渋谷モヤイ像
「あのさ、好きなんだけど。」と、言われた場所はモヤイ像の前で、私は突然の彼の告白に頷くことしかできなかった。
ひとつ歳上で、男子校に通う彼との出会いは、今でも鮮明に覚えている。友達が文化祭で知り合ってきた男の子たちと遊ぶ約束になり、その中に彼の友達に連れてこられた彼もいた。
高1だった私は、クールで無口で個性的な、
そんな彼に一目惚れだった。
それは、私の片思いで、みんなといつものように遊びながら、ふたりで何回か会いはじめた時も、まだ彼が何を思っているかなんて全くわからなかった。
彼は第一印象では、私の友達を可愛いと言っていたと他の友達から聞いていたし、男友達にも、「あいつは無理だよ。」と何故か言われていたから。
それでも、電話で話す回数もふえ、
遊ぶ約束にも必ず応えてくれていた彼。
「あいつはもーちゃんが思っているような
やつではありません。」と、男友達から
私宛に書いた手紙までもらったりして。
それでも彼のことが大好きだった。
何がそんなに好きなのか、と聞かれても、
すぐには答えられないくらいに。
うん、雰囲気。
彼の作りだす雰囲気に、とても惹かれていた。
(あ、すごく好きだなぁ、、、この感じ。)
と、いつもドキドキさせられた。
親友たちは、「ふたりで会ったりしてるのに、付き合わないの?」「あいつはどういうつもりなんだ。」と色々言っていたけれど、私はふたりで遊べるだけで嬉しかったし、周りのザワザワは、気になっていなかった。
恋は盲目。
だからその日も、ファーストフードでたわいのない話をして、当たり前のように、「またね。」とバイバイすると思っていた。
「好きなんだけど、、、。でも、みんなには俺から話すから、まだ言わないで。」
嬉しさと恥ずかしさと、親友たちにもまだ秘密というシチュエーションにも戸惑いながら、ドキドキが止まらなかった。
好きと言われてはじめてのデートも、いつものようにモヤイ像で待ち合わせた。
ナチュラルボーン・キラーズを見ながら、「飲む?」とドリンクカップを私に差し出す彼の仕草はすごく自然で、何でもないようにストローに口をつけることも映画の内容も、その全てがおこちゃまな私には、ドキドキを通りこしてバクバクだった。
それから、行きたい場所があると連れていかれた場所は、SEIBUの中のひっそりとした踊り場で、横並びの椅子に座ると、窓の下には行き交うひとびと、斜め前には、緑の公衆電話。
それから何を話したかはよく覚えていないけれど、正式に付き合うことになり、その緑の公衆電話から、親友たちに報告の電話をした。
「あ、そーやってるのね。」
「うん?!」
「いや、電話の後にすぐ切るなって、ずっと思っていたから。」
そう、私は無意識に、「バイバーイ」と言いながら、もう片方の手で、受話器を置く前に電話を切っていた。
「ごめん。」と笑うわたしに「ここ座って。」と言う彼。
ドキドキがまたバクバクに変わる中、今までよりも、ずっとずっと近い距離で彼の顔をみて、目を閉じた。
はじめて手を繋いだり、腕をからませあったり、「恥ずかしから、みんなの前では繋がないで。」という、私のお願いを「分かった。」と聞いてくれるのに、友達が一緒だと、「なんでみんな連れてくるんだよ。早くふたりになりたい。」と少しふてくされたり。
クールな彼が、実はふたりだとすごく甘えてくるところも意外だったし、小さなことだけど、こうやって少しずつ相手のことを知っていくんだな、と実感した。
ファーストデートの思い出は、私が片思いから両想いになれた彼と。今思いだしてもキュンとしてしまう甘い思い出。
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