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ブラッディメアリー #5
「えっ?もう一度お願いします・・・。」
女は言った。
「占いのお金はいりません。私は商売でみているわけではありません。私はお金をとってみてはいけないと神様にそう命じられている者です。私が占いをし、一度でも人からお金を戴いた時は私のこの能力は失われてしまうのです。このことは私に与えられた何かの使命・・・それはまだ自分でもよくわかっていないのですが、そのためにここにいるのです。」
僕ははっとした。
今さっき、この女に唇を奪われ、その後不愉快になって「お代はいくらですか?」と言い、さっさとこの店を出て行きたくなったからだ。
昨日からのこの女との会話を反芻しながら気づいたことがある。
それは占いを信じたわけではない。
この女は何かの目的で僕の彼女をかくまっている。
居場所を知っている。
そういう仮説を立ててみた。
なぜならこの女との会話の中には「僕を完全に試そうとしている」ふしがあるからだ。
そして、この女はおそらく・・どこかで何かの訓練を常に積んできたような印象を受ける。
これは賭けかもしれない。
だが、僕の「男の勘」もまんざらでもないような「気がしてきた。」
そう僕の頭が整理されたら気が落ち着いてくるものだ。
今度は僕がこの女を試す番だと思った。
そして、必ずや僕の彼女を見つけ出してやる!
この女の目的は何だ?
そして「アンタのそういうところ・・・」って何だ?
僕の彼女の口から直接発せられた言葉だというのか?
お前はイタコか?
エセサイキックめ!
僕は静かにこうつぶやいた。
「占いなんて・・・全て100%本当に当たったら偶然の産物だ。あれは統計学だ。」
女は僕のこの独り言を聞き逃さなかった。
そして、寂しそうに踵を返し、バックヤードに消えていった。
きっと・・・アンニュイな様で・・・紫煙をくゆらし、むくれているのだろう。
僕の彼女とは正反対のキャラだな・・・と思った。
僕の彼女は喫煙はしない。
僕の彼女は僕にあんな物言いはしない。
僕の彼女はあんなおどろおどろしい真っ赤なルージュはひかない。
僕の彼女はあんな変な髪の色ではない。
僕の彼女はサイキックなんかじゃない。
僕の彼女は占い師なんかじゃない。
僕の彼女はこんな町で酒など作っていない。
僕の彼女は
僕の彼女は
僕の彼女は・・・・
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