9/23 『筺底のエルピス4 廃棄未来』を読んだ
面白かった。
過酷な旅路の、なんと悲痛な末路であることか。結局のところ「すべてを取り戻せる」なんて希望は幻想でしかなかったということなのか。たしかに”世界”はやり直すことができたが、それは一つの最悪の未来と、それを背負うことになった一人の少女を犠牲として、未来の延命を計るということだったのだ。今回の捨環戦によって黒鬼に対処するための手がかりを得られたという事実が皮肉にもそれを物語っている。世界は「やり直し」になったのではなく、明確に一歩「前進」しているのだ。螺旋する世界。堂々巡りを繰り返しつつ前に進んでいくということは、逆説的に、再び同じ場所に立ったとしても、元通りになるなんてことは不可能ということでもあった。そして叶は、圭や結たち――我々(読者)が1~3巻で見てきた彼らは、その螺旋の犠牲と……よくいえば礎となったのだ。そう、やっぱり、これまで俺が読んできた彼らは”ここ”で死んでしまったのだ、という思いが読後、しくしくと湧いてくる。もちろん最後に現れた往時の彼らも、2巻あたりまで読んできた彼らであることには違いないのだけど。それほどに、この辛い旅路を歩んだ叶に感情移入してしまっていた。絶望に染まった未来を切り捨てて、空っぽの筺だけが残った世界が迎える明日はどっちだ。
あと、今巻で明かされるきょうがくのインターネットしんじつ……これ、毎巻ひとつはこういうの出す決まりなんでしょうか。次巻のそれもまた楽しみです。