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モデリスト、パタンナーの行方。

これからアパレルは何処に向かっていくのでしょう?パタンナーのツールに関しては鉛筆→シャーペン→CADと進化して来ました。私は勤めていた会社が約25〜6年くらい前にハンドからCADに移行する頃に工場との橋渡しの仕事が中心となり、CADを習得するのに大幅に出遅れましたが、ようやく去年からIllustratorに ipmさんのプラグインソフトを入れてパタンメイキングに取り掛かりだしたモデリスタです。

★お知らせ★
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お陰様で総閲覧が13.000ビューに迫る勢いです。

Studio di Feliceを立ち上げて4年目に入り、レッスンご予約も増え少しずつ私の発信が皆様へ届く事が多くなって来たように感じています。
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その昔は

私が働き出した頃、20歳以上も年上でバリバリにお仕事をされていたチーフパタンナーはその昔、工場さん用の仕様書はカーボン紙を敷いて写していたそうです。そして、パターンを引くときは「えんぴつ」です。当然「えんぴつ」の先がチビて来ると線の太さは不揃いに、、、それでも成り立っていたとのことで「シャープペンシル」成るものが出て来たときは感動されたとおっしゃっていました。

ツールの進化

私が洋服の世界に足を踏み入れたのは今から37年前になります。パターンを引くときはもちろん「シャープペンシル」でしたが、私が通ってた専門学校のミシンは「足踏みミシン」でした。中々慣れずにタイミングがずれると「バック」してたので、居残りで特訓を受けた記憶が、、、

それが今じゃ「Android」内臓でスマホでミシン調子、設定が出来るようになりました。そこにはベテランの勘どころは必要が無くなりました。昔はメンテナンス担当の人が一台一台調子を整えていたというのに。

パタンメイキングにおいては「シャープペンシル」が「CAD=computer aided design コンピュータ支援設計」へ、そして3D CADへと進化しました。私は出来上がりの画面を観た程度ですが、生地や製図の情報を入力して作図し画面内の3Dボディ(アバター)に着せつけて画面上で試着、修正までできる様です。しかも、かなりリアルな画像でドレープやシワ、引きつれ等の再現性も高そうでした。

そこで気になっていた官能的な「着心地」に関しても事前に衣服が身体に与える圧力分布も予測されるとのこと。ここまで来たらもう、ボディやシーチング、そして、製図に必要な道具や場所をとるパターン台など必要ありません。極端な話サンプルも必要が無くなる可能性もあります。

これは時間的、そしてコスト面でとてつも無いメリットをもたらします。しかし、私は疑問が一つ残ります。それは「誰が使いこなせるのか」です。

誰が使いこなせるのか

なぜ、そう思うのか。例えば熟練した紳士服の技術者であっても一人一人違う体型の方に設計段階で工夫を凝らし、仮縫いも幾度となく行われ、少しずつ完成に近づけていく訳です。人の身体の各所を事細かく数百、数千箇所ビッグデーターとして取り入れたとしてもそれらを「どう活用するのか」です。

私はパタンメイキングをする時にそれほど多くのデーターを必要とはしていませんが「姿勢」はチェックします。ひょっとしたら3D CADではそこら辺のデーターを数値化、具現化されるのでしたらかなり有効ではありますが、そこには「観察する目」を養う事が必要であり、3D CADで導き出された「数値、形状の良し悪しの判断力」も求められて来ます。CADはあくまでツールですから使うことはあっても「使われる」ことになっては本末転倒になります。本来ハンドであってもCADより劣る訳でもありません。

CADのメリット・デメリット

先ず、メリットは「正確さ」です。とくに直線や水平垂直、そして直角等は限りなく「正確」ではなく、その誤差は「ゼロ」です。そして「スピード」これは圧倒的に優れています。線のコピーや反転等、延長、カットなど瞬時に行われます。またパターンの保管場所に困らない、検索がスムーズと、データーのやり取りが有利という事が挙げられます。

では、デメリットはと言うと、停電したら使えない。これ、実際に私が勤めていた会社での出来事で、電気が復旧するまでの約半日パタンナーは何も出来ませんでした。その時私はCADではなくハンドでパタンメイキングをしていましたので、窓際の机に移動して仕事を続けられました。次にこれはメリットが災いしているのですが、「イセ」などではせいぜい小数点第一位までの意識ですが、正確すぎて小数点第二の位まで合わそうとしてしまうようです。生地の裁断もCAMで行われて正確に出来る様に思いますが、生地そのものが湿度等により伸び縮みも有りますし、そもそも縫製時に正直小数点第二位までの精度を求めるのは現実的ではない様に思います。

CADはえんぴつの進化形に様々な便利な機能が付加されたツールですから、ハンドに比べてパタンメイキングとしての正確さ以外の優劣ではありません。その、優劣はオペレーションを行うモデリストやパタンナーの質によるということになります。

ドレイピングについて

洋服のパターンをおこすもう一つのアプローチとして「ドレイピング」があります。これはボディ(人台)に直接シーチング(場合により、実際の生地を使うこともあります)の地の目を確認しながらドレスピンでとめつて型を作り、パターンを起こす手法です。

ドレイピングには高度な技術が必要とされますが、ビジュアルとして手を動かすとたちまち形が出来上がって来ますので、パタンメイキング同様に良し悪しを見抜く目を養わないと非常に危険を伴う技法になります。そして、ドレイピングにおいても最終的にはパターンにする必要がある為、ドレイピング技術同等、もしくはそれ以上のパタンメイキングとしての整合性が求められます。

パタンメイキングとドレイピングもどちらが高度とか優劣はなく、アプローチの違いです。パタンメイキングの時は頭の中で出来上がりをイメージし、ドレイピングの時はパタンに落とした時の整合性を考えながらになります。

私は、パタンメイキングでイメージが掴みにくい時にドレイピングを用いることが多いです。ドレイピングにおいての進化はツールとしてのものはボディ(人台)でしょうか。時代や目的に合わせて昔よりも種類が増え選択肢が広がった様に思います。

人の進化

では、人はどうでしょうか。

正直なところ、それらのツール程進化はしていないというか、逆にそれらツールに助けられることにより、鈍って来ているところもあるかも知れません。ミシンに関しては自動化されることにより、自身で調整する必要がなくなり、誰が縫っても均一に近づきます。CADであれば「スムージング」でラインが不自然なく繋がる様になりそこに「意思」や「感性」が反映されているのか、、、短縮された時間や経費をどの様に有効に利用して来たのか。

もう、お気づきだと思いますが、ツールが進化するにつれ、それまで人の「経験や感性」というものが均一化、スピードアップされ、ビッグデーター、AIと言うものに人がとって代わられる時代です。ツールの効果に期待する事はもちろんですが、それと共に自身の思考スピードアップ、判断力の強化も同時進行だったように思います。


これからの行方

これは私見ですが、量産工場の拠点が海外にシフトしはじめた頃からジワジワと起こっていたと思います。海外生産はもちろん工賃が抑えられることから盛んになりました。その為に日本から技術者を派遣して教育をして来ました。コスト削減とトレードオフに技術の流出です。そして、国内工場が少しずつ縮小または廃業に追い込まれていき、技術の継承が困難になって来ました。今では、デザインさえ出せばパタンメイキングまで含めて海外で行われる様になって来ています。

海外生産、コスト削減目的での進化を否定している訳では有りません。

私は、国内で、ましてや社内スタッフのデザイナーとパタンナーですら全てでは有りませんが、中々イメージが伝わらない、掴めない。同様に工場にも伝わらないとの声を聞いて来ました。


そのような中で、何が突破口になるのか。

かなり広義になりますが私は「優しさ」と「思いやり」だと考えています。

昔は仮縫いの時は生身の人にシーチングを着せつけて、ドレスピンを人に向けて打っていました。私も経験が有りますが「ピンで傷つけない様に」「緊張させないように」そのような状況の中で言葉を選んで会話を交わし、相手の緊張を解きながら、言葉にしなくても気にされてるであろう部位のフォロー。着心地の確認や相手からは見えない後ろ姿のチェックなどをこなしていました。

そこには、人と人の「優しさ」と「思いやり」が互いに交錯しながら進められます。この経験があると、着せ付けるのがボディ(人台)に代わってもボディ(人台)の取り扱いが丁寧になります。そうして出来上がったパターンを工場に送り出す時も大切に送り出します。

以前、イタリアから来られたモデリストに仕事でどんな所に気をつけていますかと質問をしたことがあります。そのお返事は

「私はパターンを我が子を預ける気持ちで丁寧に工場へ送り出します」と

これを聞いたときに心が震えました。これは洋服文化の歴史の違いではなく、仕事を通して「優しさと思いやり」のバトンを渡しているのだと。

これは、デザイナーからパタンナー、そして工場へ、そして、最終的にお客様へと「優しさと思いやり」をどれだけ送り届けられるかが突破口になると考えています。

そうです「優しさと思いやり」のアップデートです。

進化したツールを使いこなす為には、オペレーションを覚える以上に見ているのが画面、アバターだとしてもその向こうに生身の人がいる事をどれだけリアルにイメージ出来るか、たとえアバター相手に仮縫いをしていても、着心地や好みを「思いやりと優しさ」を通してどれだけ組み込めるのか。ある意味「自然回帰」であり、それが正常進化として、これから求められるモデリスト、パタンナーの行方のように思います。

今回は、長文になりましたが、最後までお読み頂きありがとうございました。次回は技術をアップしたいと思います。


写真は時期が来て花が咲くのをじっと待っている「サクランボ」の蕾です。花を咲かせた後は可愛らしいサクランボの実を付けてくれます。

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