新時代を迎えるペットツーリズム データで見る世界の最新動向
家族の一員としてのペットの存在感が増す中、旅行のスタイルも大きく変化している。先日も友人が自分の買っている柴犬と一緒に過ごせることを前提にいつも旅行プランを組んでいることを知ったばかりだ。
気になって調べてみたら最新の調査では、世界の旅行者の半数以上がペットと共に休暇を過ごすことを選択しているようだ。
この数字が物語るのは、単なるトレンドを超えた、私たちの生活様式の本質的な変化だと感じた。
特に興味深いのは、この変化を牽引している世代である。調査によれば、55歳から64歳の年齢層の42%がペットと旅行をしており、予想に反してベビーブーマー世代が若い世代よりもペット同伴の旅行に積極的な傾向を示している。
イギリスの事例は特に顕著だ。調査対象となった犬の飼い主の85%が、ペットを置いて海外旅行に行くより、ペットと共に国内旅行をすることを選択。この傾向は、宿泊施設の選択にも明確に表れている。実に52%の回答者が、ペット同伴可能な施設のみを検討すると回答した。
需要はさらに多様化している。27%がより多くのペットフレンドリーなホテルを求め、16%がパブでの受け入れ拡大を望み、15%が犬と入れるビーチの増加を期待している。これらの数字は、ペットと共に過ごせる場所の拡大を求める声が確実に高まっていることを示している。
米国の状況も注目に値する。年間約200万匹のペットが商業フライトを利用しており、これは全米のペット人口の約6%に相当する。航空各社は、この新しい需要に応えるべくサービスの拡充を進めている。
旅行の頻度も増加傾向にある。37%の飼い主が年に3〜5回のペット同伴旅行を計画し、さらに31%が年に6回以上の旅行を予定している。一方で、37%の飼い主がペットのために旅行を断念した経験を持つという事実は、この市場にまだ大きな成長の余地があることを示唆している。
市場規模を見ても、この傾向は明確だ。グローバルなペット旅行サービス市場は2023年時点で19.6億ドル規模に達し、2030年までに年平均9.69%の成長が予測されている。特に北米市場は37%以上のシェアを占め、最大規模を誇る。一方、アジア太平洋地域は年間成長率11.4%以上という驚異的な成長が見込まれている。
これらの変化は、単なる市場の拡大を超えた意味を持つ。ペットと共に旅をする選択の増加は、私たちの社会がより包括的で多様な家族の形を受け入れるようになっていることの表れでもある。都市計画や公共政策にも影響を与え始めており、公共スペースのペットフレンドリー化や、公共交通機関でのペット同伴の受け入れも徐々に進んでいる。
新しい旅のかたちは、私たちの価値観の変化を映し出す鏡となっている。それは単に旅行形態の変化にとどまらず、家族の概念や人と動物の関係性についての、私たちの理解の深化を示すものだ。この流れは、より包括的で多様な社会の実現に向けた、確かな一歩となるだろう。