11/11 『蒼穹のファフナー THE BEYOND』10,11,12話を観た
面白かった。面白かった……感無量とはこのことか、と思うほど。
最初に正直に観ていた時の素朴な所感を表明してしまうと、11話で大方の決着がついてしまったとき、「でもこっからまた何かあるんでしょ? 1期のニヒトのように……HAEの人類軍のように……EXODUSのビリーのように……!」と肩をいからせてほどなく訪れるであろう悲嘆を待ち受けていたんだけど、12話が進んでいくにつれてそれが無いのだと理解し、肩の力を抜いてゆっくりとクールダウンしながら、同時に「ああ、終わっていくんだな」と感慨をこみ上げさせていった。2004年から続いたこの長い旅路が終わる時が来たのだと。
美羽と総士がとった行動、選んだ選択は、言ってしまえばあらゆる問題の先送りでしかないようにも思える。しかしそれは、あらゆる存在が存在することを選択した結果でもあるんだよな。フェストゥムたちは地球上から消えてしまったそうだけど、もともと存在を無に還すための存在であったことを考えると、ひとまずその目的が消えて無に還っただけで、いずれまた無からひょっこり姿を現しそう。マリスたちのような例もあるし、観測できなくなっただけで本当に消滅したかも怪しい。
それに、美羽がアルタイルを用いておこなった「あらゆるものにアルタイルを分け与える」=「食べさせる」というのは、存在と無が同時に成立する……調和するってことだったんだな。芹ちゃんがEXODUSでやってたことでもあるわけだが、今更気がついた。現実的にはその「分け与える」ということが途方もなく困難だから、争いというものが生まれ、そして絶えないわけなんだけれども、そこはまあ、一時的かもだけどアルタイルがやってくれたわけだ。
マレスペロが再び力をつけて舞い戻った時、憎しみを捨てられているかっていうとそんなことはなさそうなんだけど、それでも生まれ変わった総士がかつての総士と決別し新たな己を築いたように、生まれ変わったマレスペロは己の憎しみをかつての憎しみと決別させ、違ったものに変えることができる……かもしれない。それは可能性の話でしかないし、そして可能性というならば、そこでマリス達が新たな希望となる可能性もある。
マリス……総士も言っていたが、確かに人類の中で史上もっともフェストゥムと親交を紡ぎあげた存在だった。同化されるでもなく、エレメントたちのようになるでもなく、純粋なフェストゥムと家族を作ったのだから。真のエスペラントとはお前のことを言うのかもしれない。
そしてそんなマリスだけが、美羽の犠牲をよしとする……美羽自身の選択なればこそだが……アルヴィスの人々に対し、怒ったのだ。マリスだけが怒ることができた。少なくとも総士が育つまでは。
そして総士たちを連れて島からエグゾダスしたことで、結果的には総士が成長するまで、アルタイルとの接触を遅らせた。美羽を失わせないための、およそ最適解だったんだよな……あくまで結果だけども。美羽を失わせないことに関してはであって、それ以外はいろいろとアレだけども。その為にかつての仲間からのあらゆる憎しみを一身に受け持って、そして自らも憎しみを吐き出す様は、そう……まさに、宝物を守るために竜へとその身を変じさせた巨人さながらじゃないか。
そして一騎。総士との決着で、一騎はなぜ負けたのだろうと考える。あそこで(空気読まずに)勝っちゃうという展開もそれほどなくはないんじゃないかって気がする。でも総士が戦いの中で、「教え子」としてパイロット達に叩き込まれた教えの数々を発揮し、それだけでなく一騎の「どんな力もいつかは無に還る」という言葉すら己のものとしているのを見て、この力は無に還すのではなく受け継いでいって貰おうと考えたのかな。ま、断られちゃったんだけども。
最後、真矢とのやりとりはまた、何とも……お互いに相手のことは大切にしつつ、自分と相手のことを最後まで後回しにしていたが故の。なんとも。でもだからこそシーンのラストを飾ることができたとも言えるしな。「一緒に行くか?」と差し伸べられた手を、握って返せば共に旅立つことになるが、手は取らず裾を掴むことで、また勝手にいなくならないよう繋ぎ止めたんじゃないかな、真矢は。見送ることはけして関係が断ち切れることではない。そのまなざしが完全な眼を取り戻した真矢のものなら尚更だ。かつて総士が一騎にそうしたように、きっと一騎も真矢のもとへ、何度でも帰ってくることだろう。な!
最後の新録「Shangri-La」がまた、ファフナーを締め括る素晴らしいラストソングになっていてとても良かった。めちゃめちゃ力強い、旅立ちを見送るにふさわしい歌。これを聴いて、いよいよ「ああ、俺もまたこれで『蒼穹のファフナー』を見送るんだ……」と切なくも清々しい気持ちを募らせた。もちろん今後新たなファフナーの物語ができないとも限らないけど、ただ、少なくとも冲方丁が描く限りにおいては、何度続こうとも何度でも同じ未来に辿り着くだろうな、と思うので、ひとまずはこれでおしまいなのだ。冲方丁以外が描くファフナーも見てみたくないではないが、それはそれだ。
ともあれ、長い長い旅路の果てにようやく故郷に帰り着いたような気分であり、それでいてこれまでにない新たな光景が眼前に広がっているようでもあり、そしてここからまた更なる旅路へ赴くであろうことをありありと想像させる、素晴らしい作品の完結を見届けさせてくれたことに精一杯の感謝を捧げたい。ありがとうございました。
※以下、観た直近で書いてた下書きメモ