因数分解(3)
一部の因数分解では、有名公式を覚えていないと計算が難しい場合があります。
例えば
$${a^3 + b^3 + c^3 -3abc = (a-b)(b-c)(c-a)(a + b + c)}$$
特に、文字の一部が具体的な数字になっていると気づきにくいです。
$${a^3 + 8b^3 + 27 - 18ab}$$を与えられて、すぐさま先ほどの公式において$${a \to a, b\to 2b, c\to 3}$$に置き換わっていることを見抜く必要があります。
もし公式を知らなかった場合、定石通りある一つの文字に着目して、その文字に関して降べきの順に整理し、着実に因数分解を進めていく方法を取ることもできます。
この方法の場合、時間を掛ければ必ず解けます。(因数分解可能ならば)
しかし、文字数が多かったり次数が大きい場合、より長い時間を取られ、計算ミスをする確率が高まります。
テクニックの一つとして、対称式・交代式の性質を利用する方法があります。
因数分解前の$${a^3 + b^3 + c^3 -3abc}$$は3つの文字$${a, b, c}$$のうち、2つを選んで入れ替えると、入れ替え後の式は入れ替え前の式の$${-1}$$倍になります。
つまり、交代式と呼ばれるものです。
ということは、因数分解後の式も全体として交代式となることが導かれます。
そして、交代式の因数分解結果は(交代式)×(対称式)となることが知られています
ということは、因数分解の途中でもし$${a-b}$$を因数として持つことが判明したら、$${b-c, c-a}$$も同じように因数として持つことが確定し、全体として交代式である$${(a-b)(b-c)(c-a)}$$が因数分解結果に現れることが計算なしで分かります。
そして、あとは文字数と次数を調整するような対称式を見繕うだけです。
この場合は、$${a + b + c}$$がヒットします。
よって、$${a^3 + b^3 + c^3 -3abc}$$を因数分解すると$${(a-b)(b-c)(c-a)(a + b + c)}$$になる、ということが時間短縮して求められます。