今ひとたびの覇王別姫
Stay home の恩恵なのかなんなのか、海外ドラマや映画をものすごく見ている。学生時代も時間がありあまっていて、よく映画を見ていた。
その頃は、何かとハスにかまえたい年頃のせいか、ハリウッドの王道エンタメよりもミニシアター系やアジア映画が好きだった。「覇王別姫」もその流れで見たもので、感情を揺り動かされた記憶は残っているものの、中国を舞台にした京劇の俳優たちの話だよね、とうっすらとしたもので、いい映画だったという淡い手触りしかなかった。
動画配信サービスのラインナップに入っていたから、懐かしい!と思って見返してみた。明かりを落としたちょっと暗めの部屋で見る。家でビデオを見るときの昔の習慣をなぞってみた。
たぶん20年ぶりぐらいだけれど、こんな話だったのか!とかなりびっくりした。
ナイーブだったつもりの当時の自分、よく忘れていたね、ショック受けなかった?と思ったけれど、たぶん子供すぎたんだろう。それがどれほど辛く悲しいことなのか、わかっていなかった。
主人公は搾取されまくる。性的にもかなり酷い目に合うし、愛している人を助けるためにも苦しい思いもたくさんする。好きな人は同じ性で、彼は当たり前のように妻を娶る。妻は一目会った時から、主人公が自分のライバルであり、自分以上に夫とのつながりが深いことを察知する。
その個人的なただ1人への愛の上に時代の流れが乗っかってくる。想いは国家の歴史の中で、何度も踏みにじられる。
ここからは、ちょっとネタバレだけれど…。
終盤のクライマックスで裏切りが交差する。ここまでつらい目に合うのか、と悲しくなったところで、同じ男を愛した者同士として、妻が立ち上がるのだ。今っぽい言葉でいうシスターフッド。いたわりと理解だ。
それに対する主人公の行動もすごい。ええっ!と驚いた
けれどすぐにこれ以上ないぐらいに納得した。すごい、本当にこの人は生きている、と心が震えた。リアルな感情に呑まれる。そうだよね、そう生きるよね…と思った。
初めて見た時には味わえなかった。たぶん、大人になって、ちゃんと人を好きになってみじめな思いもして、恨んだりもして、それ以上の喜びも感じたりして、だから見えてくるものがあった。すごい話だ、と思った。
ちょっとハッとしたのが、主人公がある場面で、失墜した人について語るときに「彼は私に触れなかった」と言うこと。どれだけ、むさぼられてきたのか、と胸が痛かった。美しさゆえに踏みにじられ続けてしまったことが、ただ悲しい。
あまりにも悲しくてきれいすぎて、そしてその恋が変容していくこと、もはや愛なのか憎しみなのかわからないほどになってしまうことが、普遍的でもあったりもして、ちょっとぐるぐる考えてしまう。
ほんとにすごい映画だ…。ちなみにファーストシーンもすばらしい。ちょっと可愛いんだよね、人形が動くみたいに。そして、それも暗喩のようで。
#ミニシアター #ミニシアターの思い出 #ミニシアター程度 #香港映画 #ルシネマだったかも
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