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縫製現場で学んだこと

こんにちは!

自己紹介と称した「自伝」で少々脱線してました「Studio di Felice」主宰の坂元です。
今日は縫製工場さんについて少々真面目なお話を、、、

1.入社間もない頃

私が24歳の春、専門学校を卒業し「好き」を仕事に出来、毎日心を躍らせながら会社に足を運び、半年も過ぎた頃より簡単なアイテムから品番を持たせてもらうようになり、工場さんとのやり取りも少しずつですが電話でする様になりました。

やり取りと言っても仕様書の書き間違いや、遅れてる資材の入荷状況の連絡等で大した内容は有りませんが、、、

そんな中でも、工場さんからサンプルが上がってくると、一緒にパターンも返却されてきます。
最初は、返却されたパターンを見ることは無かったのですが、ある日何の気無しに返却パターンを広げてみると、合標の追加や移動、パターンに修正が加えられてたり、、、
(私が勤めていた会社では縫い代や裏地の展開等は全て工場さんに任せるルールでした)

それを見てからは、返却されるパターンを毎回必ず広げて確認するようにしていると、工場さんごとに合標の付け方や、展開の方法が異なっている事に気がつき、気になるたびに工場さんに電話で理由を確認する様になり、色々教えて頂きました。

2.いざ工場へ

少しずつでは有りましたが、専門学校で習った縫い代の付け方とは違う「工業・産業パターン」と言うものに慣れ始めた頃、今度は縫製工程に興味が湧いて来ました。
もともと縫製が好きだったということもあり、どうしても自分の目で現場を確認したいと上司に申し出て、先ずはボトム工場さんに連れて行って貰いました。

初めて足を踏み入れる工場さんはミシンの音で会話もままならない程せわしなく、そしてオペレーターさんは訪れた私達に振り向く事なくミシンに向かわれていました。
一通り、ラインを拝見させて頂いたのちパターン室へ案内頂き、様々な理由から必要なゆとりや展開の説明を受けながら縫い代の付け方を目の前で見せて頂きました。その理由はどれも納得がいくものであり、また必要不可欠と思えることばかりでした。
学生の頃は、洋服を作るのが楽しくって課題を含め50着以上は作ったと思いますが、そのレベルの違いにワクワクしたのを今でも覚えています。

担当の方が優しい口調でいろいろと丁寧に教えてくださったのですが最後にこう仰られました。

「パタンナーさんがなかなかお見えになることが無いんです。
 現場を見に来て頂いて、何か問題が有ればその場で一緒に解決方法を考えられ
 のに」と

この言葉にはとても重みと、沢山のヒントがあるのにもったいないと新人ながらも、その時はただ頷いてお話しを伺うだけでした。

3.工場巡りの始まり

一年後、私は新ブランドに移動し、そこでシルエットパターンやベースパターンも任せてもらえるようになり、担当ブランドのデザイナーとの朝の打ち合わせでは毎日のようにディスカッション!
周りのスタッフからは「またケンカがはじまった💦」と思われながらも、お昼ご飯は同席、帰りにはよく呑みに行っていましたので、不思議な関係に映っていたようです。
当の本人達は良い洋服を作るための「意見のぶつかり合い」との認識でしたが、確かに大声で相手の意見を抑えようとする場面もあり、若気のいたりというか、はい、相手の意見を聞き入れる余裕が無かったのも知れません。
互いの言葉として発せられた、例えば「赤」といっても色んな「赤」があります「イタリアンレッド」「朱赤」「マゼンタ」など呼び名含めて多岐に渡ります。

その互いのニュアンスを掴むために、本当に色々相手を知ろうとしてました。
仕事帰りの食事では、私が「串カツ」や「お好み焼き」などに誘うのに対し、デザイナーはフランス留学の経験の持ち主。
お洒落なお店を紹介して貰いながらお互いの言わんとすることが分かるようなり、数年後には「このデザインは彼に担当してもらえないのなら、出しません」とまで言って頂ける様になりました。
もちろん、初対面でもいきなり意気投合!息が合う事もあるでしょうが、私にはとても良い経験をさせて頂きました。

この様な日常から
「ここまで打ち合わせをして出来上がったパターンをイメージ通りに仕上げるには?」と考えた末に出て来た方法!

自分で縫ったトワルを工場さんに見てもらって仕上がりイメージを先に見てもらおう作戦‼︎

こうして、当時まだつたない縫製技術なりに自分で縫ったトワルを添えてパターンを工場さんに職出しをし、裁断が終わり、縫製に掛かるタイミングで工場さんに寄らせてもらうスタイルが始まりました!

4.工場さんにて打ち合わせで改めて気づいた事

初めての工場さんでの打ち合わせでは、私が縫ったジャケットのトワルを見て頂き、仕上がりイメージを伝える事が目的だったのですが、工場さんから
「パターンの事はよくわからないのですが、ここは何故こういうラインになるのですか?」
「だから、こう言うパターンになっているんですね!」などパターンに対する質問が、、、
そして
「この生地でしたら、ここに補型のために芯を貼りましょうか」
「ここのラインはイセるとこんな風に変化しますので、少しラインを直しましょうか」
と、色々改善アイデアを出してくださり、私が思っている以上にイメージがハッキリとこ、そして更に良くなっていくのを実感しました。

工場さんは「パターンの意味や理屈を求めてる」
私には「イメージ通りに仕上げる縫製ノウハウが必要!」ここで、仕事として大切な事を改めて気付きました。

デザイナーもパターン、縫製、ノウハウを!
パタンナーもデザンイメージを汲み取る感性、そして形にする縫製ノウハウを!
工場さんも同じくイメージを掴む感性とそれを支えるパターンノウハウを!
※もちろん素材や染色、付属、その他に関する知識も必要不可欠です。

考えてみれば当たり前の事です。
本来、同じイメージの洋服を作るために、仕事として結果的に分業となっているだけですから。
私も含めて専門学校等を卒業して、それぞれのポジションに着くとそれぞれが「専門職」となり、目の前の仕事の比重が大きくなり、そのバランスが傾いてしまい、リレーションの難しさに、、、

例えてみれば、お医者さんはどの専門医になるにしても「医学」という全般をしっかりと身につけ、その後にそれぞれの「専門医」となるわけで、専門医になったとたんに自分の専門分野以外をないがしろには出来ません。
もしそんなお医者さんがいたら怖くて掛かれないですよね💦
認識としては「医学」の中に細分化された「担当分野」が存在し、やはり人の身体、医学を熟知しつづける上での分担だと思います。

「服を作る」目的が同じでもデザイン、パターン、縫製とそれぞれの工程でもちろん得手不得手があり、もっとも得意なポジションを選んで仕事にする事も有ると思います
また選んだポジションの中においても得手不得手も有ると思います。
しかし、上手に出来るか、好きかどうかは別として、その他の知識のアップデートを行う、情報収集することも重要に思います。

この、初めての工場さんでの打ち合わせではデザイナーからのイメージを伝えると言う目的以上の収穫があり、その後の私のデザイナー志望から、モデリストへと傾倒していく大きなきっかけとなりました。

ちなみにこの時のジャケット工場さんでは、学生の頃に習った「どんでん返し」とは違う上衿を先に作って、後から身頃とドッキングする工程を初めて見せて頂いたのに1番驚きました。

5.モデリストとしての土台

それからと言うもの、パターンを引く時は工場さん目線で
・合標のタイミング
・縫製工程を考えて縫い代の付け方
・パターンとしての理屈は同寸だろうけれど、縫製を考えると、ここには寸法が
 必要etc...
などを考え、出来るだけトワルはミシンで組み立て、時には実際の生地で付属も本番同様のものを使い検証を繰り返しながら、気になることは事前に工場さんに連絡を入れ、コミュニケーションを取る様に心がけていました。
そして、最も苦手だった素材に関する知識を克服する為にも
「繊維製品品質管理士TES」を取得するに至りました。
特にウール素材の「ハイグラルエキスパンション(簡単に言うと湿度による伸び縮みの寸法変化)」への対応に大いに役立ちました。
また、素材により、ミシン針の選定やアイロン温度の設定等素材毎の細かな検証、縫製注意事項を添えて工場さんへ連絡をするポジションにつくようになり、
キャリアを重ねる毎に(要は歳をくったと言う事ですが💦)パターンに対する知識や技術、そしてそれを基に洋服として再現するノウハウが蓄積され、次第に工場さんから縫製や素材、時には純然たるパタンメイキングの相談を受ける機会が増えて来ました。

担当していたブランドが高級ゾーンという事も有り、例えばレディスのパンツでも「クセ取り」をして頂ける環境にあり、ボトムを担当して頂いていた協力工場は全て寄せて頂き、その説明をさせて頂きました。
「パターンはその為にこの寸法バランスになっています。また、そのためには、このタイミングでのアイロン工程が大切になります」と
時には、仕上がったサンプルを着用して頂き、その効果を実感して頂きました。

ジャケット工場さんでは、主にアームホールのテープの貼り方をパターン設計を交えて説明させて頂き、仕上がり具合をそれまでの貼り方と見比べて頂くと、その差は歴然としたものとなり、同じパターンでも仕上がりに差が出る事を確認して頂けました。

この時、私の耳に入っている範囲では「工賃交渉」は有りませんでした。
恐らく、仕上げのタイミングでの手直し時間の削減や他メーカーさんに対してもアピールポイントとしてメリット感じて下さったのかもしれません。
もっとも、事前に工賃が上がらない様に最初から最後までの工程を見せて頂き、相談の上で、ロスが出る工程を見直し、ピッチタイムを大切な工程に回して頂いたので、お互いにメリットはあった様に思います。

もちろん、工賃最優先がテーマとして工場さんに寄らせて頂き、現場で出来る最小限の工夫で、最大限の事もあります。
例えば、左右で肩縫い代のアイロンの入れる方向を揃える為にアイロン馬の使い方を工夫したり、後中心線の縫い割り方向をネック側から入れてもらう為に、ただ仕掛りパーツの置き方を逆にして頂いたり、パッカリングを見つけやすくする為に、真上につけていた蛍光灯を消して頂いたり、、、

本当に、現場を見せて頂き、問題点の共通認識をすることにより、全てではありませんが解決出来る事もあると思います。




こうして、私はパタンナーというポジションでありながらも、幸いにも色んな工場さんの現場を数多く見せて頂き、モデリストとしての土台を工場さんから築かせて頂きました。

今、皆さんご存知のようにアパレルはとても厳しい状況です。
その中でも、工場さんはコロナ前からも海外生産とコストの比較から仕事が減り、とても厳しい状況を目の当たりにして来ました。

また、これは私のとても希望的な私見が含まれますが、工場さんがこれから導入するにあたっては色々と課題はあると思いますが直接デザイン画から
「パタンメイキング」
の機能を持つと新しいポジションを確立出来るチャンスなのではと感じています。

メーカーも経費削減など、色々な課題は有ると思いますが、縫製現場に行けなくても、今はzoom等オンラインでの環境も整っています。
それを利用すれば、パタンナーの方も昔の私の様に移動時間、交通費をさほど気にすることなく、また人数も気にすることなく打ち合わせ、そして情報交換が出来ると思います。



コロナ禍で良くない条件や環境では有りますが、少しでも解決の糸口が見つかる事を願ってやみません。
微力ながら、私自身も業界、パタンナーさん、工場さんのお役に立てる様に精進、結果を出して行きたいと思います。


今回も最後までお読みくださり、ありがとうございました。
写真は、道端に咲いていた名前の知らない花ですが、力強く且つ可憐に咲いていました。
そして、雨上がりの澄み渡った青空に映える雲です。
この後、雲は流れて行き真っ青な青空が残りました🌱

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