8/10 『ぼくらのロストワールド』を読んだ
面白かった。
高3の夏。母校の中学で起こった事件、妹弟や後輩たちを助けるためにぼくらが動く。いいけどいい加減受験のことも考えなさいよとも思う。
この辺りからちょっとぼくらの面々が説教くさくなっていく感じがある……いや、それはもともと少なからずあったけど、菊地や相原、安永たちが「最近の中学生たちはどうしちまったんだ?」ってなっていくという。まあ高校生らしいといえばらしいか。それに、お前たちが無茶しすぎだという話でもある。
と、最初はそんな感じで後輩どもを憂いてはいるのだが、「修学旅行を中止しないと自殺する」という脅迫の電話や、生徒の不審死などつぎつぎ起こる事件を通して、その中学生たちもなかなかどうして捨てたもんじゃないという描写がなされていく。自殺脅迫の犯人じゃないかと疑われ一人旅に出たいじめられっ子の川合はすっかり旅に夢中になってしまうし、一見醒めた態度ながらも鋭い視点を持ち、かつクラスの不良とタイマンで互角にやり合う朝丘など、キャラが濃い。2A探偵局の有季とも同年代だし、ひょっとして本当に次世代「ぼくら」として展開させていく予定などあったのかもしれない。
川合の一人旅パートは、マジでエンジョイしかしてないからこれが事件にどう繋がっていくんだと思っていたら、不審死を遂げた女子と実は密かに交流があり、謎の解明につながる手掛かりを持っていたことがわかると共に、彼と合流するために同級生たちが旅先へ赴く、そうすることで新生代中学生たちの「ぼくらの修学旅行」が始まる……という構成は見事だと思った。そしてさらに言うなら、いじめられっ子と死んだ不良女子中学生が、きわめて淡く微かなものではあるが心を通わせていたってのがまた。深く語られることはなかったものの、感傷を誘う。
事件の謎が明かされると、真相は結局薄汚い教師たちの身勝手な振る舞いの結果であったことがわかるわけだが、しかし英治達の母校、教師が事件起こし過ぎだなマジで……殺人だったり援交だったり汚職だったり、どうなっているんだ。
まあ、であればこそ、ここに来て英治の将来に教師という道が示される必然性が生まれるということなのかもしれないが。ぼくらの後継が育っていることを確認し、ようやく将来への道が見え始めるわけか。次巻はいよいよ高校編最後の話だったかな。