11/12 『十一人の賊軍』を観た
冲方丁の小説版を先に読んでいたので、ストーリーにいくらか差はあるらしいがネタバレを気にすることなく観る前に感想を読んだりしていたら、結構「原作・冲方丁」と勘違いしている人が多かった。違うのになあもう、なんかバッドエンドとか血みどろストーリーみたいなものに条件反射でそう言っちゃってんのかな。「この鬼! 悪魔! 〇〇(作家名)!」とかいうアレも、こうなると作家への侮辱ともとられかねないから気をつけたほうがいい。「この作家はそういう話しか作れない」と言うようなもんだろう。
そもそもバッドエンドでもない、映画も小説も。ただちょっと、登場人物の誰も彼もがみんなバラバラのことを考えてバラバラに行動して、なので当然の帰結として誰も彼も思い通りに事が運ばず酷い目に遭ったりしているだけだ。悪人はおらず、たまたま(あるいは信念の下に)選んだ手段として悪行があるだけで、バッドというなら苦渋の末にそうしなければ生き抜いていけなかった世の中が悪い。そして、そんな世はこうして今も続いている。ゆえにエンドでもない。……まあもっとも、武士の世はこの後終わるのだけど。事の背景が込み入ってる上に登場人物も多いので、場面がしょっちゅう切り替わって、序盤は話の筋が分かりにくいように思えるところもあった。あらかじめ小説版を読んでなければ混乱してたと思う。ただ罪人たちが砦へ籠って、舞台がはっきり分かれると話の筋も分かりやすくなって、各々の思惑のズレ具合や上手くいってなさが俯瞰できていた。嫌らしく城を占拠していた同盟軍側が追い詰められた家老の狂気の沙汰にドン引きするとこや、官軍も官軍なりに一応正規の手続きを踏んで戦争しようとしてたりなど、なんか、描き方がバランスいいというか、全体的にフラットだったように思えた。悪い意味ではなく、命を燃やそうとする人はその覚悟に相応しい激しさで、格好つけたがる人は格好良く、そして死ぬ時はそうした意志も途絶えてただ痛そうに苦しそうにと、登場人物の感情に素直だった。
クライマックス手前、官軍の降伏勧告に従って罪人たちが降ろうとするのを、鷲尾が人質の息の根を止めて強引に決戦に巻き込むのは、それでよく皆を纏め上げようと思ったな(そしてよく纏まったな)って感じで本当に強引だったけど、侵略してくる相手の甘言に乗って生殺与奪の権を自ら明け渡す行為は、今のご時世的にもどうかって感じだし、難しい。あるいは、悪行と愚行の違いを描き出したのかもしれない。
というわけで面白かった。映画の華たるアクションシーンは流石の迫力で、爆薬もふんだんだから大変見応えがあって、とても楽しめた。焙烙玉の活躍シーンも、まず敵方の大砲を滅多撃ちされて圧倒的な火力差を存分に見せつけられてからの、こっちにだって負けねえ火力があるんだという見せ方がカタルシスあって良かったな。夜戦のシーンは何やってるか分かりにくかったけど。でも夜なのにナダルだけは出てきたときすぐにわかったのですごい。あの声の通りや喋り方も、時代劇だとしっくりくる。お前の主戦場はここだったんじゃないか。