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ブラッディメアリー #4
「な、なんだって!」
僕は女を見上げた。
女は言葉を続ける。
「そもそも整形というものはですね・・医療技術などを施して顔や体を理想の形に整えることですが・・・」
「そんな話はいいっ!さっきの発言はなんなんですかっ、一体!!」
僕はイラついていた。
僕としたことが・・・
声を荒げてしまった。
女は一瞬びくっとしたが、気を取り直したのか静かに話を続けた。
「おお、こわっ!やっぱり当たってたんだ、私の勘・・・おっと、そうそうサイキックだったわね、私。」
は?
は?
は?
「ははははははははははは!」
またかよ、こいつ・・・。
またかつがれたのか。
「嘘です、それは・・・。実はワタクシ、占い師なので~すっ!うふふ。」
女は本当に心から嬉しそうにはしゃいでみせた。
「でっ?その占い師さんが、僕がこの町に何しに来たかを何故占う?何故勝手に占ってるんだよっ!!」
僕は上気した顔を女に向けていたと思う。
よく漫画などで見かける顔が真っ赤っ赤、まっかっか・・・である。
額にはこんなマーク💢
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までついているような・・・。
「それはね・・・うふっ。ぐふふふふ。」
だからなんだよ!
気持ち悪いんですけどっ?
「貴方にね・・・恋をしちゃったからなの~。ぐふふふふ。」
なんだ、そりゃ。
なんて陳腐な展開。
なんてお決まりの・・・。
なんでこんな場所でこんな白髪の変な女に告られなきゃいけなんだよっ、僕は!!!
「あの~、お気持ちは有難いのですが・・・僕には将来を決めた女性がいるんです。ですから・・・」と言いかけた時、女はキッとした表情で、こう言った。
「あら~ん?フィアンセがいらっしゃるの~?へー。だったら連れていらっしゃいな、ここへ。フツウ、こんなローカルな何にもない場所に、貴方みたいななんだか小難しそうなお仕事をされてそうなナリの人、出張でもないでしょうに・・・。何しに来たの?こんな所に?だけどよかったぁ~。貴方がゲイではなくて。女が相手なら私にもまだ望みがあるわ!!」
はぁ~?
こいつ、おかしい。
バカだ。
頭悪い。
頭悪い。
やっぱり変な奴!
だが待てよ。
この女が言っていること、正しいこともある。
人のことをよく見ているな。
この観察眼はなんだ?
小難しそうなお仕事・・・
そう、僕は小難しそうな・・・
いや、小難しい仕事に就いている。
これは紛れもない事実だ。
占いか・・・
興味はないが、今ここでこうしていても彼女の行方は何の手がかりもない。
このまま帰っても無駄な時間をやり過ごすのに苦労する。
そうだ!かつがれてやろうじゃないか・・・。
ヒマつぶしにもってこいだ。
「おネーさん!」
と、声をかけて、僕は思った。
適当な呼び方が見当たらなかったのだな・・と確認した。
「あの、せっかくですからその占いとやらをして頂けませんか?」
「えーーー!どうしよっかなー!」
は?
おいおい、気分でやるやらないの商売かよ、占い師って・・・。
もったいつけられてるよ、僕。
なんだ、この女?
また僕の額にはこのマーク💢
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女はペタペタとビリケンシュトックの「健康サンダル」の音を立ててカウンターから出てきた。
「OK!じゃあ始めるよ。目をつぶって。私がいいと言うまで目を開けないで!」
僕は素直に目を閉じた。
「?」
僕の唇に何か柔らかいものが触れた。
明らかにアレだ。
アレ・・・。
女の唇が僕の唇に触れたのだ。
KISS・・・
ぎょっとして僕は椅子から転げ落ちた。
女は言った。
「いや~ん!まだ目を開けちゃダメでしょ!!私がいいと言うまで開けないでって言ったじゃん!」
「だ、だって・・・。」
「あ~あ、これじゃ、接吻じゃん!」
接吻ーーーー?
せっぷん?
さっきの「フィアンセ」という言い方もそうだが、この女、いつの時代に生まれた?
明らかに動揺している僕に女は言った。
「わかったよ。アンタの捜している女性のこと。」
え?
「やっぱり整形しているよ。」
「それはさっき聞きましたが?冗談ではなかったのですか?」
「だからぁ~、それは~。」
もう、いい。
イライラがMAXに到達しそうになる僕を女は鼻で「ふん」と笑った。
「人の話を最後まで聞けよ!この頭でっかち!」
おやおや、こいつ、元ヤンかよ・・・。
言葉遣いが悪いな。
「今、女のくせに言葉遣いが悪いなって思ったでしょ?」
え?
もしかして、この女、本物ーーー?
人の心とか?
読めるのか?
いや・・・サイキックの定義ってそもそも何だっけ?
頭を整理しよう。
冷静になるんだ・・・。
女は冷たくこうつぶやいた。
「アンタのそういうところが彼女に逃げられた原因なのよっ!」