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系譜図2023.12.ver解説回
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以前、国産対艦ミサイルの系譜図をもとにその歴史を振り返ってきましたが、あれから新しい情報も増えたため系譜図を一部作り直しました。
今回は新しく作った系譜図の補足説明用noteとなります。変更されていない部分は以前のnoteを参照してください。
潜水艦発射型誘導弾について
以前の系譜図を作成した時点では情報があまりにも少なかったため、1つだけ浮いた形で図に掲載していました。しかし、三菱重工から2023年11月に発表された防衛事業説明会資料には12式地対艦誘導弾(能力向上型)(以下12SSM-ER)との繋がりが示唆されるような書き方がなされていました。
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潜水艦の魚雷発射管から発射される関係上、17SSMや哨戒機用空対艦誘導弾と近いミサイルではないかと思っていましたが、12SSM-ERのバリエーションの一つとしてカウントできそうですね。
島嶼防衛用新対艦誘導弾のに関するあれこれ
まず、島嶼防衛用新対艦誘導弾(以下新SSM)は2018年の事前評価に「新対艦誘導弾の要素技術の研究」掲載がされ、2022年に事業が完了する予定でした。実際、2023年度の予算概要には「島嶼防衛用新対艦誘導弾の研究」として「要素技術」が取れた形で予算計上されていました。
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しかし、2023年6月に発表された「スタンド・オフ防衛能力に関する事業の進捗状況について」では、「島嶼防衛用新対艦誘導弾の『要素技術』の研究」として研究が継続していることが判明しました。その研究期間は2023年度から2027年度までとなっています。
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また、目標観測弾についても当初12SSM-ERと新SSMの双方の派生型が想定されていましたが、現時点では12SSM-ER派生型が進行しそうです。ただ、同時に「新SSMの要素技術の研究」の成果も多く反映されていると考えられるため、系譜図では一応矢印を伸ばしています。もちろん、仮に将来的に新SSMと同等の誘導弾が装備化されれば新SSM派生型の目標観測弾も開発されると思います。
将来多機能弾
2023年12月に公表された「グループビジョン2030進捗報告」には新SSMはスタンドオフミサイルである「将来多機能弾」へと繋がる見通しが示されました。
詳細は不明ですが、新SSMの研究で達成した成果をフルに活用する挑戦的なコンセプトとして設定されているように思えます。
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精密誘導弾
令和6年度概算要求に突如として出現したのが「新地対艦・地対地精密誘導弾」となります。こちらは2030年に実用試験まで完了する予定となっています。地上装置を12SSM-ERと共用化する方針からも、実用化は新SSMより早くなる可能性があるかなと思っています。
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本誘導弾は赤外線画像誘導や貫徹力を強化した弾頭によって対艦・対地の両用途で性能を向上させたミサイルのようです。
新SSMや12SSM-ERの研究成果を応用することとなっていますが情報が少なく詳細は不明です。そのため、系譜図上では上記の将来多機能弾と合わせて曖昧な書き方にしています。また新しい情報があれば更新していこうと思います。
あえて書くなら・・・
全くの推測ですが、新SSMや精密誘導弾等の将来の対艦ミサイルの技術的なつながりについて整理するとこのようになるのかなと考えています。
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新SSMは
・低RCS化
・長射程化
・赤外線画像による誘導
・高機動化
・モジュール化(弾頭・シーカー)
が特徴として挙げられていますが、その要素技術の研究で得られた成果を少しずつ具体化しているようなイメージを持っています。
上記の図はあくまでも技術的な流れのイメージ図なので、12SSM-ERの後継が精密誘導弾という意味ではないですし、実際に将来多機能弾が装備化することが確定しているわけでは無いという点は強調しておきます。
画像変更について
最後に変更した画像について出典元を下に示して本noteは終了とします。また新しい情報が判明すれば、系譜図も更新していこうと考えています。
ASM-1
mod.go.jp/asdf/airpark/GUIDE/equipment/weapon/asm1.html
ASM-2
三菱重工 | 空対艦誘導弾:93式空対艦誘導弾(ASM-2) (mhi.com)
SSM-2B
防衛省・自衛隊|平成26年版防衛白書|2 装備品取得のさらなる効率化 (mod.go.jp)
ASM-3
Wayback Machine (archive.org)
ASM-3(改)
資料2-3添付 ASM-3(改)について (mext.go.jp)
精密誘導弾
jizen_13_honbun.pdf (mod.go.jp)
将来多機能弾
khi.co.jp/ir/pdf/etc_231212-1j.pdf