「さくらと先生」 静かに進む、切なく優しい物語にピュアな涙が製造されそう。
とってもきれいで出会えて良かったと思った、「さくらと先生」。 読み終えても何度も読み返しています。読むたびに、言葉と情景に深みが増す魅力あるお話です。
この作者さんの別のお話を先に読んだのですが、そちらもシーンから浮き上がる空気感にぐっときて、これまでの作品も読んでみようと思ったのがこの作品なのです。最高に好きになってしまったので、まずはこちらの感想をと思いました。
思い出とリンクしてしまっている、切ない香りのように残る余韻。そんな作品でした。
漫画というのは、言葉がなくても絵で読者に訴えて攻めてくるんだというのを、再認識したきれいなシーンの数々。ああ、なんて切なく美しい世界。
お話は高校に初登校するさくらが、桜舞う坂道で先生とすれ違うところから始まります。 最初は気付かなかったけど、この時すでに先生はさくらを意識していたのかな。
先生は簿記を教えている26歳の藤春先生。先輩達からは藤くんと呼ばれています。
さくらの先生に対する気持ちは、憧れから恋心に変わり、休み時間や放課後のなんてことない時間に、他愛もない話をして少〜しずつ距離が縮まる2人。先生も少〜しずつさくらを意識するように。すごくゆっくりと。先生が好きだから、担当教科の簿記は得意科目に。かわいいなー。
校外で偶然会って言葉を交わしたり、さくらが待ち伏せして話したり、盗難に遭ったさくらの自転車を一緒に取りに行ってくれたり、修学旅行ではちょっとしたハプニングで先生と2人きりになれたり。。。会う頻度も高くなり、話も明らかにお互いが好きだと分かる内容に。そしてチラチラと見えてしまう、さくらのことを想っている男子に対する先生の嫉妬心。
禁断の恋はエスカレートしていき、とうとうさくらの誕生日に、校内でキスしてしまうふたり。お互いこれはまずいと分かっているのに。
物語は、お互いの節度を守り思いやりながら進んでいくのですが、たまに先生が理性を保てなくなったり(全然激しいものではない)、さくらが大胆になってしまったりするところにリアリティを感じます。 実際こんな形の恋愛ならありそうだし、周囲にバレないようにがんばっている2人なら悪いことじゃないんじゃない?と思えるほど。(倫理的にどうこうはあるのだろうけど)
簿記検定で満点合格したので、先生はさくらをデートに誘います。ふたりのことを知ってる人の居ない場所に逃避行。海辺の街に着き海を歩くふたり。 砂浜を歩き、先生に抱きつくさくら。ここがとてもキレイなシーンで。これまでがまんを続けたさくらのことを思うと、泣けます。
この後のシーンもとても良く、さくらの辛さを思うと涙を誘います。先生と生徒の恋愛は世間的にご法度。さくらは1人で抱え込んで、周囲にバレないようにするんだけど、それが切なくて。
時に幼くなってしまう先生と、がんばって大人になろうとするさくらとのバランスがちょうど良く、そこがこのお話の切なさを際立たせているんだろうなぁ。
そしていよいよ高校卒業の日。どんなことが起こるの!?とドキドキしていたけど、あれ?あっけないかな?みたいな終わり方。
いやいや、充分すてきなんだけど、もう少し読みたいし、先生からの目線でのシーンを一から読みたいし、続きも読みたいんだけど。。。そのぐらい気に入ってしまいました。
好き嫌いありそうですが、私は大好きです!