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会いたいけれど会えない友達の話



「で。もこちゃんはどうなん、最近。」


お洒落なパスタ屋さんで注文を取り終わった後だった。
彼女が怪訝そうに口を開いた。私はその瞬間どきりとしたけれど、会うのは約2年ぶりだし、ちゃんと今の私のことを伝えなければと思った。大学を卒業してからのこと、就活はせずにフリーターでいること、今やりたいことがあること。数少ない面白みにかける話をした後で、頼んだパスタが来た。彼女は私の話を聞きながら、特に微笑むこともなくパスタを食べ始めた。それから何を話したのかは、あまり思い出せない。食べたパスタの味も忘れた。妙に浮かれて見える周りの客が何故か気になって仕方なかった。


彼女は、私の幼稚園からの幼馴染である。中学では少し離れてしまったものの、高校が偶然一緒になりそこからまた仲良くなった仲である。昔から気が強くて、いつ会っても元気な女の子。いろんなことで躓くことが多かった私をいつもなぜか気にかけてくれて、そして面白がってくれた人だった。大学を卒業してから関西を離れ、東京でバリバリと働く頭の切れる優秀な女性だ。大学を卒業してから1度会ったきりで、住んでいる場所が離れていることもあってなかなか会えていなかった。


彼女は今の仕事の話をしてくれた。話を聞いていると、とても大変そうで、聞いてるこちら側も気が遠くなりそうだった。だけど、そんな中でも彼女はへこたれずに頑張っていた。そんな話を聞きながら、私もパスタを食べる。美味しいとか、美味しくないとか、そんなこともどうでも良くなってひたすらパスタを口に運び続けた。




他の近況報告、たわいもない話をして、パスタ屋さんを後にした。
フラフラとファッション街を歩く。
あるお店に入って、彼女がベレー帽を被る。
「ベレー帽、欲しいねんなあ。」そう言いながら鏡の前でベレー帽を被る。どっちの色がいいか迷ったり、私にもベレー帽を勧めてきたり、店員さんと喋ったり。なんとなく、懐かしい感じがした。そこで初めて、学生時代と変わらない空気が流れたのだと思う。そこにいる彼女は、当時の彼女と変わらないように見えた。けれど、そう見えたのは私だけだったのだと思う。実際の彼女は今その時を生きている人であり、学生時代の彼女とはまったく違っていた。そんな彼女に憧憬を抱いた。そして同時に虚無感を覚えた。




電車に乗って、またねと言って別れた。


そのまたねは嘘ではなく、その後も何度か会ったのだけれど、今、また幻想になるかもしれないと少し怖くなっている。歳を重ねれば重ねるほど、その恐怖は大きくなっていく。
彼女のことは大好きだし、いつだって幸せでいてほしいと思っている。だけどまたね、の「また」が言い出せずにいる。


何かの基準が違うと生き方は違ってくるし、付き合う人も変わってくる。大人になると友達がいなくなるとはよく聞いていたけれど、それがリアルになってくる世界観はひどく寒々しいものだと思う。誰も悪くないし、誰のせいでもない。けれど、自分が悪いのかもしれない。


そんなことを考えながらLINEのトーク履歴を見る。
来るべきタイミングはいずれ来る。そして伝えたいことは伝えていくこと、と心に決めて、今日は考えることをやめることにした。



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