とんこつ醤油
今回成仏させる台本は、高校1年生の時に作った『俳句教室』というタイトルのものである。バラシが弱いがかなり気に入っているネタだ。
A:家の近くに俳句教室が出来てさ
B:ほお
A:行きたいなーって思ってるんやけどね、俳句のことほとんど知らんからさ
B:細かいルールとか、わからんとこは結構あるよね
A:習うにしてもある程度のことはしっておきたいやんか
B:なるほどな
A:そこでひとつだけ分からんことが
あるからお前に聞きたいんやけど
B:ええよ 答えられる範囲でな
A:味付けは酢醤油でいいよな?
B:ん?え、ん?
A:味付けは、酢醤油で、いいんかな?
B:丁寧に聞いてくんなよお前 丁寧に
理解出来んのじゃなくて
納得出来んのや。え、俳句の話やんな
A:そうや
B:川柳やったらまだ分かるのよ
あれ音の決まった箱に文字詰め込ん
でるだけの趣風無機質やから
でも俳句はそうはいかんのよ
酢醤油ってなんやねん
A:そうやんな
B:そうよ、変こと言ってるの分かった?
A:てことは酢味噌か
B:味覚から抜け出してくれ
大豆を親とする兄弟の権力争いは
ええねん。どっちが酢帝の妃に相応しいかの血みどろの争い
A:酢帝てなんやねん
B:酢の帝じゃ!!!分かるやろ
A:実は酢醤油はもう用意してるねん
B:勝手に話進めんなよ
A:酢醤油を手に入れた俺はどうやって俳句のセンスを磨いて行けばいいかな
B:受け皿ちゃう?
A:は?
B:センスの前に受け皿ちゃーう!?
お前に足りへんのは酢醤油の受け皿や
今すぐ買ってこい
A:うわー!受け皿やー!
B:受け皿やー!やあるかい
いやそもそも調味せんでいいのよ
さっきひとつだけわからんって
言ったよな
A:おん
B:その返しやめろ
そのーさ、逆に何が分かってるの?
A:季語入れて趣だしゃあ良い
B:言い方考えろよ 酢醤油を迷うやつに趣もへったくれもないからな
A:なんでそんなん言うねん
B:まずなんで酢醤油がいるねん
A:前見たテレビで「味わい深い作品」が魅力的っていうのを聞いてさ…
B:あー……
A:酢醤油しか思い浮かばんかった
B:なるほどあー…理解出来んくて
すまんかった。ただなあ、
A:ただなあ?
B:ただなあ、酢醤油で味わい深くなるのは餃子だけやねん
A:おお、ライフハックや
B:カウントすんな。これで生き抜けるの宇都宮市民だけやろ
A:浜松市民忘れんな
B:やとしてもすぎるやろ!!!ええて
俳句の趣はねえ、酢醤油では出ないよ
A:じゃあどうすればええの
B:麹が適任やわ
A:麹?
B:麹を見ろよお前
あいつら長い時間を耐えて出来上がるねん。その時間に出来上がった旨み、最高なんやか
A:おお...なるほどな!
B:せやろ?
A:確かにそうやな!
そうかー麹が答えやったか
B:ん?ああ違う違う違う!
ややこしくしてすまん
そもそも味付けは要らんのよ
A:じゃあ何が作品の味を出すん
B:語彙や!
A:語彙か!
B:語彙やそれ以外ないわ
A:語彙かなるほどな
じゃあその語彙っていうのはどれくらい発酵されて出来上がるんかね
B:ん一人生をかけてちゃう?
A:今ので閃いた。一句詠むわ
B:最後かましたれ
A:人生をかけて
B:おお
A:語彙をいっぱい増やしました
B:おお、うん
A:やったー!語彙!語彙!
B:ええ
A:GOING STEADY!!!
B:おお5 7 5じゃなくて8 13 歓喜 峯田の
サブカル風無機質もうええわ
個人的には、特に「8 13 歓喜 峯田のサブカル風無機質」というセリフが大好きだ。
このネタの思い出としては、友人の卓球部員に見せた時「酢醤油じゃなくてとんこつ醤油の方が味わい深くね?」と言われたことである。その場にいた全員がその意見に賛同していてかなり悔しかった覚えがある。今思い出してもどんな空間やねん。ほんでとんこつ醤油の方がちょっとおもろそうな感じするのやめてくれ。結局のところ酢醤油のまま変えてないけど。酢醤油が面白いと思ってるから。