自然と関わるイベント団体の立ち上げへ。森を通して新しい”視点”を届けたい(6期生:安藤さん)
「自分で事業をつくる」挑戦を始めた、北海道の高校生・大学生たち。
若者創業支援プログラム「mocteco」の集大成となるDemo Dayでは、若者たちの3ヶ月間の取り組みと、その先に見据えるビジョンを発表します。
2023年12月9日(土)に開催された『mocteco DemoDay 2023』において、「森とともにある、つくる」ことに取り組んだ6期生、安藤あかりさんの発表をご紹介します。
森が好きすぎて、猟師に弟子入りし山岳民族と暮らした休学期間
子供時代、長野県で自然と近い生活をしていました。大学で札幌に来ましたが、札幌でも自然に触れる機会が少なく、自然と切り離されていることに違和感を感じました。1年前から休学をして、地域や森をめぐるような生活をすることで、自然との関わりの中に人がいるということを探求したいと思いました。(現在は復学)
休学期間中は、森で生活している人や働いている人に会いに行きました。具体的には、長野で猟師に弟子入りしたり、フィリピンで山岳民族と一緒に暮らしたりしました。私のことを、それぐらい森が大好きな人だと思ってもらえたらと思います。
不安を感じながら生きている人に、森を通して新たな"視点"を提供したい
私はmoctecoに参加した期間で、森を通して”視点”を届けたいと思うようになりました。
私の思っている“視点”とは、例えば、人は生態系の中のひとつの存在にしかすぎないことであったり、森という生き物から感じる時間軸の長さであったり、天候・自然災害に携わっている人からみると、自分ではどうしようもないとする諦めのラインがあったりするようなことを”視点”だと考えています。
私が提供したいことは、「こうじゃないといけない」と思い込んで生きていたり、「楽しいんだけど不安がある」と思いながら生きている人に、「こういう生き方でもいいんだな」「人生をこうやって生きてみたい」という希望や新たな視点を見つけ、社会に自分で実装してみる環境や手段を提供したいと考えています。
自然と関わるイベントを開催。森と人との距離感の近さを伝えることができた
mocteco期間中、実際に長野で20代11名の参加者を集め、自然と関わる中で生きる人とDeepに関わる2泊3日のイベントを行いました。内容は、その地域の山歩きや、農家の方に教わりながら農作業、地域の方と地元のことを話しながらBBQ、参加者の発案で花火をしたり、星空を寝っ転がりながら眺め語りあったり、空き森活用法にについて考えるようなものでした。
実際にイベントをやってみて、森と人との距離感の近さを伝えることができました。都会では感じられない視点が、都会の参加者と地域からの参加者、両方から出てきました。地域との視点が交わるような空間を提供できたと思います。参加者からは、「山歩きは辛かったけど、終わってみたらめちゃめちゃ面白かった」「地域に愛着が生まれた」「イベント後もゆるやかに影響を与えてくれている」と感想を頂きました。地域の方からも「こんなことやってみたい」とお話を頂くこともできました。
一方で、参加者にとってはやはり非日常になってしまい、その人自身の人生や日常まで届けることができていないと思いました。
このイベントを経て、日常に、この非日常の”視点”を届けるにはどうすればいいかを考えるようになりました。森にいく、という手段以外にも、森を食べる観点や、森と何かをやりたい作り手たちをつくる観点があると思い、実際に動き始めています。
このmoctecoの3ヶ月間で、学問関係の方、仕事や生活で森に関わっている人、ジビエに関わっている人など、色々な方にお会いました。今後も、色々な視点から森の可能性を探るということをやっていきたいと思っています。
今後は団体化し、自治体連携へ。これからも森の可能性を探る
今後の展望として、まず、森や人の可能性を一緒にカタチにしていく仕組みを作っていきたいと思っています。今考えていることは、空き家・空き森活用です。mocteco期間では、実際に空き家にたくさん物があった場所をみんなで片付けて、泊まることができる場所をつくりました。このようなことを、空き家や空き森で行っていきたいと考えています。
また、9月に行った2泊3日のイベントをグレードアップし、森や人がもっと身近になるDeepな3泊4日を過ごすイベントを1月上旬に行おうと思っています。このイベントを行う団体を『あいきびと』という名前で団体化し、自治体との連携を考えています。
さらに、長野県だけではなく、北海道ではまた違った視点がたくさん埋まっていると考えており、森を食べること、森と何かしたい作り手をつくることを北海道でできないか模索しています。
この事業に関して、こんな可能性があるんじゃないか、こんな関わり方をしている人を知っているという人がいたら、ぜひお話を聞かせていただけたらと思います。
moctecoコーディネーターからのコメント
3ヶ月前のKickOffで、私は「3ヶ月後には安藤さんの次くらいに森を語っている人になる」という宣言をしていましたが、ちょっと違いました。
実際に3ヶ月経った今、日常の中で森を見ると、「あの森、なにか困っていないか」「あの森にはどういう問題があるんだろうか」、仕事中には「あの林業とあの技術者が出会ったら面白いことができるかもしれない」と思ったり。彼女が打ち合わせに遅れてきても「彼女は森の主観で生きているから」と寛容になっている自分に気づいたりなど、安藤さんと関わることで、森が可能性に溢れていることに気づき、日常に森を持ってくるという安藤さんの術中にハマったなと思っています(笑)。今回のmocteco期間中、安藤さんの視点を広げるという意味で、森から外れて「私、森じゃないかも」と考えるような瞬間もありましたが、結局森に帰ってくるという森大好きガールです。森って凄く可能性に溢れているんじゃないかなと思える3ヶ月間でした。皆さんも安藤さんの描く森に迷い込んでいただけたらと思います。(moctecoコーディネーター稲石さん)