mocteco 6期 DemoDay 開催報告(2023年度レポート)
はじめに
「自ら事業をつくる」挑戦を始めた、北海道の高校生・大学生5名。
若者創業支援プログラム「mocteco」の集大成となるDemo Dayでは、3ヶ月間の取り組みと、その先に見据えるビジョンを発表しました。
今回はその開催レポートをお届けします!
若者創業支援プログラム「mocteco」とは
学生と面談した際、「起業に興味はあるが、将来の選択肢には入っていない」という話をよく聞きます。
若者創業支援プログラム「mocteco(モクテコ)」は、学生の起業に対する想いを、「やってみたい」「興味がある」から、「できるかも」に切り換え、起業も選択肢の一つとなる事を目的としたプログラムです。
学生が日々感じているモヤモヤ(問題意識)、解決したい社会問題、実現したい夢を、まずは言葉にして、行動に移し、実行できるよう、起業経験者や様々な分野のプロフェッショナルがコーディネーターとして挑戦をサポートします。
Kick Offは学生たちが自分の想いやプランを発表する場。このKickOffから3ヶ月間、mocteco生ライフが始まります。そして3ヶ月後のDemoDayには、Kick Offから3ヶ月間の取り組みと、その先に見据えるビジョンを発表します。
*moctecoについて、詳しくはWEBサイトをぜひご覧ください
1.開会挨拶
(NPO法人北海道エンブリッジ 代表理事 浜中 裕之)
はじめに、moctecoを企画・運営するNPO法人北海道エンブリッジ代表理事 浜中より開会の挨拶を行いました。moctecoをスタートした経緯、今後のビジョンや、mocteco参加者へお願いしたいことについてお話ししました。
一部を抜粋してご紹介します。
「自分の土俵で挑戦してみたい」学生たちをサポート
浜中「私自身が学生起業家で、大学4年のときに「これで食べていこう」ということを決めてNPO法人を立ち上げ、今年で17年目になります。誰もが志と誇りを持って楽しみながら何かにチャレンジ できる北海道にしたいとビジョンを掲げ、地域と若者を繋ぐ事業を行なっています。
長期インターン事業などで学生たちと関わっていく中、「自分の土俵で挑戦してみたい」と言う学生たちが現れ始めました。その学生たちをサポートするために始めたのが、このmoctecoです。現在は、このmoctecoを北海道中でできないかと、各地域にコーディネーターを増やしていく取り組みをしています。
若者にアンケートをとると、「起業に興味がある」という学生は6割程いますが、起業を自分のキャリアの中に位置付けている人はほとんどいません。起業は30代〜40代になったらいずれ考える、という回答がほとんどです。
moctecoは学生のうちに、自分の興味関心でやってみたいことについて、何でもいいから100円でも売ってみよう、というところをサポートしています。考えているプランがビジネス寄りじゃなくても、自分の興味関心が誰かの役に立ったり、面白いねと言ってくれる人が見つかるところから、仕事が生まれていくと考えています。
これまで若者60名が参加。うち4人に1人が起業を選択
今期で6期目を迎えたmoctecoは、これまでに60名が参加。学生の半数が実際に売上をあげる成果を上げています(52.5%)。参加した学生のうち、10社11名が会社を立ち上げ、5名が個人事業主として事業をしています。参加した若者のうち、4人に1人くらいが起業を選択するという結果が生まれていて、自分の興味関心から自分で食べていく、という若者が年を追うごとに増えていると実感しています。
moctecoでは、起業するまでの3つのステップについてお伝えしています。
①100円でも稼ぐ
②バイトしなくても良いかも(月7〜8万稼げるようになる)
③起業が選択肢に入る(月15万〜20万以上稼げるようになる)
以上の3つです。
多くの学生はステップ①100円でも稼ぐに進む前の段階で、「どうしようかな」「興味はある」と言いつつも悩んで立ち止まってしまうことが多い。まずは、ステップ③までやってみて、はじめて起業するか迷えばよいと思います。起業が選択肢に入るまでは就職活動もして、ステップ③まで進めたところで、初めて起業にしようか就職にしようか選べる状況になったらいいんじゃないかと学生には提案しています。
DemoDay参加者へのお願い
最後に、mocteco DemoDayに来ていただいた皆さんに3つお願いがあります。
1つ目は「勇気を讃える」 です。
今日のDemoDayでプレゼンを行うmocteco生たちは、知らない人たちの前で自分のやりたいことを伝えるということです。このDemoDayに出て発表を行うだけで僕はすごいことだなと思っているので、まずはその勇気を讃えていただきたいと思います。
2つ目は「評価はしない」ことです。
mocteco生たちは①100円でも稼ぐことに挑戦し、まだ事業として立ち上がってきている時期です。 出来てないところを突っ込み始めると延々と出てきてしまうし、それを指摘してしまうのは簡単なことです。評価を下すのではなく、「ここはいいね」「ここは伸びるかも」というところを参加者皆さんで見つけて、mocteco生たちとディスカッションをしていただけたらと思います。
3つ目は、「推しメンを見つける」です。
応援している若者がいると、「あの学生頑張っているな。自分も頑張らなきゃ」という気持ちになり、応援している側にも奮起されるものがあります。今日はOBOGも含め、mocteco生9名にプレゼンして頂きますが、「応援したいな」と言う若者がいたら、ぜひXやinstagramをフォローをして、定期的に応援したり、頑張っている姿を見られるよう、推しメンを見つけていただけたらと思います。」
2.ゲスト講師:NPO法人ETIC.佐々木 健介氏による講演
次に、ゲスト講師であるNPO法人ETIC.佐々木 健介氏に登壇いただき、ご講演頂きました。
東京で数々の起業家を排出しているNPO法人ETIC.の取り組みや、TOKYO STARTUP GATEWAYでのスタートアップ支援の考え方、どういう環境や生態系をつくっていくと起業家が生まれやすい環境になるのかお話を伺いました。
一部を抜粋してお伝えします。
どうしたら起業家予備軍みたいな若者を見つけられるか?
佐々木 健介氏「NPO法人ETIC.は30周年を迎えます。最近は「インパクトスタートアップ」と言われますが、社会起業家や事業型NPOを盛り上げていくために、個別にハンズオンで関わってプロジェクトを進めていく傍ら、その予備軍を応援することをしてきました。コンサルティングや投資をするということではなく、場づくりやそこの人たちのパワーをあげていく応援をするというアプローチです。現在は社会起業家に囚われずに、起業家的チャレンジを広げていくためにはどうすればいいか、何か想いをもってチャレンジしたいという人が、起業することでその想いを遂げていくことを当たり前にできるようにしていきたいと事業を行っています。
moctecoには、コーディネーターとして3年ほど関わらせて頂いています。
同じような取り組みをしたいと言っている人たちが全国にもいて、その人たちと話すと「どうやったら起業家予備軍みたいな若者を見つけられるか?」ということが話題にあがりますが、そこで僕はmoctecoの話をします。moctecoは、今日のプレゼンターの皆さんもそうだと思いますが、チャレンジャーがどんどん生まれていき、そのチャレンジャーがさらにチャレンジャーを生むようなことになっていて、それ自体が素晴らしいなと考えています。こういった動きを広げていくようなことになったらいいし、私もその一端として参画できたらと思っています。
今の若者たちにとって、「起業家」とは明確なロールモデル
TOKYO STARTUP GATEWAYは東京都主催のビジネスプランコンテストで、ETICでは企画運営事務局として関わっています。今年の応募総数は2,963人。起業動機と言っていますが、エントリー方法はビジネスの中身ではなく、自分の想いをエッセイでもいいから400文字でまとめることです。TSGでは全員が同じように「こんなことをやりたい」という想いを持った人たちが集まります。勝ち上がっていく、蹴落としていくと言うよりは、同じような想いを持つ人たちがいっぱいいて、お互いが勇気づけあいながらチャレンジしていくという形で進めています。
現在、スタートアップ支援と社会では言われ、「次のGoogleを生み出せ」というような風潮がある一方で、「みんなが起業家的になる」という時代の一番の始めのところきていると思っています。
10年前とは違い、今の若者たちにとって起業家とは、「できたら面白いじゃん」という明確なロールモデルになっています。Youtuberや服や化粧品のD2Cブランドというようなものを含め、自分がすごく好きなものを発信して収入を得ることができる時代で、「起業家的な生き方っていいな」という時代になっていると思います。
その一方で、私が強く問題意識を持っているのは、それが本当にできるかどうかというのは、その人の環境にかなり依存しているということです。
たまたま、それなりにお金に問題のない家庭に育っていて、「休学してでも頑張りたい」と誰かに伝えた時に、「やってみな」と言ってもらえる環境にあるかどうかということです。高校時代に「挑戦したい」と先生に相談したら、「それいいね」「今からでも時間見つけてやってみろ」と言う風に、普通はならないし、なりにくい。親に相談しても、「それもいいかもしれないけどね...」となってしまいがちです。環境が整っている人たちは、その環境でどんどん頑張れるかもしれません。
偶然ながら、今日このmoctecoにアクセスできた人たちは、以前と少し変わっていると思います。しかし、そうではない人たちは、「やってみたい」と憧れたからといって、すぐ何かをやれるわけじゃない。裾野の可能性はすごく広がっているのに、みんなができるわけじゃない、そこを何とかするために私はチャレンジしたいと思っています。
チャレンジする人に必要なものは、能力や資源ではない
これからチャレンジする人に伝えたいこと。
ペンギンの群れから1匹が氷の上から海へジャンプすると、それにみんながついていく様から「ファーストペンギン」と言われます。「やれ」と誰からも言われていないのに「やります」という人に必要なものは、能力や資源ではありません。
これからチャレンジする人は、周りから「なにがしたい」「なぜしたい」「なぜあなたなの?」と聞かれることになるわけですが、「できるかどうか分からないけれど、それをやりたいんだ」と思って、実際に進むから、みんながついてくるということです。いちばん最初に動く人に重要なことで、これは誰にでもできることでもあります。能力がなきゃいけないとか、お金があるからできる、ということではありません。
今日、このDemoDayにいる参加者の皆さんを含めて、応援する人たちは「やりたいことがどれだけキレがあるか」ということよりは、「この人は本当にどこまでやりたいんだろうか」「やりたいことは何なんだろうか」というところを見ていると思います。チャレンジするその人自身を見ているということを大事にしてもらえるといいんじゃないかなと思います。
応援する側に伝えたいこととしては、私含め大事にしているのはエンパワーメントが大事ということです。チャレンジする側はやり始めたばかりで、相手は何物でもありません。本人が力を増して継続的な成長をするという観点を持ち、後押しする形で関わるということが理想なんじゃないかと思います。
天才層のような、何にも言わなくても金があるかどうかなんて俄然無視して勝手にやっていく人は既にやってると思います。私はその次の層を挑戦層と呼んでいますが、「やるぞ」という機運もあって、みんなの流れもあるから行動できる人が、流れや環境に依存せずに挑戦できるという社会を作っていくことにチャレンジしていきたいと考えています。
3.mocteco 第6期生Demoday 成果発表プレゼン
次に、メインイベントであるmocteco 第6期生のDemoDay、成果発表を行いました。今期はこの5名のメンバーで、3ヶ月間、自分の事業や、自分のやりたいことに向けてプロジェクトを進めました。
・髙橋宏友(北海道文教大付属高校)
「規格外野菜の廃棄問題-フードロスの解決-」
「現在、日本では規格外野菜が年間約500万トンも発生しています。
私はこの事実を知り、単純に「もったいないな」と思ったと同時に、これを活用して事業にできるのではないかと思いました。
このmocteco期間中に多くの出会いがあり、自分の視野が広がっていくことを感じていました。moctecoを終え、事業云々ではなく、自分の人生として大切なことを学んでいると感じました。」
▼髙橋さんのDemoDay詳細レポートはこちら
・柳沢将(小樽商科大学)
「子育てフレンドリーな社会からニッポンを元気にしたい」
「moctecoへのエントリーは、札幌で学生起業家や経営者に話を聞いて影響を受け、「自分にも何かできるんじゃないか」と思ったことがきっかけです。
子育て分野はたくさんの課題がありますが、「子供たちの写真を撮る」ことであれば、学生の自分でもできると思いました。実際に写真を撮ってあげると、ママさん達にとても喜んでいただけることが分かったため、moctecoでは撮影代行サービスの立ち上げに挑戦しました。」
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・安藤あかり(北海道大学)
「森とともにある、をつくる」
「1年前から休学をして、長野で猟師に弟子入りしたり、フィリピンで山岳民族と一緒に暮らすぐらい森が大好きな人です。
このmoctecoの3ヶ月間で、学問関係の方、仕事や生活で森に関わっている人、ジビエに関わっている人など、色々な方にお会いました。今後も、色々な視点から森の可能性を探るということをやっていきたいと思っています。」
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・村井誠剛(北海道大学農学院)
「農家さんが仕事を誇りに持ち、消費者が農業をより身近に感じる世界を創る」
「3ヶ月間、本当にありがとうございました。 メンターの皆様のみならず、同期である6期生のメンバー、KickOffやDemoDayに来ていただいた皆様のおかげで、 本当に充実した3ヶ月を過ごすことができました。自分の法人のこともそうですが、個人的にもいろいろあって、人生のターニング ポイントに間違いなくなるなという3ヶ月でした。本当にいい経験をさせていただいたと思っています。」
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・布川舞桜(北海道教育大学札幌校)
「外見に悩む学生と美容学生のマッチングサービス-Tasuki-」
「コーディネーターの久保さんに、「ビジョンは社会との約束だから、布川さんは数字に向き合ってください」と言われました。今まで数字に向き合えと言ってくれる人が周りにいなかったので嬉しかったです。また、韓国へ行ってへとへとになって、やりたいことがたくさんあるのに時間がなくて「もう無理です」と言った私に、コーディネーターの浜中さんが「それでも全部やるしかないよね」と言っていただいて、逃げ道をなくしてくれる人も今までにいなかったので嬉しかったです。」
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4.moctecoを卒業したOB・OGによるプレゼン
moctecoを卒業したOB・OGたちのその後、現在の活動について、プレゼンを行いました。
4.mocteco推しメン交流会
6期生の決意発表プレゼンとOBOGのプレゼン発表後は、推しメン交流会です。moctechメンバーも一緒に参加者とディスカッションを行いました。
-最後に-
最後までご覧いただき、ありがとうございます!今年のDemoDayも多くの方にご参加頂き、ありがとうございました。参加者の中には学生の姿も多く、mocteco生たちのプレゼンを聞いて、次のチャレンジが生まれる機運をひしひしと感じました。
2024年度のmocteco(第7期)は、現在エントリーを受け付けています。
「起業したい」
「試してみたい企画がある」
自分の興味や関心をカタチにして、社会に向けて試したい若年層が対象です。まずは、お気軽に面談をお申し込みください。面談時点ではプレエントリーとなりますので、自分のやってみたい「想い」だけで面談が可能です。第7期は2024年9月から開始。あなたの挑戦を楽しみにしています!
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■若者のチャレンジを応援する【mocteco応援団員】募集中
▼2023年9月に行ったmocteco 6期生たちのKickOffのレポートはこちら