢いで別の物体を壊したり、動かしたりすることができます。

この場合、「高所にある物体はエネルギーを持つ」と表現します。
(特に位置エネルギー)

他にも、化学反応によるエネルギーから化学エネルギー、熱によるエネルギーから熱エネルギーなど、様々なエネルギーを考えられます。

どれでもいい、これから物を動かすことできる能力全般をエネルギーと呼びます。

運動エネルギー

ビリヤードの玉のように、速度を持っている物体もこれから別の物体を動かすことができるので、エネルギーを持っていると言えます。

速度を持つ物体に宿るエネルギーを運動エネルギーと呼びます。

運動エネルギーは、数量としてどのように定義されるでしょうか?

エネルギーと紐づくのは仕事ですので、まず仕事を考えてみましょう。

最初に、運動方程式を立てます。
$${F=ma}$$

次に、一瞬一瞬の仕事$${Fdx}$$の合計を取りましょう。
$${\int Fdx = \int ma dx}$$

左辺$${\int Fdx}$$は仕事の定義そのものです。
問題は右辺です。

まず、加速度$${a}$$をその定義に即して速度と時間にバラしましょう。
$${\int m\frac{dv}{dt} dx}$$

次に、時間と距離をまとめましょう。
$${\int mdv  \frac{dx}{dt}}$$

そうすると、速度が生まれます。
$${\int mdv  v}$$

並べ直します。
$${\int mvdv }$$

この式は$${\int xdx}$$の形なので、$${\int xdx =  \left[ \frac12x^2 \right]}$$が当てはまります。

$${\frac12mV^2 - \frac12mv_0^2}$$
(積分区間の始端における速度を$${v_o}$$、終端における速度を$${V}$$としています。)

したがって、最終的には
$${\int Fdx = \frac12mV^2 - \frac12mv_0^2}$$となります。

この式から、速度$${v}$$の物体が持つ運動エネルギーは$${\frac12mv^2}$$と定義するのが最も都合が良いことがわかります。

このように定義すれば、$${\int Fdx = \frac12mV^2 - \frac12mv_0^2}$$を読解するとき「物体に力$${F}$$を加えて速度$${v_o}$$から速度$${V}$$へ変化させたとき、始端の運動エネルギー$${\frac12mv_o^2}$$と終端の運動エネルギー$${\frac12mV^2}$$の差が仕事に相当する」とストレートに読めるからです。

より短くまとめると、
「運動エネルギーの変化量は物体がされた仕事に等しい」
となります。

位置エネルギー

動いている物体がエネルギーを持つと考えられるのと同じ用に、高いところにある物体もエネルギーを持つと考えられます。
(高所から落下してきた物体は物を破壊することができます。)

高いところにある物体に宿るエネルギーを位置エネルギーと呼びます。

力$${F}$$が重力$${-mg}$$のみの場合、高さ$${h}$$に関して位置$${h_0}$$から位置$${H}$$に変化したとき、その時の仕事は
$${\int Fdx = \int -mg dh = mgh_o - mgH}$$です。
(符号が反転することに注意です。)

運動エネルギーの場合と同じ理由で、もし位置エネルギーの数量を具体的に定義するならば、$${mgh}$$とするのが自然です。

力学的エネルギー保存則

働く力が重力のみであるならば、運動エネルギー変化量と位置エネルギー変化量は同一の仕事です。
$${mgh_o - mgH = \frac12mV^2 - \frac12mv_0^2}$$

並べ替えると
$${mgh_o + \frac12mv_o^2= mgH + \frac12mV^2}$$

運動エネルギーと位置エネルギーの和は力学的エネルギーと呼ばれます。
この式は重力(正確には保存力)による運動の前後で力学的エネルギーが保たれることを示します。
(位置エネルギーが運動エネルギーに変換されるとも読めます。)

運動量

仕事に関して考察を進めたので、次は力積に視点を移してみましょう。

仕事に紐づく運動エネルギーと同じ様に、力積に紐づくなにかを考えられないでしょうか?

運動方程式を時間$${t}$$で積分してみましょう。
$${\int Fdt = \int madt}$$

加速度を速度と時間にバラしましょう。
$${\int Fdt = \int m\frac {dv}{dt}dt}$$

$${dt}$$が約分されます。(厳密には置換積分)
$${\int Fdt = \int mdv}$$

右辺を$${\int dx = [x]}$$に当てはめて計算します。
$${\int Fdt = mV - mv_o}$$
(積分区間の始端における速度を$${v_o}$$、終端における速度を$${V}$$としています。)

したがって、最終的には
$${\int Fdt = mV - mv_o}$$となります。

この式から、速度$${v}$$の物体に対する数量$${mv}$$にも何か呼称を与えると後々便利そうです。

$${mv}$$は物体の運動量と呼ばれます。

$${\int Fdt = mV - mv_o}$$を読解すると「物体に力$${F}$$を加えて速度$${v_o}$$から速度$${V}$$に変化させたとき、始端の運動量$${mv_o}$$と終端の運動量$${mV}$$の差が力積に相当する」となります。

より短くまとめると、
「運動量の変化は物体がされた力積に等しい」
となります。

ちなみに、運動エネルギー$${\frac12mv^2}$$はスカラー(大きさ)ですが、運動量$${mv}$$はベクトル(大きさ+向き)です。

運動量保存則

複数の物体を一つのまとまりとしてみたときに、外力を受けない状況の力積を考えます。
(10円玉に500円玉をぶつけた場合に、10円玉と500円玉の衝突時に働く力のみを考え、外から力は働かないと仮定するような状況です。)

内力が発生した時点で、複数の物体において力積が働きます。
$${mV_{k} - mv_{k} = \int F_k dt}$$

各物体に働く力積について、辺々を加えます。
$${\sum mV_{k} - \sum mv_{k} = \sum \{\int F_k dt\}}$$

内力発生時は互いに力が働き続ける時間は等しいです。
加えて、作用反作用の法則から互いの力は同じ大きさで符号が逆です。

したがって、右辺$${\sum \{\int F_k dt\}}$$は$${0}$$になります。

よって、$${\sum mV_{k} = \sum mv_{k}}$$

この式が示すところは、着目している物体のまとまりにおいて外力が発生しない限り運動量は常に一定である(保存される)ことです。

まとめ

・物理(力学)では「物を動かす」ことに注目します
・注目の仕方は時間、空間(距離)の2方針があります。
・空間に対応する物理量を仕事、時間に対応する物理量を力積と呼びます。
・運動方程式から、仕事は運動エネルギーと関わり、力積は運動量と関わることが示されます。
・運動エネルギーの変化量が仕事となり、運動量の変化量が力積となります。
・ある特定の状況下では力学的エネルギー保存則、運動量保存則が成り立ちます。


ベクトルの内積と三角関数の加法定理 (2023/08/19)

2ベクトル$${\vec{a}=(a_1,a_2),\vec{b}=(b_1,b_2)}$$とその為す角$${\theta}$$には
次の関係が成り立つ。
$${|\vec{a}||\vec{b}|\cos \theta = a_1b_1+a_2b_2}$$

余弦定理を成分表示すると上式を得られる。
$${|\vec{b} - \vec{a}|^2 = |\vec{a}|^2 + |\vec{b}|^2 - 2|\vec{a}||\vec{b}|\cos \theta}$$
$${(b_2 - a_2)^2 + (b_1 - a_1)^2 = (a_1^2 + a_2^2)+ (b_1^2 + b_2^2) - 2|\vec{a}||\vec{b}|\cos \theta}$$
$${(b_2^2 -2b_2a_2 + a_2^2) + (b_1^2 -2b_1a_1 + a_1^2) = (a_1^2 + a_2^2)+ (b_1^2 + b_2^2) - 2|\vec{a}||\vec{b}|\cos \theta}$$
$${b_2^2 -2b_2a_2 + a_2^2 + b_1^2 -2b_1a_1 + a_1^2 = a_1^2 + a_2^2+ b_1^2 + b_2^2 - 2|\vec{a}||\vec{b}|\cos \theta}$$
$${-2b_2a_2 -2b_1a_1= - 2|\vec{a}||\vec{b}|\cos \theta}$$
$${b_2a_2 +b_1a_1= |\vec{a}||\vec{b}|\cos \theta}$$
$${ |\vec{a}||\vec{b}|\cos \theta = b_2a_2 +b_1a_1}$$
$${|\vec{a}||\vec{b}|\cos \theta = a_1b_1+a_2b_2}$$

単位円上に2点$${A(\cos\alpha, \sin\alpha), B(\cos\beta, \sin\beta)}$$を取る。

2ベクトル$${\vec{OA}=(\cos\alpha, \sin\alpha),\vec{OB}=(\cos\beta, \sin\beta)}$$に対して
$${|\vec{a}||\vec{b}|\cos \theta = a_1b_1+a_2b_2}$$を当てはめると、
三角関数の加法定理を得る。
$${|\vec{OA}||\vec{OB}|\cos (\alpha - \beta) = \cos\alpha \cos\beta +\sin \alpha \sin \beta}$$
$${1\cdot 1\cos (\alpha - \beta) = \cos\alpha \cos\beta +\sin \alpha \sin \beta}$$
$${\cos (\alpha - \beta) = \cos\alpha \cos\beta +\sin \alpha \sin \beta}$$


コーシー・シュワルツの不等式 (2023/08/26)

矢印の向きと大きさを2つの数で表すことができます。
東へ2歩、北へ3歩
右へ4マス、上へ1マス

この状況を抽象化します。
ベクトル(=矢印)$${\vec{a}}$$を2数の組$${(a_1, a_2)}$$で定めます。
$${\vec{a}=(a_1, a_2)}$$
また、ベクトルの大きさを$${|\vec{a}|}$$で表すことにします。

今回はこのベクトルを用いて、ある不等式を考えます。

最初に、$${|\vec{a}||\vec{b}|\cos \theta}$$という量を導入します。

東向きの風1km/hに対して東向きに$${b}$$km進むヨットがあるとします。
今、北東向きに$${a}$$km/hの風が吹いたとしたら、
このヨットは何km進むでしょうか?

北東向きの風$${a}$$km/hは東向きに$${a\cos 45^{\circ}}$$km/hの力で吹きます。
したがって、このヨットは$${ab\cos 45^{\circ}}$$km進みます。

同じように、2つのベクトル$${\vec{a},\vec{b}}$$に対して、間の角度を$${\theta}$$としたとき$${|\vec{a}||\vec{b}|\cos \theta}$$という量を考えることができます。

$${\cos \theta}$$は$${-1}$$以上$${1}$$以下の値しか取らないので
$${(|\vec{a}||\vec{b}|)^2 \geq (|\vec{a}||\vec{b}|\cos \theta)^2}$$です。

この式を$${(a_1, a_2), (b_1, b_2)}$$で表し直したものが、コーシー・シュワルツの不等式です。

まず、$${|\vec{a}||\vec{b}|\cos \theta}$$を$${(a_1, a_2), (b_1, b_2)}$$で表します。

2辺$${|\vec{a}|,|\vec{b}|}$$で狭角$${\theta}$$の三角形に対して、余弦定理を考えます。
$${|\vec{b} - \vec{a}|^2 = |\vec{a}|^2 + |\vec{b}|^2 - 2|\vec{a}||\vec{b}|\cos \theta}$$

$${|\vec{a}||\vec{b}|\cos \theta}$$は求める値なので、残しておきます。
それ以外を$${(a_1, a_2), (b_1, b_2)}$$に変換します。
$${\{ \sqrt{(b_1 - a_1)^2 + (b_2 - a_2)^2} \}^2 = (\sqrt{a_1^2 + a_2^2} )^2 + (\sqrt{b_1^2 + b_2^2} )^2 - 2|\vec{a}||\vec{b}|\cos \theta}$$

途中計算は省きます。結果は
$${|\vec{a}||\vec{b}|\cos \theta = a_1b_1+ a_2b_2}$$となります。

さて、左辺にある$${|\vec{a}||\vec{b}| }$$は$${\sqrt{a_1^2 + a_2^2} \sqrt{b_1^2 + b_2^2}}$$ですので、元々の不等式は
$${(\sqrt{a_1^2 + a_2^2} \sqrt{b_1^2 + b_2^2})^2 \geq (a_1b_1+ a_2b_2)^2}$$となります。

形を整えると
$${(a_1^2 + a_2^2)(b_1^2 + b_2^2) \geq (a_1b_1+ a_2b_2)^2}$$

この不等式をコーシー・シュワルツの不等式と呼びます。


数学の"天下り" (2023/09/02)

天下り
天から人間界へ降りること。
転じて、上役から下役へ、または官庁から民間への(強制的な)おしつけ。
特に、官庁からその関連会社に就職すること。

数学における"天下り"を紹介する。

$${x^2 -3x +2 = 0}$$を解きたいとき、
「閃いた、$${x = 1,2}$$だ!」
「代入してごらん、正しいでしょう?」
$${1^2 -3 \cdot 1 + 2 = 1 -3 +2 = 0}$$ $${(x = 1)}$$
$${2^2 -3 \cdot 2 + 2 = 4 -6 + 2 = 0}$$ $${(x = 2)}$$
「2次方程式だから解も2つだけ、完了!」

このように解くのが天下り式解法。
から答えがりてきた!」というイメージ。
問題を解く上で必要な数式や概念を、根拠を明示せずに脈絡なく導入することを天下りと呼ぶ。

応用例を示す。

問題
$${x}$$切片$${a}$$、$${y}$$切片$${b}$$である直線の方程式を求めよ。
(2点$${(a, 0) , (0, b)}$$を通る直線の方程式を求めよ。)

解法
方程式$${\frac xa + \frac yb = 1}$$は直線を表す。
この方程式は$${(x, y) = (a, 0), (0, b)}$$を満たす。
つまり、直線$${\frac xa + \frac yb = 1}$$は2点$${(a, 0) , (0, b)}$$を通る。
一方で、相違なる2点を通る直線はただ一つしかない。
したがって、2点$${(a, 0) , (0, b)}$$を通る直線は方程式$${\frac xa + \frac yb = 1}$$が表す直線のみである。
以上より、答えは$${\frac xa + \frac yb = 1}$$。

解説
方程式$${\frac xa + \frac yb = 1}$$を閃く箇所が天下り。
得た方程式の表す直線が実際に2点$${(a, 0) , (0, b)}$$を通るかは代入することで確かめられる。
他に条件を満たす直線はないので、方程式$${\frac xa + \frac yb = 1}$$こそ答えである。


錐体の体積1/3の謎 (2023/09/09)

錐体の体積は以下の公式で求められます。
$${V = \frac13Sh}$$
$${V}$$は体積、$${S}$$は底面積、$${h}$$は高さ(頂点から底面までの距離)

この公式に現れる$${\frac13}$$はどこから来るのかを話します。

結論からいうと、以下の公式が由来です。
$${a^3 - b^3 = (a - b)(a^2 + ab + b^2)}$$

因数$${a^2 + ab + b^2}$$を構成する項が3つあることが$${\frac13}$$に繋がります。

順を追って説明します。

頂点からの距離が$${t}$$の底面と平行な平面で錐体を切断した断面積を$${S(t)}$$とします。

最初は荒い精度で求めます。

例えば、$${0 = t_0 < t_1 < t_2 < t_3 < t_4 = h}$$であるとき
$${V \fallingdotseq S(t_1)(t_1 - t_0) + S(t_2)(t_2 - t_1) + S(t_3)(t_3 - t_2) + S(t_4)(t_4 - t_3) }$$
で大雑把な体積を求められます。

分割をより細かくしていけば、更に高い精度で体積を求められます。
$${0 = t_0 < t_1 < \dots < t_n = h}$$として、$${n \to \infty}$$とします。

すると、積分の定義から
$${V = \int_0^hS(t)dt}$$
となります。

次に、$${S(t)}$$を$${S}$$で表します。

図形$${S}$$と図形$${S(t)}$$は互いに相似の関係にあります。
そして、相似比は高さ比$${h : t}$$です。

相似な図形において、面積比は相似比の二乗に等しいので
$${S(t) = \frac{t^2}{h^2}S}$$

$${S(t)}$$を$${S}$$で表されたので、体積は
$${V = \int_0^h\frac{t^2}{h^2}Sdt}$$

最後に、積分値を計算します。

まず、積分変数$${t}$$以外を外に出します。
$${V = \frac{S}{h^2} \int_0^h t^2dt}$$

次に、$${\int_0^h t^2dt}$$を計算します。
まず、$${t}$$に一致しない任意の定数$${t_0}$$を取ります。
次に、2数$${t, t_0}$$において公式$${a^3 - b^3 = (a - b)(a^2 + ab + b^2)}$$
を当てはめます。
$${t^3 - t_o^3 = (t - t_o)(t^2 + tt_o + t_o^2)}$$

$${t_o \to t}$$とすると、
$${t - t_o \to dt}$$
$${ t^3 - t_o^3 \to dt^3}$$
$${ t^2 + tt_o + t_o^2\to 3t^2}$$
となるため、$${dt^3= 3t^2dt}$$を得ます。

このときの$${3t^2}$$にある$${3}$$が$${\frac13}$$の素です。

$${dt^3= 3t^2dt}$$を$${t}$$について$${0}$$から$${h}$$まで足し合わせると
$${h^3 -0^3= \int _0 ^h 3t^2dt}$$
$${h^3= \int _0 ^h 3t^2dt}$$

両辺を$${3}$$で割って$${\frac13h^3 = \int _0 ^h t^2dt}$$

この結果を$${V = \frac{S}{h^2} \int_0^h t^2dt}$$に戻すと
$${V = \frac{S}{h^2} \frac13h^3}$$

結局、
$${V = \frac13Sh}$$

参考文献


グラフの平行移動 (2023/09/16)

逆像法、既習推奨です。

直線$${y = 2x + 1}$$を$${x}$$軸方向に$${+1}$$、$${y}$$軸方向に$${+2}$$だけ平行移動したグラフKを考える。

ある点がグラフK上に存在するかを判定する。
注目している点が$${x}$$軸方向に$${-1}$$、$${y}$$軸方向に$${-2}$$だけ平行移動したときに直線$${y = 2x + 1}$$上に乗れば、その点はグラフK上に存在すると判定できる。

例えば、
点$${(2, 3)}$$は$${x}$$軸方向に$${-1}$$、$${y}$$軸方向に$${-2}$$だけ平行移動すると点$${(1, 1)}$$に移る。点$${(1, 1)}$$は直線$${y = 2x + 1}$$の方程式を満たさないので点$${(2, 3)}$$はグラフK上に存在しないと判定される。

点$${(2, 5)}$$は$${x}$$軸方向に$${-1}$$、$${y}$$軸方向に$${-2}$$だけ平行移動すると点$${(1, 3)}$$に移る。点$${(1, 3)}$$は直線$${y = 2x + 1}$$の方程式を満たすので点$${(2, 5)}$$はグラフK上に存在すると判定される。

一般化する。

点$${(X, Y)}$$を$${x}$$軸方向に$${-1}$$、$${y}$$軸方向に$${-2}$$だけ平行移動すると点$${(X-1, Y-2)}$$に移る。点$${(X-1, Y-2)}$$が直線$${y = 2x + 1}$$の方程式を満たすとき点$${(X, Y)}$$はグラフK上に存在すると判定される。

即ち、点$${(X, Y)}$$がグラフK上に存在するのは方程式$${Y -2  = 2(X-1) + 1}$$が成立しているときである。

この条件を満たす点$${(X, Y)}$$の集合こそグラフKである。
したがって、グラフKは直線$${y-2 = 2(x-1) + 1}$$である。

まとめると、直線$${y = 2x + 1}$$を$${x}$$軸方向に$${+1}$$、$${y}$$軸方向に$${+2}$$だけ平行移動したグラフは直線$${y-2 = 2(x-1) + 1}$$である。

表層を取り出す。

グラフ$${y = f(x)}$$が$${x}$$軸方向に$${+a}$$、$${y}$$軸方向に$${+b}$$だけ平行移動すると、グラフ$${y - b = f(x - a)}$$に移る。

参考資料


検算[方程式] (2023/09/23)

方程式の検算は、算出した答えが元の方程式を満たすかを確認する。

問題1
$${3x - 2 = 0}$$を満たす$${x}$$を求めよ。

解答
問題の方程式を取り出す。
$${3x - 2 = 0}$$
$${-2}$$を移項する。
$${3x = 2}$$
両辺を$${3}$$で割る。
$${x = \frac23}$$

検算
解$${x = \frac23}$$を元の方程式$${3x -2 = 0}$$に代入する。
$${3 \cdot \frac23 - 2  = 0}$$
$${2 - 2  = 0}$$
$${0  = 0}$$
等式が成立するので、$${x = \frac23}$$は求める解である。
また、与えられた方程式は一元一次方程式なので、解は1つである。
したがって、$${x = \frac23}$$以外に解はない。

問題2
$${x^2 -3x +2 = 0}$$を満たす$${x}$$を求めよ。

解答
問題の方程式を取り出す。
$${x^2 -3x +2 = 0}$$
左辺を因数分解する。
$${(x -1)(x - 2) = 0}$$
2つの因数$${x-1, x-2}$$のうち、どれか一つが$${0}$$であれば等式は成り立つ。
そのような$${x}$$は$${x = 1, 2}$$。

検算
解$${x = 1, 2}$$を元の方程式$${x^2 -3x +2 = 0}$$に代入する。
$${(x = 1)}$$
$${1^2 -3\cdot 1 +2 = 0}$$
$${1 -3 +2 = 0}$$
$${0 = 0}$$
$${x = 1}$$は等式を成り立たせる
$${(x = 2)}$$
$${2^2 -3\cdot 2 +2 = 0}$$
$${4 -6 +2 = 0}$$
$${0 = 0}$$
$${x = 2}$$は等式を成り立たせる
等式が成立するので、$${x = 1,2}$$は求める解である。
また、与えられた方程式は一元二次方程式なので、解は2つである。
したがって、$${x = 1,2}$$以外に解はない。

検算(2)
別解で方程式を解いてみる。
2次方程式の解の公式を用いる。
$${ax^2 + bx + c = 0 \quad (a \neq 0)}$$のとき、$${x = \frac{-b\pm \sqrt{b^2 -4ac}}{2a}}$$である。
$${a  = 1, b = -3 , c = 2}$$を当てはめる。
$${x = \frac{-(-3)\pm \sqrt{(-3)^2 -4\cdot 1 \cdot 2}}{2\cdot 1}}$$
$${x = \frac{3\pm \sqrt{9 - 8}}{2}}$$
$${x = \frac{3\pm \sqrt{1}}{2}}$$
$${x = \frac{3\pm 1}{2}}$$
$${x = \frac{2}{2}, \frac{4}{2}}$$
$${x = 1, 2}$$
解答で求めた$${x = 1,2}$$と一致したので、求める解は$${x = 1, 2}$$である。

検算(3)
答えが整数解の組となったので、判別式(解の公式の√の中身$${b^2 - 4ac}$$)は平方数となる。
検算(2)を簡略化して、判別式を利用しても良い。
2次方程式$${x^2 -3x +2 = 0}$$の判別式を書く。
$${(-3)^2 -4 \cdot 1 \cdot 2}$$
$${=9 - 8}$$
$${=1}$$
判別式の値が平方数$${1(=1^2)}$$であるため、整数組である解と矛盾していない。
したがって、求めた答え$${x = 1,2}$$は正しい可能性が高い。

問題3
$${x^3 -2x^2 -x+2 = 0}$$を満たす$${x}$$を求めよ。

解法
問題の方程式を取り出す。
$${x^3 -2x^2 -x+2 = 0}$$
等式を満たす$${x}$$を一つ見つける。
試しに$${x = 1}$$を代入してみる。
$${1^3 -2\cdot 1^2 -1+2 = 0}$$
$${1 -2 -1+2 = 0}$$
$${0 = 0}$$
この結果から、$${x = 1}$$は等式を満たすことが分かった。
したがって、$${x^3 -2x^2 -x+2}$$は$${x - 1}$$を因数に持つ。
$${x^3 -2x^2 -x+2}$$を$${x - 1}$$で割る。
$${(x -1)(x^2 -x -2)= 0}$$
$${x^2 -x -2}$$を因数分解する。
$${(x -1)(x+ 1)(x -2)= 0}$$
並び替える。
$${(x+ 1)(x -1)(x -2)= 0}$$
3つの因数$${x+1, x-1, x-2}$$のうち、どれか一つが$${0}$$であれば等式は成り立つ。
そのような$${x}$$は$${x = -1, 1, 2}$$。

検算
求めた$${x = -1, 1, 2}$$をもとの方程式に戻してみる。
$${(x =-1)}$$
$${(-1)^3 -2(-1)^2 -(-1)+2 = 0}$$
$${-1 -2 +1+2 = 0}$$
$${0 = 0}$$
$${x = -1}$$は等式を成り立たせる
$${(x =1)}$$
$${1^3 -2\cdot 1^2 -1+2 = 0}$$
$${1 -2 -1+2 = 0}$$
$${0 = 0}$$
$${x = 1}$$は等式を成り立たせる
$${(x =2)}$$
$${2^3 -2\cdot 2^2 -2+2 = 0}$$
$${8 -8 -2+2 = 0}$$
$${0 = 0}$$
$${x = 2}$$は等式を成り立たせる
等式が成立するので、$${x = -1, 1,2}$$は求める解である。
また、与えられた方程式は一元三次方程式なので、解は3つである。
したがって、$${x = -1, 1,2}$$以外に解はない。

検算(2)
方程式$${x^3 -2x^2 -x+2 = 0}$$の定数項$${+2}$$の約数が解の候補となる
(※後述)
求めた答え$${x = -1, 1,2}$$は定数項$${+2}$$の約数なので、正しい可能性が高い。
(※)
以下、定数項の約数が解の候補である理由を述べる。
$${x^3 -2x^2 -x+2 }$$が仮に$${(x - \alpha ) ( x- \beta ) (x - \gamma )}$$として因数分解できたとする。
展開すると$${x^3 - (\alpha + \beta +  \gamma)x^2 + (\alpha \beta+ \beta  \gamma +  \gamma \alpha)x - \alpha \beta  \gamma}$$
$${x^3 -2x^2 -x+2 }$$と定数項を比較すると$${+2 = - \alpha \beta  \gamma}$$
したがって、もし整数組の解を得たならば、それらはもとの方程式における定数項の約数となる。
最高次項の係数が$${1}$$以外の場合は下記サイト参照。


九去法の拡張 (2023/09/30)

10進法表記の整数を9で割った余りは簡単に算出できる。
4385を9で割った余りは$${4 + 3 + 8 + 5 = 20 = 2 \cdot 9 + 2}$$より2である。

原理を説明する。
10進法で$${abcd}$$となる整数は$${a \cdot  10^3 + b \cdot 10^2 + c\cdot 10 + d}$$である。
そして、
$${a \cdot  10^3 + b \cdot 10^2 + c\cdot 10 + d}$$
$${= (a \cdot  999 + a) + (b \cdot 99 + b) + (c\cdot 9 + c) + d}$$
$${= a \cdot  999 + b \cdot 99 + c\cdot 9  + a + b + c + d}$$
$${= (a \cdot  111 + b \cdot 11 + c\cdot 1) \cdot 9  + (a + b + c + d)}$$
上式は10進法$${abcd}$$を$${9}$$で割ると余りが$${a + b + c + d}$$であることを示している。
したがって、冒頭の例に戻ると4385を9で割った余りは
$${4 + 3 + 8 + 5 = 20 = 2 \cdot 9 + 2}$$より2である。

この性質は検算に利用できる。
例えば$${23 + 12 = 35}$$という計算をして答えが正しいかを確認したいとき、もし計算が正しいならば計算前後の数を$${9}$$で割った余りも等しいはずである。
左辺$${23 + 12}$$を$${9}$$で割った余りは$${(2 + 3) + (1 + 2) = 5 + 3 = 8}$$
右辺$${35}$$を$${9}$$で割った余りは$${3 + 5 = 8}$$
左辺と右辺が余り$${8}$$で一致したので、$${23 + 12 = 35}$$という計算は正しい可能性が高い

$${9}$$で割った余りを利用したこのような検算方法を九去法と呼ぶ。
九去法の手続きを間違いなく遂行したと仮定した場合、もし左辺と右辺で余りが一致しなかったらチェック対象の計算式は必ず間違っているが、左辺と右辺で余りが一致した場合、チェック対象の計算式は必ず正しいわけではない。
もし$${23 + 12 = 44}$$という計算ミスをしたら、両辺の割る数$${9}$$による余りがともに$${8}$$であるにも関わらず、もとの式は間違っている。

今は足し算による九去法の例を示したが、引き算・掛け算にも応用できる。
(割り算は確認中)
$${23-11=12}$$(両辺余り$${3}$$)
$${11\times 13 = 143}$$(両辺余り$${8}$$)

以上が九去法の一般的な説明だが、ここから更に簡略化する。

整数$${z}$$を自然数$${d}$$で割ったとき、$${z = dq + r\ (0\leq r \leq d-1)}$$を満たす整数$${q}$$が商、自然数$${r}$$が余りである。

このように負の整数を自然数で割った場合も含まれるように余りの定義を拡張すると
$${-1, -2, -3, -4, -5, -6, -7, -8 ,-9}$$のそれぞれを$${9}$$で割った余りは
$${8, 7, 6, 5, 4, 3, 2, 1, 0}$$である。

つまり、九去法において次のような変換が可能である。
$${-9, -8, -7, -6, -5, -4, -3, -2, -1, 0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9}$$
→$${0, 1, 2, 3, 4, -4, -3, -2, -1, 0, 1, 2, 3, 4, -4, -3, -2, -1, 0}$$
このように、絶対値を$${4}$$以下に抑えて検算できる。

例えば、$${8 + 67 + 35 = 110}$$を検算するとき、
通常の九去法では
左辺
$${8 + (6 + 7) + (3 + 5)}$$
$${8 + 13 + 8}$$
$${8 + (1 + 3) + 8}$$
$${8 + 4 + 8}$$
$${20}$$
$${2 + 0}$$
$${2}$$
右辺
$${110}$$
$${1 + 1 + 0}$$
$${2}$$
このように検算できるが、負数を含めることで途中に登場する絶対値を低くすると
左辺
$${(-1) + \{(-3) + (-2)\}+ \{3 + (-4)\}}$$
$${(-1) + (-5)+ (-1)}$$
$${(-1) + 4+ (-1)}$$
$${2}$$
右辺
$${110}$$
$${1 + 1 + 0}$$
$${2}$$
このように、検算に掛かる負担が軽くなる。


ネイピア数 (2023/10/07~2023/11/04)

$${a}$$を$${a > 0}$$かつ$${a \neq 1}$$とします。

$${(a^x)' = a^x}$$である$${a}$$を$${e}$$とします。(定義)
$${e}$$をネイピア数と呼びます。

$${e}$$の定義より
$${(e^x)' = e^x}$$
微分の定義より
$${\lim_{h \to 0}\frac{e^{x + h} - e^x}{h} = e^x}$$
分子の$${e^x}$$をくくって外に出すと
$${e^x\lim_{h \to 0}\frac{e^{h} - 1}{h} = e^x}$$
両辺を$${e^x}$$で割ると
$${\lim_{h \to 0}\frac{e^{h} - 1}{h} = 1}$$(定理1)

以下、簡略化のため$${\lim_{h \to 0}}$$を省略する。
定理1から
$${\frac{e^{h} - 1}{h} = 1}$$
両辺に$${h}$$を掛けると
$${e^{h} - 1= h}$$
左辺の$${-1}$$を右辺に移項すると
$${e^{h}= 1+ h}$$
両辺に$${h}$$乗根を取ると
$${e= (1 + h)^{\frac1h}}$$
改めて、$${\lim_{h \to 0}}$$を明示すると
$${e= \lim_{h \to 0}(1 + h)^{\frac1h}}$$ (定理2)

まとめると、ネイピア数$${e}$$は
定義:$${(a^x)' = a^x}$$である$${a}$$
定理1:$${\lim_{h \to 0}\frac{a^{h} - 1}{h} = 1}$$を満たす$${a}$$
定理2:$${\lim_{h \to 0}(1 + h)^{\frac1h}}$$の極限値

この3つは等価で、定義と定理を入れ替えても成り立ちます。

"ネイピア数(1)"でネイピア数$${e}$$を定義しました。
定義:$${(a^x)' = a^x}$$である$${a}$$

"ネイピア数(1)"で2つの定理を導きました。
定理1:$${\lim_{h \to 0}\frac{a^{h} - 1}{h} = 1}$$を満たす$${a}$$
定理2:$${\lim_{h \to 0}(1 + h)^{\frac1h}}$$の極限値

定理2の$${\frac1h}$$を$${x}$$に置き換えます。
$${\lim_{x \to \infty}(1 + \frac{1}{x})^{x}}$$ (定理2')

定理2'から、収束先$${e}$$が本当に存在することを証明します。

定理2'の定義域を自然数$${n}$$に限った数列$${A_n = (1 + \frac1n)^{n}}$$を用意します。

以下3ステップを踏むことで数列$${\{A_n\}}$$が収束することを示します。
ステップ1:$${A_n}$$は常に増加する
ステップ2:$${A_n}$$は上限値を持つ
ステップ3:上限があり、かつ常に増加する数列は収束する

ステップ1
全ての$${n}$$に対して、$${A_n \leq A_{n+1} }$$であることを示せば
$${A_n}$$​ は常に増加すると言える。
即ち、$${(1 + \frac1n)^n \leq (1 + \frac{1}{n  + 1})^{n + 1}}$$を示す。
$${n}$$個の$${\frac{n + 1}{n}}$$と$${1}$$個の$${1}$$に相加相乗平均の不等式を用いる。
$${\sqrt[n+1]{(\frac{n + 1}{n})^n \cdot 1} \leq \frac{\frac{n + 1}{n} \cdot n + 1}{n + 1}}$$
$${\sqrt[n+1]{(\frac{n + 1}{n})^n} \leq \frac{(n + 1) + 1}{n + 1}}$$
$${\sqrt[n+1]{(1 + \frac{1}{n})^n} \leq 1 + \frac{1}{n + 1}}$$
$${(1 + \frac1n)^n \leq (1 + \frac{1}{n  + 1})^{n + 1}}$$
目的の式が示された。

ステップ2
上限が存在することを示す。
① $${A_n}$$
② $${=(1 + \frac1n)^n}$$
③ $${= {}_n C_0 1^{n-0}(\frac1n)^0 + {}_n C_1 1^{n-1}(\frac1n)^1 + {}_n C_2 1^{n-2}(\frac1n)^2 + \dots + {}_n C_n 1^{n-n}(\frac1n)^n}$$
④ $${= {}_n C_0 (\frac1n)^0 + {}_n C_1 (\frac1n)^1 + {}_n C_2 (\frac1n)^2 + \dots + {}_n C_n (\frac1n)^n}$$
⑤ $${= \frac{1}{0!} (\frac1n)^0 + \frac{n}{1!} (\frac1n)^1 + \frac{n(n-1)}{2!} (\frac1n)^2 + \dots + \frac{n(n-1)(n-2)\dots 2 \cdot 1}{n!} (\frac1n)^n}$$
⑥ $${= \frac{1}{0!} \cdot 1+ \frac{1}{1!} \cdot \frac{n}{n} + \frac{1}{2!}\cdot  \frac{n}{n} \frac{n-1}{n} + \dots + \frac{1}{n!}\cdot \frac{n}{n} \frac{n-1}{n} \frac{n-2}{n} \dots \frac{1}{n}}$$
⑦ $${< \frac{1}{0!}+ \frac{1}{1!} + \frac{1}{2!}+ \dots + \frac{1}{n!}}$$
⑧ $${= 1+ 1 + \frac{1}{2!}+ \dots + \frac{1}{n!}}$$
⑨ $${< 1+ 1 + \frac{1}{2^1}+ \dots + \frac{1}{2^{n-1}}}$$
⑩ $${= 1+ 1 + \frac{\frac12\{1-(\frac12)^{n}\}}{1- \frac12}}$$
⑪ $${< 1+ 1 + \frac{\frac12\{1-0\}}{1- \frac12}}$$
⑫ $${< 1+ 1 + 1}$$
⑬ $${= 3}$$

したがって、$${A_n < 3}$$、即ち上限がある。

式展開の根拠を述べる。
①→②
数列$${\{A_n\}}$$の定義
②→③
二項定理
③→④
$${1^k}$$を計算
④→⑤
$${{}_n C_r}$$の定義
⑤→⑥
分子$${n(n-1)(n-2)\dots (n-r+1)}$$と$${(\frac1n)^r}$$をまとめる
⑥→⑦
係数$${\frac{n}{n} \frac{n-1}{n} \frac{n-2}{n} \dots \frac{n-r+1}{n}}$$の各因数$${\frac{n-r+1}{n}}$$は分母が分子より大きいので1より小さい。したがって、係数全体も1より小さい。ゆえに、係数$${\frac{n}{n} \frac{n-1}{n} \frac{n-2}{n} \dots \frac{n-r+1}{n}}$$を取り払うと元の数より大きくなる。
$${ \frac{1}{n!} \cdot\frac{n}{n} \frac{n-1}{n} \frac{n-2}{n} \dots \frac{n-r+1}{n}  < \frac{1}{n!}}$$
⑦→⑧
$${\frac{1}{0!} }$$と$${\frac{1}{1!} }$$を計算
⑧→⑨
分母$${r! =  r(r-1)(r-2)\dots 3 \cdot 2}$$[$${\cdot 1}$$は省略]の全因数を$${2}$$に置き換えると、分母が小さくなるので値全体は元の数より大きくなる。
$${\frac{1}{r(r-1)(r-2)\dots3\cdot 2} < \frac{1}{2\cdot 2\cdot 2\dots2\cdot 2}}$$
即ち$${\frac{1}{r!} < \frac{1}{2^{r - 1}}}$$
⑨→⑩
初項$${\frac12}$$、公比$${\frac12}$$、項数$${n-1}$$の等比数列の総和公式
⑩→⑪
初項、公比がともに正ならば、
等比数列の総和は必ず$${n \to \infty}$$における極限値よりも小さい
⑪→⑫
$${\frac{\frac12\{1-0\}}{1- \frac12}  = 1}$$
⑫→⑬
$${1+ 1 + 1}$$を計算

ステップ3
「上限があって、かつ増え続けるのなら収束する」という内容だが、
今回は当たり前に成り立つとして厳密な証明はスキップする。

ステップ1〜3より、数列$${\{A_n\}}$$は収束する。
つまり、$${e}$$は一つの値に定まる。(そして、$${3}$$未満である。)

$${a_k}$$を定数とする。
仮に、$${e^x=a_0x^0 + a_1x^1 + a_2x^2 + a_3x^3 + \dots}$$で近似できたと仮定する。
この式全体を$${f(x)}$$とし、$${n}$$回微分を$${f^{(n)}(x)}$$とする。

$${f^{(0)}(x)}$$:$${e^x=a_0 + a_1x^1 + a_2x^2 + a_3x^3 + \dots}$$
$${f^{(0)}(0)}$$:$${1=a_0 + 0+ 0 + 0 + \dots}$$
$${\therefore a_0 = 1}$$

$${f^{(1)}(x)}$$:$${e^x= a_1+ 2a_2x^1 + 3a_3x^2 + \dots}$$
$${f^{(1)}(0)}$$:$${1=a_1 + 0+ 0 + \dots}$$
$${\therefore a_1 = 1}$$

$${f^{(2)}(x)}$$:$${e^x= 2a_2+ 3\cdot  2a_3x^1 + \dots}$$
$${f^{(2)}(0)}$$:$${1=2a_2 + 0 + \dots}$$
$${\therefore a_2 = \frac12}$$

$${f^{(3)}(x)}$$:$${e^x=3\cdot  2a_3 + \dots}$$
$${f^{(3)}(0)}$$:$${1=6a_3 + 0 + \dots}$$
$${\therefore a_3 = \frac16}$$

繰り返すと$${a_k=\frac{1}{k!}}$$を得る。
したがって、
$${e^x = \frac{x^0}{0!} + \frac{x^1}{1!} + \frac{x^2}{2!} + \frac{x^3}{3!} + \dots}$$
である。(定理3)

($${\log _e a = \log a}$$で表記しています。)

定理2'の$${x}$$に具体的な値を入れてみる。
$${x = 1}$$:$${e \fallingdotseq (1 + \frac11)^1 = 2}$$
$${x = 2}$$:$${e \fallingdotseq (1 + \frac12)^2 = (\frac32)^2 = 2.25}$$
$${x = 3}$$:$${e \fallingdotseq (1 + \frac13)^3 = (\frac43)^3 = 2.370…}$$
続けていくと
$${x = \infty}$$:$${e=2.71828182845...}$$

一般の$${a}$$に対して$${(a^x)'}$$を考える。
$${(a^x)' \\= \lim_{h \to 0} \frac{a^{x+h} - a^x}{h}  \\= \lim_{h \to 0} \frac{a^x(a^h - 1)}{h} \\= a^x \lim_{h \to 0} \frac{a^h - 1}{h}}$$
底を$${a}$$から$${e}$$に変換する。
$${a^x \lim_{h \to 0} \frac{e^{h\log a} - 1}{h}}$$
分子分母に$${\log a}$$を掛ける。
$${a^x \lim_{h \to 0} \frac{(e^{h\log a} - 1)\log a}{h \log a}}$$
$${x = h\log a}$$に置き換える。
$${a^x \lim_{x \to 0} \frac{(e^{x} - 1)\log a}{x}}$$
$${\log a}$$を前に出す。
$${a^x\log a \lim_{x \to 0} \frac{e^{x} - 1}{x}}$$
定理3を代入する。
$${a^x\log a \lim_{x \to 0} \frac{(\frac{x^0}{0!} + \frac{x^1}{1!} + \frac{x^2}{2!} + \frac{x^3}{3!} + \dots) - 1}{x}}$$
$${\frac{x^0}{0!}  -1  = 0}$$を計算する。
$${a^x\log a \lim_{x \to 0} \frac{\frac{x^1}{1!} + \frac{x^2}{2!} + \frac{x^3}{3!} + \dots}{x}}$$
分子を分母$${x}$$で割る。
$${a^x\log a \lim_{x \to 0}( \frac{1}{1!} + \frac{x^1}{2!} + \frac{x^2}{3!} + \dots)}$$
$${x \to 0}$$の極限を取る。
$${a^x\log a \cdot  (\frac{1}{1!} + 0 + 0 + \dots)}$$
$${a^x\log a \cdot \frac{1}{1!}}$$
$${a^x\log a \cdot 1}$$
$${a^x\log a}$$
まとめると、$${(a^x)' = a^x \log a}$$
(理系とーくラボ(https://community.camp-fire.jp/projects/view/269163) の
メンバーからご紹介頂きました。)

定理2'で両辺の対数を取ると
$${\lim_{x \to  \infty} \log (1 + x)^{\frac1x} = \log e}$$
$${\lim_{x \to  \infty} \frac1x \log (1 + x)= 1}$$
$${\lim_{x \to  \infty} \frac{\log (1 + x)}{x}= 1}$$

定理3を途中で打ち切ると、次の不等式を得る。($${x>0}$$とする)
$${e^{x} \geq 1}$$
$${e^{x} \geq 1 + x}$$
$${e^{x} \geq 1 + x + \frac{x^2}{2!} }$$
$${e^{x} \geq 1 + x + \frac{x^2}{2!} + \frac{x^3}{3!}}$$
以下省略。

複利計算に定理2'が現れます。

もし、1年間の合計金利が 100% になる銀行があったとしましょう。
$${A}$$円預けると1年後に2倍になっています。
$${A + A \cdot 1.00 =  (1 + 1.00)^1A = 2A }$$
この銀行が半年ごとに 50% ずつの金利を付けると、預けた$${A}$$円は1年後に2.25倍になっています。
$${A + A \cdot 0.50 + (A + A \cdot 0.50) \cdot 0.50 =  (1 + 0.50)^2A = 2.25A }$$
続いて、3ヶ月ごとに 25% ずつならば、一年後に約2.44倍になります。
$${(1 + 0.25)^4A = 2.44140625A }$$
では、$${\frac1x}$$年ごとに $${\frac{100}{x}}$$% ずつならば、一年後に$${(1 + \frac{1}{x})^x}$$倍になります。
$${x \to \infty}$$とすると、定理2'より一年後に$${e}$$倍となります。

$${\frac1n}$$の確率であたるくじ引きを$${n}$$回引いたときに一度も当たらない確率にもネイピア数$${e}$$が現れます。
このくじ引きの試行回数$${n}$$における、全てハズレの確率は
$${(1-\frac1n)^n}$$
$${(1-\frac1n)^{-(-n)}}$$
$${=(\frac{n-1}{n})^{-(-n)}}$$
$${=(\frac{n}{n-1})^{-n}}$$
$${=(1+\frac{1}{n-1})^{-n}}$$
$${=\left( \frac{1}{1+\frac{1}{n-1}} \right) ^{n}}$$
$${=\frac{1}{(1+\frac{1}{n-1})^{n}}}$$
$${=\frac{1}{(1+\frac{1}{n-1})^{n-1}(1 + \frac{1}{n-1})}}$$
$${n\to \infty}$$のとき
$${\to \frac{1}{e \cdot (1 + 0)}}$$
$${= \frac{1}{e}}$$


数列 (2023/10/20~2023/12/09)

数が列に並べたものを数列と呼ぶ。
$${1, 3, 5, 7, …}$$
$${\frac12, \frac13, \frac14, \frac15, …}$$

数列に名前を付けるときは$${\{a_n\}, \{b_n\}, \dots}$$と書く。
数列$${\{a_n\}}$$の左から$${k}$$番目の数を$${a_k}$$と表す。
例えば、奇数を並べた数列$${1, 3, 5, 7, …}$$を$${\{a_n\}}$$としたとき、
$${a_3 = 5}$$である。
$${a_k}$$を"第$${k}$$項"とも言う。

数列の特徴は順序を持つことである。
「左から4番目の数は?」という質問が可能であり、そして答えがただ一つに特定される。

難しい捉え方をすると、数列は定義域が自然数の関数である。
自然数$${k}$$を入力すると数$${a_k}$$が出力されるシステムを可視化したものが
$${1, 3, 5, 7, …}$$という表現である。
「数列は関数の一部である」という解釈を持っていると見通しが良くなる。

例えば、$${3, 6, 9, 12, …}$$は$${3}$$ずつ増えている。
このような数列を等差数列と言う。
正確な言い回しをすると、数列$${\{a_n\}}$$においてどのような$${k}$$であっても$${a_{k+1} - a_{k} = d}$$($${d}$$は定数)であるとき、数列$${{a_n}}$$は等差数列である。
隣り合う数のが常にしいから等差数列。

また、$${3, 9, 27, 81, \dots}$$は$${3}$$倍ずつ増えている。
このような数列を等比数列という。
正確な言い回しをすると、数列$${\{a_n\}}$$においてどのような$${k}$$であっても$${\frac{a_{k+1}}{a_{k}} = r}$$($${r}$$は定数)であるとき、数列$${{a_n}}$$は等比数列である。
隣り合う数のが常にしいから等比数列。

等差数列と等比数列が最も基本的な数列である。
より複雑な規則性を持つ数列も、等差数列と等比数列に帰着させて調べる。

数列において、「前の項」から「新しい項」を作る式を漸化式と言う。
例えば、奇数の数列$${\{a_n\}}$$:$${1, 3, 5, 7, \dots}$$の$${a_{n+1}}$$は$${a_n}$$に$${+2}$$を加えて作られる。
数式で表すと$${a_{n+1} = a_n + 2}$$
この"$${a_{n+1} = a_n + 2}$$"を奇数の数列の漸化式と呼ぶ。
ただし、漸化式$${a_{n+1} = a_n + 2}$$だけでは他の数列(例えば、偶数の数列)も作れてしまうので、条件に初項$${a_1 = 1}$$を添える。

与えられた漸化式から一般項$${a_n}$$を求める。
まずは等差数列の場合を考える。
初項$${a_1 = 2}$$、漸化式$${a_{n+1} = a_n +4}$$が与える数列の一般項を求める。
漸化式を変形すると$${a_{n+1} - a_n= 4}$$
(補足:等差数列の定義から、この式は公差4の等差数列を表している。)
$${n = 1, 2, 3, \dots , m -1}$$について、$${a_{n+1} - a_n= 4}$$の辺々を足し合わせると
$${a_m - a_1 = 4 \cdot (m-1)}$$
整理して
$${a_m= 4m-4 + a_1 }$$
初項$${a_1 = 2}$$より
$${a_m= 4m-2 }$$
$${m}$$を$${n}$$に置き換えると
$${a_n= 4n - 2 }$$
一般項が求まった。

次に等比数列の場合を考える。
初項$${a_1 = 2}$$、漸化式$${a_{n+1} = 3a_n}$$が与える数列の一般項を求める。
$${a_1 \neq 0}$$で、漸化式からどの$${n}$$に対しても$${a_n \neq 0}$$である。
漸化式を変形すると$${\frac{a_{n+1}}{a_n} = 3}$$
(補足:等比数列の定義から、この式は公比3の等比数列を表している。)
$${n = 1, 2, 3, \dots , m -1}$$について、$${\frac{a_{n+1}}{a_n} = 3}$$の辺々を掛け合わせると
$${\frac{a_{m}}{a_1} = 3^{m-1}}$$
整理して
$${a_{m} = 3^{m-1}a_1}$$
初項$${a_1 = 2}$$より
$${a_{m} = 3^{m-1}\cdot 2}$$
$${m}$$を$${n}$$に置き換えると
$${a_{n} = 3^{n-1}\cdot 2}$$
一般項が求まった。

初項$${a_1 = 2}$$、漸化式$${a_{n+1} = 3a_n + 1}$$が与える数列の一般項を求める。
漸化式が$${a_{n+1} - \alpha = 3(a_n - \alpha)}$$の形に変形できたらいいな〜と考える。
$${\alpha}$$を含む式を展開すると$${a_{n+1} = 3a_n - 2\alpha}$$
漸化式と係数比較をすると$${\alpha = -\frac12}$$
したがって、漸化式は$${a_{n+1} + \frac12 = 3(a_n + \frac12)}$$に変形できる。
この式は初項$${a_1 + \frac12 = \frac23}$$、公比$${3}$$の等比数列$${\{a_n + \frac12\}}$$を与える漸化式と解釈できる。
先程と同じ方法で、等比数列の一般項を求めると$${a_n + \frac12 = 3^{n-1}\cdot \frac23}$$
整理すると
$${a_n = 3^{n-1}\cdot \frac23 - \frac12}$$
一般項が求まった。

初項$${a_1 = 2}$$、第2項$${a_2  = 2}$$、漸化式$${a_{n+2} = 5a_{n+1} -6a_{n}}$$が与える数列の一般項を求める。
漸化式が$${a_{n+2} - \alpha a_{n+1} = \beta(a_{n+1} - \alpha a_n)}$$の形に変形できたらいいな〜と考える。
$${\alpha, \beta}$$を含む式を展開すると$${a_{n+2} = (\alpha + \beta)a_{n+1} - \alpha \beta a_n}$$
漸化式と係数比較をすると$${\alpha + \beta= 5, \alpha \beta = 6}$$
2次方程式の解と係数の関係から、$${\alpha, \beta}$$は$${x^2-5x+6=0}$$の解である。
この方程式を解くと$${x= 2, 3}$$、つまり$${(\alpha, \beta) = (2,3), (3,2)}$$
したがって、漸化式は$${a_{n+2} - 2 a_{n+1} = 3(a_{n+1} - 2 a_n)}$$または$${a_{n+2} - 3 a_{n+1} = 2(a_{n+1} - 3 a_n)}$$に変形できる。
$${a_{n+2} - 2 a_{n+1} = 3(a_{n+1} - 2 a_n)}$$は初項$${a_2 -2a_1= 2-2\cdot 2 = -2}$$、公比$${3}$$の等比数列$${\{a_{n+1} - 2 a_n\}}$$を与える漸化式と解釈できる。
等比数列の一般項を求める方法を踏まえると$${a_{n+1} -2 a_n = 3^{n-1}\cdot (-2)}$$
一方で、$${a_{n+2} - 3 a_{n+1} = 2(a_{n+1} - 3 a_n)}$$は初項$${a_2 -3a_1= 2-3\cdot 2 = -4}$$、公比$${2}$$の等比数列$${\{a_{n+1} - 3 a_n\}}$$を与える漸化式と解釈できる。
等比数列の一般項を求める方法を踏まえると$${a_{n+1} -3 a_n = 2^{n-1}\cdot (-4)}$$
今、二式$${a_{n+1} -2 a_n = 3^{n-1}\cdot (-2)}$$、$${a_{n+1} -3 a_n = 2^{n-1}\cdot (-4)}$$を手に入れた。
連立して$${a_{n+1}}$$を消去すると$${a_n = 3^{n-1}\cdot (-2) - 2^{n-1}(-4)}$$
一般項が求まった。

問題
次の漸化式で定義される数列$${\{a_n\}}$$の一般項を求めよ。
$${a_1 = 3, a_{n + 1} = \frac{a_n}{2a_n + 1}}$$

解答
$${a_{n+1} = 0}$$を仮定すると漸化式から$${a_n = 0}$$が導かれる。
したがって、$${a_{n+1} = a_n = \dots = a_1 = 0}$$が帰結する。
この結果は所与の条件$${a_1 = 3}$$に矛盾する。

したがって、すべての$${n}$$について$${a_n \neq 0}$$である。

ゆえに、漸化式の両辺の逆数を取ることができる。
$${\frac{1}{a_{n+1}} = \frac{2a_n + 1}{a_n} = \frac{1}{a_n} + 2}$$

新たに、この等式を数列$${\{\frac{1}{a_n}\}}$$の漸化式として捉えると、
初項$${\frac{1}{a_1} = \frac{1}{3}}$$、公差$${\frac{1}{a_{n + 1}} - \frac{1}{a_{n}} = 2}$$の等差数列として解釈できる。

したがって、数列$${\{\frac{1}{a_n}\}}$$の一般項は
$${2(n-1) + \frac{1}{3} = \frac{6n-5}{3}}$$
つまり、数列$${\{a_n\}}$$の一般項は$${a_n = \frac{3}{6n-5}}$$


順列と組合せ (2023/12/16~2024/01/22)

1〜9までの数字が書かれた9枚のカードから3枚を取り出し、取り出した順番通りに左から1列に並べたときのパターン(場合の数)は何通りか。

以下、"場合の数"という用語を"パターン"という表現で統一する。

左から1番目のカードのパターンは1〜9の9通り。
左から2番目のカードのパターンは、1〜9から"左から1番目に置いたカード"を除いた8通り。
左から3番目のカードのパターンは、1〜9から"左から1番目に置いたカード"と"左から2番目に置いたカード"を除いた7通り。

1番目に置くパターンのそれぞれに対して、2番目に置くカードのパターンが存在し、2番目に置くパターンのそれぞれに対して、3番目に置くカードのパターンが存在する。

したがって、取り出した順に左から1列に並べた3枚のカードのパターンは$${9 \cdot 8 \cdot 7 = 504}$$通りである。

では、1〜9までの数字が書かれた9枚のカードから3枚を取り出したときのカードのパターンは何通りか。

この答えを仮に$${x}$$と置き、「どのようにすれば"取り出した順に左から1列に並べた3枚のカードのパターン$${504}$$通り"と一致するか」を考える。

例えば$${\{ 1, 2, 3\}}$$というカードのパターンから3枚取り出して、取り出した順に左から1列に並べたときのパターンは何通りかを考える。

左から1番目のカードのパターンは1〜3の3通り。
左から2番目のカードのパターンは、1〜3から"左から1番目に置いたカード"を除いた2通り。
左から3番目のカードのパターンは、1〜3から"左から1番目に置いたカード"と"左から2番目に置いたカード"を除いた1通り。

したがって、$${x}$$にある一つのパターン$${\{ 1, 2, 3\}}$$からは、$${3 \cdot 2 \cdot 1 = 6}$$通りの「取り出した順に左から1列に並べたときのパターン」が出来上がる。

$${x}$$のそれぞれに対して$${6}$$通りの「取り出した順番通りに左から1列に並べたときのパターン」が存在するので、$${x \cdot 6}$$が$${504}$$と一致する。

したがって、$${x = \frac{504}{6} = 84}$$であり、1〜9までの数字が書かれた9枚のカードから3枚を取り出したときのカードのパターンは$${84}$$通りとなる。

順番を区別したときのパターンを順列と呼ぶ。
順番を区別しないときのパターンを組合せと呼ぶ。

$${n}$$個の要素から$${r}$$個取り出す順列は一般に$${{}_n P_r}$$と表記される。
$${n}$$個の要素から$${r}$$個取り出す組合せは一般に$${{}_n C_r}$$と表記される。

順番を区別するほうが適切か、しないほうが適切かは状況から導かれるが、人間側が自由に決められることもある。

特に確率を求めるときは、順列で求めても組合せで求めても正しい答えに辿り着くことが多い。

例えば、1〜9までの数字が書かれた9枚のカードから3枚を取り出したときに、"2"のカードが含まれている確率を求める。

まず、順列で求める。
1〜9までの数字が書かれた9枚のカードから3枚を取り出した全パターンである順列は$${{}_9 P_3 = 504}$$通り。
そのうち、"2"のカードが含まれているパターンは
"2"のカードが1番目にあるか、2番目にあるか、3番目にあるかの3通りのそれぞれに対して、1と3〜9の8枚のカードから2枚を取り出す順列が対応するので$${3 \cdot {}_8 P_2 = 168}$$通り。
したがって、"2"のカードが含まれている確率は$${\frac{168}{504} = \frac13}$$

次に組合せで求める。
1〜9までの数字が書かれた9枚のカードから3枚を取り出した全パターンである組合せは$${{}_9 C_3 = 84}$$通り。
そのうち、"2"のカードが含まれているパターンは
"2"のカードを先に取り出す1通りに対して、1と3〜9の8枚のカードから2枚を取り出す組合せが対応するので$${1 \cdot {}_8 C_2 = 28}$$通り。
したがって、"2"のカードが含まれている確率は$${\frac{28}{84} = \frac13}$$

このように、順番を区別してもしなくても、正しい答えに辿り着く。

"順番を区別する"ことをもう少し深掘りする。

今、1〜3までの数字が書かれた3枚のカードから3枚取り出すと仮定する。
順番を区別したパターンを$${()}$$(順序対)で表現する。
例えば、$${(1, 2, 3), (2, 1, 3)}$$
順番を区別しないパターンを$${\{ \}}$$(非順序対)で表現する。
例えば、$${\{1, 2, 3\}}$$

ここで、$${(1, 2, 3) \neq (2, 1, 3)}$$だが$${\{1, 2, 3\} = \{2, 1, 3\}}$$である。
順番を区別すると$${(1, 2, 3), (1, 3, 2), (2, 1, 3), (2, 3, 1}, (3, 1, 2), (3, 2, 1)}$$の6通りあるが、順番を区別しないと$${\{1, 2, 3\}}$$のただ1通りである。

順列と組合せを一般化する。
前述の"1〜9までの数字が書かれた9枚のカードから3枚を取り出す順列と組合"を求めたときと同じ様に考えると、
$${n}$$個の要素から$${r}$$個取り出す順列$${{}_n P_r}$$は、
$${{}_n P_r = n(n-1)(n-2) \dots (n-r+1)}$$
$${n}$$個の要素から$${r}$$個取り出す組合せ$${{}_n C_r}$$は、
$${{}_n C_r = \frac{{}_n P_r}{{}_r P_r}}$$
(一般的には$${\frac{{}_n P_r}{n!}}$$)

$${2}$$以上の自然数$${n}$$において、$${1}$$から$${n}$$までの自然数を並び替えてできる順列のうち、「左から$${i}$$番目の数が$${i}$$でない」ものの場合の数を完全順列と呼ぶ。

例えば、$${\{1, 2, 3\}}$$の完全順列は$${(2, 3, 1), (3, 1, 2)}$$の2通り。

$${1}$$から$${n}$$までの自然数の完全順列を$${a_n}$$とする。

$${n = 2}$$のとき、完全順列は$${(2, 1)}$$のみで$${a_2 = 1}$$

$${n = 3}$$のとき、完全順列は$${(2, 3, 1), (3, 1, 2)}$$のみで$${a_3 = 2}$$

$${n \geq 4}$$のとき

$${a_n}$$、$${a_{n-1}}$$、$${a_{n-2}}$$の間に成り立つ関係を探る。

左から1番目の数字を$${i}$$とする。

(1)数字1が左から$${i}$$番目に置かれる場合
$${i}$$の取りうる値は、1~nから1を除いた$${n-1}$$通り。
左から1番目と$${i}$$番目以外の自然数の並び方は、n-2個の自然数の完全順列だから$${a_{n-2}}$$通り。
総数は$${(n-1)a_{n-2}}$$

(2)数字1が左から$${i}$$番目に置かれない場合
$${i}$$の取りうる値は、1~nから1を除いた$${n-1}$$通り。
左から1番目以外の自然数の並び方は、n-2個の自然数の完全順列と数字1が左から$${i}$$番目に置かれないパターンの複合だから$${a_{n-1}}$$通り。
総数は$${(n-1)a_{n-1}}$$

(1)と(2)は互いに排反であり、(1)(2)以外の状況はないため
$${a_n = (n-1)(a_{n-1} + a_{n-2})}$$

まとめると
$${a_2 = 1}$$
$${a_3 = 2}$$
$${a_n = (n-1)(a_{n-1} + a_{n-2})}$$ $${(n \geq 4)}$$

以下の漸化式を得ました。

$${a_2 = 1}$$
$${a_3 = 2}$$
$${a_n = (n-1)(a_{n-1} + a_{n-2})}$$ $${(n \geq 4)}$$

今回は、この漸化式を解いていきます。

漸化式は$${a_n - na_{n-1} = -\{a_{n-1} - (n-1)a_{n-2}\}}$$に変形できるので
$${a_n - na_{n-1} = -\{a_{n-1} - (n-1)a_{n-2}\} = \dots = (-1)^{n-3}(a_3 -3a_2) = (-1)^{n-3}(2-3\cdot 1) = (-1)^{n-2} = (-1)^n}$$

$${a_n - na_{n-1} = (-1)^n}$$の両辺を$${n!}$$で割ると
$${\frac{a_n}{n!} - \frac{a_{n-1}}{(n-1)!} = \frac{(-1)^n}{n!}}$$

$${n}$$を$${4}$$から$${n}$$まで$${+1}$$していったものを並べると
$${\frac{a_4}{4!} - \frac{a_{3}}{3!} = \frac{(-1)^4}{4!}}$$
$${\frac{a_5}{5!} - \frac{a_{4}}{4!} = \frac{(-1)^5}{5!}}$$


$${\frac{a_n}{n!} - \frac{a_{n-1}}{(n-1)!} = \frac{(-1)^n}{n!}}$$

辺々の和を取ると
$${\frac{a_n}{n!} - \frac{a_{3}}{3!} = \frac{(-1)^4}{4!} + \frac{(-1)^5}{5!} + \dots + \frac{(-1)^n}{n!}}$$

$${a_3 = 2}$$より
$${\frac{a_n}{n!} - \frac{2}{3!} = \frac{(-1)^4}{4!} + \frac{(-1)^5}{5!} + \dots + \frac{(-1)^n}{n!}}$$
$${\frac{a_n}{n!} - (\frac{1}{2!}-\frac{1}{3!}) =\frac{1}{4!} - \frac{1}{5!} + \dots + (-1)^n \frac{1}{n!}}$$
$${\frac{a_n}{n!} = \frac{1}{2!}-\frac{1}{3!} +\frac{1}{4!} - \frac{1}{5!} + \dots + (-1)^n \frac{1}{n!}}$$

$${a_n}$$の式として変形すると
$${a_n = n!\{\frac{1}{2!}-\frac{1}{3!}+\frac{1}{4!} - \frac{1}{5!} + \dots + (-1)^n \frac{1}{n!}\}}$$

$${\frac{1}{0!}-\frac{1}{1!} = 0}$$を利用して式を整えると
$${a_n = n!\{\frac{1}{0!}-\frac{1}{1!} + \frac{1}{2!}-\frac{1}{3!}+\frac{1}{4!} - \frac{1}{5!} + \dots + (-1)^n \frac{1}{n!}\}}$$

完全順列の一般項を得られた。

参考資料

完全順列は、シャッフルしたときにどの要素も完全に混ざるパターンを調べるものなので、席替えやプレゼント交換の状況に当てはめられる。

例えば4人でプレゼント交換をしたときに、どの人も自分自身が用意したプレゼントを自分で受け取ることがないように交換するケースを調べるときに、完全順列の一般項から$${a_4=4!\{\frac{1}{0!} - \frac{1}{1!} + \frac{1}{2!} - \frac{1}{3!} + \frac{1}{4!}\} = 24(1-1+\frac{1}{2} - \frac16 + \frac{1}{24})= 24 - 24 + 12 -4 +1 = 9}$$通りだと求めることができる。

こうなる確率はといえば、$${\frac{9}{4!} = \frac38=37.5}$$%である。

5人で席替えをしたときに、どの人も席替え前に座っていた席に座らないようにシャッフルする方法は$${a_5 = 5!\{\frac{1}{0!} - \frac{1}{1!} + \frac{1}{2!} - \frac{1}{3!} + \frac{1}{4!} - \frac{1}{5!}\} = 120(1-1+\frac{1}{2} - \frac16 + \frac{1}{24} - \frac{1}{120}) = 120-120+60-20+5-1 = 44}$$通り。確率は$${\frac{44}{5!} = \frac{11}{30}=}$$約$${37}$$%。

ここから発展的な話として、完全順列に指数関数の多項式近似を導入する。

$${e^x = \frac{x^0}{0!} + \frac{x^1}{1!} + \frac{x^2}{2!} + \frac{x^3}{3!} + \dots}$$に$${x = -1}$$を代入すると
$${e^{-1} = \frac{1}{0!} - \frac{1}{1!} + \frac{1}{2!} - \frac{1}{3!} + \dots}$$

一般の$${n}$$について、完全順列の確率を求めると
$${\frac{a_n}{n!} = \frac{1}{0!} - \frac{1}{1!} + \frac{1}{2!} - \frac{1}{3!} + \dots + (-1)^n\frac{1}{n!}}$$

$${n \to \infty}$$に極限を取ると
$${\lim_{n \to \infty}\frac{a_n}{n!} =\lim_{n \to \infty}\{ \frac{1}{0!} - \frac{1}{1!} + \frac{1}{2!} - \frac{1}{3!} + \dots + (-1)^n\frac{1}{n!} \} = e^{-1} = \frac{1}{e}}$$

$${e \fallingdotseq 2.718}$$とすると、だいたい$${\frac{1}{e} = \frac{1}{2.718}  \fallingdotseq 0.37}$$

$${n = 5}$$の時点で完全順列となる確率は約$${37}$$%だったので、この極限は収束が非常に速い。

5人によるプレゼント交換でも、1万人によるプレゼント交換でも完全順列となる確率は約37%で、裏返せばだれか一人でも自分自身のプレゼントを受け取ってしまう確率(完全順列とはならない確率)は約$${63}$$%もある。

参考文献


ユークリッドの互除法 (2024/01/28)

縦24、横36の長方形の枠内には正方形のタイルを最小で何枚敷き詰められるだろうか。

正方形のタイルを敷き詰めるためには正方形の一辺が長方形の枠の辺の長さを割り切る必要があるので、正方形の一辺は縦:24の約数、かつ横:36の約数である。

約数は正負を考えられるが、正方形のタイルの辺の長さは必ず正の値を取るので、常に正の範囲で考える。
24の約数は1, 2, 3, 4, 6, 8, 12, 24
36の約数は1, 2, 3, 4, 6, 9, 12, 18, 36
正方形の辺の長さが最大のとき、敷き詰めるタイルの個数が最小となる。
24、36のそれぞれの約数のうち、共通かつ最大のものは12だから、一辺12の正方形のタイルを縦:24 ÷ 12 = 2(枚)、横:36 ÷ 12 = 3(枚)、合計:2 × 3 = 6(枚)敷き詰めたときが最小個数となる。
答えは6枚。

2つの整数に共通する約数のうち、最大のものを最大公約数という。

この最大公約数を求める手順を考える。

以下、全て非負整数の範囲とする。

$${a}$$を$${b}$$で割った商を$${q}$$、余りを$${r}$$とすると
$${a \div b = q \dots r}$$

$${a \div b = q \dots r}$$を書き換えると$${a = bq + r}$$

$${a = bq + r}$$において、
$${a, b}$$の最大公約数と$${b, r}$$の最大公約数が一致するかを検証する。

$${a, b}$$の最大公約数を$${d}$$、$${b, r}$$の最大公約数を$${d'}$$とする。

(1)
$${a}$$と$${b}$$は$${d}$$を用いて次のように表せる。
$${a = da'}$$
$${b = db'}$$
($${a'}$$と$${b'}$$は最大公約数が$${1}$$である自然数)

$${a = bq + r}$$に代入すると$${da' = db'q + r}$$
変形すると$${r= d(b'q - a' )}$$

$${b'q - a' }$$が$${0}$$になる可能性があるかを調べる。
$${a'}$$と$${b'}$$は最大公約数は$${1}$$だから、$${b'}$$は$${a'}$$の約数となることがない。
つまり、$${a' = b'x}$$を満たす自然数$${x}$$は存在しない。
よって、$${b'x - a' = 0}$$を満たす自然数$${x}$$は存在しない、
即ち$${b'q - a' }$$が$${0}$$になることはない。

$${b'q - a'}$$は自然数だから、$${d}$$は$${r}$$の約数であることが示された。

$${a, b}$$の最大公約数を$${d}$$と置いているので、$${d}$$は$${b}$$の約数でもある。

$${d}$$は$${r}$$の約数であり、かつ$${b}$$の約数でもあるので、$${d}$$は$${b, r}$$の公約数である。

$${b, r}$$の最大公約数は$${d'}$$なので、$${d \leq d'}$$

(2)
$${b}$$と$${r}$$は$${d'}$$を用いて次のように表せる。
$${b = d'b'}$$
$${r = d'r'}$$
($${b'}$$と$${r'}$$は最大公約数が$${1}$$である自然数)

$${a = bq + r}$$に代入すると$${a = d'b'q + d'r'}$$
変形すると$${a = d'(b'q + r')}$$
$${b'q + r'}$$は(調べるまでもなく)自然数だから、$${d'}$$は$${a}$$の約数であることが示された。

$${b, r}$$の最大公約数を$${d'}$$と置いているので、$${d'}$$は$${b}$$の約数でもある。

$${d'}$$は$${a}$$の約数であり、かつ$${b}$$の約数でもあるので、$${d'}$$は$${a, b}$$の公約数である。

$${a, b}$$の最大公約数は$${d}$$なので、$${d \geq d'}$$

(3)
(1)と(2)より$${d \leq d'}$$かつ$${d \geq d'}$$が導かれたので$${d =d'}$$
つまり、$${a, b}$$の最大公約数と$${b, r}$$の最大公約数は一致する。

総括すると、$${a \div b = q \dots r}$$が成り立つととき、$${a, b}$$の最大公約数は$${b, r}$$の最大公約数でもある。

この性質を利用すると、2つの自然数の約数を逐一列挙することなく最大公約数を求めることができる。

例えば、$${24, 36}$$の最大公約数を求める。

$${a, b}$$の最大公約数を$${(a, b)}$$と表記すると

$${36 \div 24 = 1 \dots 12}$$ →$${(36, 24) = (24, 12)}$$
$${24 \div 12 = 2 \dots 0}$$   →$${(24, 12) = (12, 0)}$$

$${(12, 0) = 12}$$より、$${(36, 24) =(24, 12) = (12, 0) = 12}$$

$${24, 36}$$の最大公約数は$${12}$$


素因数分解 (2024/02/04~2024/02/25)

以下全て、正の範囲を前提とする。

整数の性質を調べる方法の一つに、素因数分解がある。

例えば、整数$${24}$$の性質を調べる。

とっかかりには、$${24}$$をさらに何らかの整数に分解することが思い浮かぶ。

まず、足し算の形に分解することが考えられる。

$${24 = 1 + 2  + 3 + 4 + 5 + 5 + 3 + 1}$$

しかしこの方法は、結局分解し切ると$${1}$$が並ぶだけで数学的に面白い性質を取り出しにくい。
$${24 = 1 +1+ \dots+ 1}$$

引き算、割り算に分解する方法は最初の項に並べる引かれる数、割られる数次第で何通りもの分解方法ができてしまう。
$${24 = 30 -3- 2-1 = 34 -4-3-2-1 = \dots}$$
$${24 = 144 \div 3 \div 2= 240 \div 5 \div 2= \dots}$$

$${1}$$以外の整数を用いて掛け算に分解すると、以下の点で都合がよい。
・分解の「底」が存在する(有限回で分解し切れる)
・分解の「底」が、並び順を除いてただ1通りに決まる
・分解結果が数学的に面白い($${1}$$が並ぶだけ、みたいにはならない)
・分解結果から有用な知見を得られる

$${24}$$を掛け算の形に分解すると$${24 = 2^3 \times 3^1}$$

この方法により、整数の様々な性質を調べることができる。

引き続き、正の範囲を前提とし、この記事全体を通して$${\times 1}$$は除外する。

ある整数を掛け算の形に分解すると、その整数の様々な性質を調べることができる。

$${24 = 2^3 \times 3^1}$$から、$${24}$$は$${3}$$で割り切れるが$${5}$$で割り切れないこと、約数の個数が$${(3 + 1) (1 + 1) = 8}$$であることなどが分かる。

$${24 = 2^3 \times 3^1}$$に現れている、$${2}$$や$${3}$$を素数と言い、掛け算で結合されている全ての項が素数になるまで分解することを素因数分解と言う。

素因数分解の特徴を列挙していく。

ある式や数を掛け算で表したときの、各構成要素を因数と呼ぶ。
例えば、$${3 \times 4}$$の因数は$${3}$$と$${4}$$。

ある式や数を掛け算の形で表すことを因数分解と呼ぶ。
因数に分解するので因数分解。

ある自然数を自分自身とは異なる因数に次々分解していったときに、これ以上この方法による分解が不可能な自然数を素数と呼ぶ。
$${2}$$や$${3}$$は素数だが、$${4}$$は$${2 \times 2}$$に因数分解できるので素数ではない。

ある整数を全ての因数が素数になるまで分解する(これ以上因数分解できない形まで分解する)ことを素因数分解と呼ぶ。

以上が素因数分解の方針だが、用語の意味を厳密にしていく。

まず、$${3}$$を因数分解するという意味では$${3 \times 1}$$が可能だが、$${1}$$で掛けることを考えてしまうと$${3 \times 1, 3 \times 1 \times1, \dots}$$のように「分解方法がただ1通りに決まる」という性質が破られてしまうので、因数$${1}$$は素因数分解に関しては考慮外とする。

つまり、自然数$${1}$$は素数には含めない。

このことを踏まえて、素数は「$${1}$$とその数自身しか約数を持たない($${1}$$を除外した)$${2}$$以上の整数」と定義される。
$${6}$$の約数は$${1, 2, 3, 6}$$であり、$${1}$$とその数自身$${6}$$以外に約数$${2, 3}$$を持つので、$${6}$$は素数ではない。

全ての$${2}$$以上の自然数は並び順を除いてただ一通りに素因数分解できる。
$${12}$$を素因数分解すると$${2\times 2 \times 3}$$であり、各素因数の並び順を入れ替えることはできるが、各素因数の種類と個数を変えることはできない。$${12}$$を素因数分解すると$${2}$$が$${2}$$つと$${3}$$が$${1}$$つのただ一通り。

この素因数分解の一意性は当たり前なことのように感じられるが、証明すべき定理である(複数通りに素因数分解できる数学的世界を考えることができる)。この定理の証明は私に解説する力がないため、割愛する。

以下サイトに載っている。

素因数分解のやり方を説明する。

まず、知られている素数を覚える。
だいたい、$${2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19}$$が素数であることを覚えれば十分。

次に、小さな素数から順に調べたい整数を割っていく。

$${60}$$を素因数分解する。
最初は$${2}$$で割る。
$${60 \div 2 = 30}$$
$${30 \div 2 = 15}$$
$${2}$$で割れなくなったので、$${3}$$で割る。
$${15 \div 3 = 5}$$
$${3}$$で割れなくなったので、$${5}$$で割る。
$${5 \div 5 = 1}$$
これ以上素数で割れないため、終了となる。

最後に、割れた回数だけの素数を掛け算で結ぶ。
$${60}$$は$${2}$$で2回、$${3}$$で1回、$${5}$$で1回割れたので、
$${60}$$を素因数分解すると$${2^2 \times 3\times 5}$$となる。
(慣習として、素因数分解結果は素数が小さい順に書く)

以上が教科書的な説明だが、小さな数から割っていくと割る回数が多いため、実用的には少し工夫する。

まず、一の位が偶数か奇数かを調べて、全体の整数が素因数$${2}$$で割れるかを判断する。

第二に、一の位が「$${0}$$か$${5}$$」かどうかを調べて、全体の整数が素因数$${5}$$で割れるかを判断する。

第三に、各位の和を調べて、全体の整数が$${9}$$で割れる、または$${3}$$で割れるかを判断する。(九去法)

もし、第一~第三のいずれかに該当したら、その最小公倍数で対象の整数を割る。(例えば、$${2}$$で割れて、$${9}$$で割れると判定されたら、$${18}$$で割る。)

どれにも該当しなかったら、$${7, 11, \dots}$$といった各素数で割れるかを実際に試す。(11は実用的な倍数判定法が存在するが、素因数分解に関して大体第一~第三で十分なため割愛する。7やそのほかの素数に関する実用的な倍数判定法に関しては、私は知らない。)

それでもだめだったら、きっとその整数自身が素数である。(一応、フェルマーテストという100%ではないが精度の高い素数判定法はある)

$${1980}$$を素因数分解する。

一の位が$${0}$$なので、$${10}$$で割れそう。
$${198}$$

一の位が偶数なので$${2}$$で割れそう。
さらに、各位の和が$${18}$$で$${9}$$の倍数なので、全体も$${9}$$で割れそう。
したがって、$${18}$$で割れる。
$${11}$$

$${11}$$は素数なのでここで打ち止め。

$${1980}$$は
$${10}$$で割れたので、因数$${2\times 5}$$を持つ
$${18}$$で割れたので、因数$${2 \times 3^2}$$を持つ
最後に素数$${11}$$が残ったので、因数$${11}$$を持つ、
ゆえに、素因数分解すると$${2^2 \times 3^2 \times 5 \times 11}$$

ちなみに、$${1980}$$を教科書的な方法で素因数分解すると次のようになる。
$${1980 \div 2 = 990}$$
$${990 \div 2 = 495}$$
$${495 \div 3 = 165}$$
$${165 \div 3 = 55}$$
$${55 \div 5 = 11}$$
$${11 \div 11 = 1}$$

$${1980}$$は$${2}$$で2回、$${3}$$で2回、$${5}$$で1回、$${11}$$で1回割れたので、$${1980}$$を素因数分解すると$${2^2 \times 3^2 \times 5 \times 11}$$

素因数分解結果から分かることを列挙する。

第一に、対象の整数を何で割り切ることができて、何で割り切ることができないかがわかる。

$${60}$$を素因数分解すると$${2^2 \times 3\times 5}$$となるので、例えば素因数(素数の因数)$${2, 3}$$で$${60}$$を割り切れるし、素因数を組み合わせた$${6}$$でも$${60}$$を割り切れることが分かる。

同様に考えると、素因数分解結果$${2^2 \times 3\times 5}$$の各素因数の指数を$${0}$$まで下方にズラしていった$${2^2 \times 3^1\times 5^1, 2^2 \times 3^1\times 5^0, 2^2 \times 3^0\times 5^1, 2^2 \times 3^0\times 5^0, \dots , 2^0 \times 3^0\times 5^1, 2^0 \times 3^0\times 5^0}$$も$${60}$$を割り切る。

逆に、$${60}$$が持っていない素因数$${7}$$や$${11}$$、指数が大きい$${2^4}$$や$${3^5}$$は$${60}$$を割り切らないことも素因数分解結果から判断できる。

第二に、対象の整数を割り切る自然数の個数が分かる。
$${2^4}$$を割り切る自然数は、$${2^1, 2^2, 2^3, 2^4}$$の四つと、$${2^0}$$の一つなので、個数は(2の指数)+1である。
$${60}$$については、$${2}$$の指数をズラしていったそれぞれについて、$${3}$$の指数をズラしていったものがあって、さらにそのそれぞれについて$${5}$$の指数をズラしていったものがあるので、$${60=2^2 \times 3\times 5}$$を割り切る自然数の個数は$${(2+1)(1+1)(1+1) = 3 \times 2 \times 2 =12}$$個ある。

第三に、対象の整数を割り切る自然数の総和を求められる。
$${60}$$を割り切る自然数は全部で$${2^2 \times 3^1\times 5^1, 2^2 \times 3^1\times 5^0, 2^2 \times 3^0\times 5^1, 2^2 \times 3^0\times 5^0, \dots , 2^0 \times 3^0\times 5^1, 2^0 \times 3^0\times 5^0}$$だが、この総和を因数分解すると$${(2^0 + 2^1 + 2^2)(3^0 + 3^1)(5^0+5^1)}$$となる。($${(2^0 + 2^1 + 2^2)(3^0 + 3^1)(5^0+5^1)}$$を展開すると元通りになる)

さらに、各因数に等比数列の和の公式を当てはめると
$${\frac{2^{(2+1)} - 2^0}{2-1} \cdot \frac{3^{(1+1)} - 3^0}{3-1}\cdot \frac{5^{(1+1)} - 5^0}{5-1}}$$

計算すると$${7\cdot 4 \cdot 6 = 168}$$

第四に、2つの整数の最大公約数と最小公倍数が分かる。

$${60}$$と$${40}$$の最大公約数と最小公倍数を求めたいときに、各素因数分解結果を並べて置く。
$${60 = 2^2 \times 3^1 \times 5^1}$$
$${40 = 2^3 \times 3^0 \times 5^1}$$

ある整数の約数は、素因数の指数を0になるまで下方にズラしていったものなので、2つの整数の最大公約数は共通素因数の指数の最小値を素因数の指数に持つ自然数である。
$${60}$$と$${40}$$の最大公約数は、$${2}$$の最小値$${2}$$、$${3}$$の最小値$${0}$$、$${5}$$の最小値$${1}$$を各素因数の指数に持つ$${2^2 \times 3^0 \times 5^1 = 4 \times 1 \times 5 = 20}$$である。

ある整数の倍数は、素因数の指数を上方にズラしていったものなので、2つの整数の最小公倍数は共通素因数の指数の最大値を素因数の指数に持つ自然数である。
$${60}$$と$${40}$$の最小公倍数は、$${2}$$の最大値$${3}$$、$${3}$$の最大値$${1}$$、$${5}$$の最大値$${1}$$を各素因数の指数に持つ$${2^3 \times 3^1 \times 5^1 = 8 \times 3 \times 5 = 120}$$である。

ほかにも素因数分解の利点はあるが、ひとまず基本は以上である。


微分と積分 (2024/03/16)

(同人本を作ろうとしてお蔵入りになったものです)

この本の目的は、数式$${f(b)-f(a)=\int_a^bf'(x)dx}$$を理解することです。

まず、この数式に登場する記号の意味を説明します。

$${=}$$
左と右の数量が等しいことを表します。
例えば、$${1+3}$$と$${2 \times 2}$$はどちらも$${4}$$に等しいので
$${1 + 3 = 2 \times 2}$$です。

$${a, b}$$
常に一定な数を表します。

$${x}$$
様々な値を取って変化する数を表します。

$${f(\, \,)}$$
$${(\, \,)}$$内の値を変換する規則を表します。
例えば、規則$${f(\, \,)}$$が$${3\cdot (\, \,) + 2 }$$を表しているとき、
$${f(1) = 3\cdot (1) +2= 3\cdot 1 +2 = 5}$$
$${f(2) = 3\cdot (2) +2 = 3\cdot 2 +2 = 8}$$
$${f(3)= 3\cdot (3) +2 = 3\cdot 3 +2 = 11}$$
となります。

$${f'(\, \,)}$$
規則$${f(\, \,)}$$における、入力値と出力値の瞬間的な変化量の比率を表します。
例えば、規則$${f(\, \,)}$$が$${(\, \,)^2 + 1 }$$を表しているとき、
定数$${\delta}$$に対して、入力値が$${1}$$から$${1 + \delta}$$まで変化したときの入力値の変化量は
$${(1+\delta) -1 = \delta}$$
このときの出力値の変化量は
$${f(1+\delta) -f(1) = \{ (1+\delta) ^ 2 + 1\} - (1^2 + 1) = 2\delta + \delta^2}$$
したがって、このときの入力値と出力値の変化量の比率は
$${\frac{ 2\delta + \delta^2}{\delta} = 2 + \delta}$$
今、定数$${\delta}$$が限りなく$${0}$$に近いとき、比率$${ 2 + \delta}$$は$${ 2}$$に近づきます。
したがって、規則$${f(\, \,)=(\, \,)^2 + 1 }$$における入力値$${1}$$付近の入力値と出力値の瞬間的な変化量の比率は$${f'(1) = 2}$$です。

$${\int_a^b}$$
$${a}$$から$${b}$$までの全ての数について和を取る操作を表します。
例えば、限りなく$${0}$$に近い数を$${\delta}$$で表したとき
$${1}$$から$${2}$$までの全ての実数は$${1, 1+\delta, 1+2\delta,  \dots , 2- \delta, 2}$$であるので、
$${\int_1^2 (2x+1) = \{2\cdot 1 + 1\} +\{2\cdot(1 + \delta) + 1\} + \{2\cdot(1 + 2\delta) +1\} + \dots + \{2\cdot (2-\delta) + 1\}+ \{2\cdot 2 + 1\}}$$
ただし、実用上は上端$${b}$$を和に含めないです。
$${\int_1^2 (2x+1) = \{2\cdot 1 + 1\} +\{2\cdot(1 + \delta) + 1\} + \{2\cdot(1 + 2\delta) +1\} + \dots + \{2\cdot (2-\delta) + 1\}}$$
この本でも、上端$${b}$$を和に含めないものとします。

$${d}$$
対象としている数の限りなく小さい変化量を表します。
$${dx}$$で一つの記号です。

$${\int_a^bf(x)dx}$$
丁寧に書けば、$${\int_{x = a}^b\{f(x) \cdot dx\}}$$です。
$${dx}$$は「数$${x}$$の限りなく小さい変化量」を表しますが、
$${\int_a^b}$$にはほぼ$${dx}$$が用いられるため、$${dx}$$は「どの数について和を取るか」を指示するとも解釈できます。
したがって、下端$${x = a}$$の$${x = }$$を省略して$${\int_{a}^b\{f(x) \cdot dx\}}$$、さらに簡略化して$${\int_a^bf(x)dx}$$と書くことが定着しています。


記号の説明が終了したため、数式の成立根拠に移ります。

何らかの$${0}$$でない数を$${\delta}$$とし、$${\frac{f(x + \delta) - f(x)}{\delta}}$$を$${g(x)}$$とします。
$${\frac{f(x + \delta) - f(x)}{\delta} = g(x)}$$

両辺に$${\delta}$$をかけると
$${f(x + \delta) - f(x)= g(x)\delta}$$

$${x}$$について、$${a}$$から$${\delta}$$刻みで$${b-\delta}$$まで和を取ると
$${\{f(a + \delta) - f(a)\} + \{f(a + 2\delta) - f(a + \delta)\} + \dots + \{f(b) - f(b - \delta)\}}$$
$${=}$$
$${g(a)\delta + g(a + \delta)\delta + \dots + g(b - \delta)\delta}$$

整理すると
$${f(b) - f(a) = g(a)\delta + g(a + \delta)\delta + \dots + g(b - \delta)\delta}$$

この数式は、$${\delta}$$が$${0}$$以外であればいついかなるときも成り立ちます。

つまり、$${\delta}$$が限りなく$${0}$$に近いときも成り立ちます。

$${\delta}$$が限りなく$${0}$$に近いとき、
$${ g(a)\delta + g(a + \delta)\delta + \dots + g(b - \delta)\delta  = \int_a^bg(x)dx = \int_a^bf'(x)dx}$$

ゆえに、
$${f(b)-f(a)=\int_a^bf'(x)dx}$$

以上です。

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