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雑記 金融初心者が財務モデルを作れるようになるまでにやったこと

仕事が落ち着いたので雑記です。

転職活動などで、「財務モデリングができます」と言えるレベルになるまでの流れを紹介します。

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教科書的勉強1|会計

まず、決算書が読めないとモデリングどころではありません。とっかかりとして、決算書の読み方の本を探すことになるでしょう。

よくある失敗例は、ここで会計にのめりこんで、簿記1級の受験を検討してしまうパターンです。

実務家の多くは簿記の資格は持っていませんし、簿記をやったらモデルが作れるようになるというのは誤解です。

簿記は決算書を作るまでのプロセスであり、モデリングは完成した決算書に基づいて行う分析です。

教科書的勉強2|企業価値評価

決算書の概要がわかったら、企業価値評価の勉強をします。

たいてい、初心者は調子に乗って難しめの本を買うので、下のどちらかの本を持っている人が多いと思います。

99%の人は、読み終えないままホコリをかぶせていることでしょう。

私のような残り1%の人は、読み終えた後に「この本を読んでもモデルは作れないんじゃないか?」と気づきます。

いずれにせよ、初心者はモデルを作りたくてうずうずしているので、理論については半端な理解のまま、モデルの練習をはじめます。それでよいと思います。

教科書的勉強3|財務モデル

書籍が限られているので、頼れるのはもっぱらGoogle検索です。

しかし、ネット上には、実務経験のない若手会計士や、ビジネススクールに行っただけ人たちが自慢げに書いた、なんちゃってモデリング講座がはびこっています。

しかも、金融専門職の人と比べるとSEOがうまかったりして、Google検索では彼らのサイトが優先的に表示されます。

初心者の多くは、ここで大量の間違った知識をインプットしてしまうのです。

インプットした知識が間違っていたことに気づくのは、少し先のお話。

参考になる書籍も限られています。簡単なモデルサンプルが記載されているのは下くらいです。

英語では、下の書籍がバイブルです。外資系IBDのフロアに行くと、新入社員のデスクに高確率でおいてあります。

入社後に先輩社員に聞いてみると、高確率で持っており、貸してくれるという代物です。

ただし、分厚い英語の本なので、読んでいる人はほとんどいません。

私も、入社1か月目のころはこの本をデスクに置いていましたが、読んだのは最初の20ページくらいだけです。

実践的勉強1|財務モデリング 準備編

会計の本を初めて手にしたときから、すでに3か月くらい経っていると思います。

ようやく財務モデリングの練習に移りますが、過去の決算データがないんですね。

決算書をエクセル化する方法を必死に調べたうえで、最終的には、手作業で入力するしかないことに気づきます。

日立製作所やアサヒグループは、決算情報をエクセルで開示しています。この2社を練習に使う人が多いと思います。

実践的勉強2|財務モデリング 実践編

決算書の入力が終わったら、実際に3表のモデルを作っていきます。

ネット上で見つけた解説をもとに、数式を入力します。

しかし、どうもうまくいかないんですね。

それもそのはず、今まで見てきたサイトが間違っているからです。


よくつまずくポイント
運転資本の計算方法はどれが正しいの?
自己資本と純資産の違いは結局何だったの?
負債の返済スケジュールってどこかに書いてあるの?
D/Eレシオって時価で計算するの?非上場だとどうするの?
「ベータ 取得方法」検索
最適資本構成ってなんだよ、、、

モデルの勉強を始めた人の9割くらいは、ここで脱落します。

突破できる人は、よほど根気強かったか、たまたま教えてくれる実務家がいたか、の2択です。私は後者でした。

実務家の知り合いなんていねえよという方は、私にご連絡ください。

少なくとも現段階では、無料で相談を受け付けています。

実践的勉強3|財務モデリング 確認編

四苦八苦しながらモデルを作り、ようやく完成したら、専門職の知人に相談します。

これでいいですか?
ここはあいまいですが合ってますか?

と聞くと、だいたい間違っているので、修正していきます。

この繰り返しで、少しずつモデルを作れるようになります。

感覚ですが、5社分ほどモデルを作ってみると、ようやく全体感が理解できると思います。

実務経験1|見習い新入社員

モデルの全体像を理解するだけでも長い道のりでしたから、実務で通用するレベルのモデルを新入社員が作れるということは、まずありません。

私の場合は、かなり勉強していたこともあって、ある程度モデルを作成することはできました。ただ、最初からそう評価してもらうのは難しいと言えます。

新入社員は、すでにモデルを作れる社員の見習いとして、モデリング業務に加わります。

グラフを作るだけだったり、計算結果を表にまとめたり、そういう下働き的な業務に専念します。

この作業がきちんとできていると、「エクセルはちゃんと使えるんだね?」という評価になったりして、少しずつ任せてもらえる作業が増えます。

モデル自体の数値をアップデートしたりする作業をしながら、モデリング実務に関与し始めます。

実務経験2|世界最高のお手本

さて、モデルの学習で一番大変だったのは、ネットの情報が間違っていることでした。

実務の世界に入ると、状況は一変します。正しくて、実践的で、最先端で、世界最高のお手本である過去案件のモデルにアクセスできるようになります。

独学で勉強していても、ある程度のモデルは組めるようになりますが、自信を持って「モデルを組めます」と言うのは難しいと思います。

実際に使われたモデルと自分で作ったモデルを見比べてみて、同等のものが作れていることを確認することで、自信を持って「モデルを作れる」と言えるようになると思います。

逆に言えば、金融機関に勤務するだけでできるようになるわけではありません。自分で練習をしてはじめて、モデルが作れるようになります。このため、現役の社員であっても、練習をしていない人はちゃんとモデルを作れません。

世の中には、有料のモデルサンプルもあるようですが、高額なようですし、せいぜい1桁個しか手に入らないので、独学に使うのは効率的ではないと思います。

実務経験3|モデルを使って議論する

勉強中の目的は、財務モデルを作ることだったと思います。

しかし、実務での目的は、「財務モデルを使って議論すること」や「算定結果を踏まえて、入札価格を決めること」になります。

いままで漠然と作ってきた数値に対して、いろんな注文が付きます。イメージとしては以下のとおりです。

「売上高が1%下がると、価値はいくら下がるの?」
「利益率が改善しないパターンも作ってみて」
「お客さんがさ、この設備投資じゃ足りないって言ってるんだよね」
「入札予定の1,000億円をサポートできそう?」
「売り手は800億って言ってるけど、どういう前提なら800になる?」

最初のうちは、これらの指摘を反映する先輩社員を見ながら学びます。

徐々に、修正を手伝わせてもらえるようになり、最後には自ら議論に参加できるようになります。

ここまで来て、ようやくモデリング実務を経験したといえます。

習得するためにすべきこと

さて、財務モデリングの学習の流れは、以下のとおりでした。

1. 会計の基礎知識をつける
2. 企業価値評価の基礎知識をつける
3. モデリングについて調べる
4. 決算書のエクセル化作業をして
5. 実際にモデルを作ってみる
6. 正しいモデルを見ながら練習する
7. 実務を通してモデルを使ってみる

金融専門職でもなければ、5までやれば十分なんですね。

モデルを作れるようにするというより、モデルの勉強を通じて、企業の業績の仕組みや重要な財務指標が何かを理解できれば良いのです。

そして、一番ハードルが高いのは3です。

なにせ、間違った情報が多すぎるのです。もし、本気で財務モデリングを習得したいのなら、実務経験のある人に相談するしかないでしょう。

実務家のレベル

すべての実務家が、モデリングスキルを持っているというのは誤解です。

上の6をちゃんとやっている人は、外資系の金融機関でも3人に1人もいないように思います。また、実務でちゃんとモデリングを行うのは、M&Aの案件のみです。

たまたま債券発行の案件ばかりに入っているという人は、3年働いていてもモデルは作れないというケースもあります。

日系金融機関などでは、必要な公式も覚えておらず、過去資料などをコピペしながら、だましだましモデルを作っているという人もいるようです。

もし、5までちゃんとできたなら、意外と実務家に近いレベルになっているかもしれませんね。

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