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誕生日を口実に。

好き嫌いが多いわたしは、人の好き嫌いも多い。
職場でコミュ力を評価されることが多いが、それは表面上穏便に、お互い気持ちよくいるためのちょっとした気遣いみたいなもので、本心では「苦手」だと認識する人が少なくない。
友人知人は大体「まぁ、悪い人じゃないよね」というところに位置していて、それなりに楽しく付き合っている。
この「まぁ、悪い人じゃないよね」というのは、一般的にいうと「好き」にあたるのではないだろうか。
わたしの中ではあくまでも「まぁ、悪い人じゃないよね」というところなのだけれど。
というのも、わたしの場合は「大好き」か「とことん苦手」のどちらかに振ってしまいがちなのだ。
一応弁解すると、意識的にそうしているわけではなく、本能的にそうなってしまうのである。

今日は、ドレス屋さん時代の上司(といっても同い年で、独り立ちしてからは結構対等に付き合ってきたと思っている)の誕生日だ。
毎年、お互いの誕生日にだけ「おめでとう」を送り合っている。
SNSでつながっていても、お互い眺めているだけでアクションすることは稀だから、プライベートで連絡を取るのは年に一回だけだ。

彼女の好きなところを挙げようと思うと本当にキリがない。
思いやりにあふれた接客スタイル、スタッフへの厳しさと優しさの使い分けが上手なところ、向上心が高いところ、自分の芯をきちんと持っていてそれが決して揺らがないこと…やはり書ききれない。
文章にするとバリバリのキャリアウーマンで高嶺の花に見えるが、とてもチャーミングで気さく、誰からも愛される可愛らしい女性だ。
(余談だが、誕生日のほかに、大きめの災害があった時は真っ先に連絡をくれる。本当に素晴らしい人である。)

彼女の相手を思いやる心には何度も感銘を受けてきたし、今でも接客の様子やスタッフへの接し方など、細かな一つ一つを鮮明に思い出すことができる。
わたしは、彼女の接客を見て、自分のスタイルを改めてから、心底ドレスコーディネーターという仕事が楽しいと思うようになったのだから。
突然の事件を乗り切ったことも、些細なことで爆笑しまくったことも、わたしの退職前においしいタルトを食べに連れて行ってくれたことも、全部ぜんぶ、大切な思い出だ。

今は、やりたいことで独立して、わたしの目にはすっかり軌道に乗っているように見える。
けれども、現状におごらず努力を続けている姿や、相手への溢れんばかりの思いやりを伝える様子は変わらない。
それを見る度に自分自身を振り返って猛省する日々だ。

今年も「おめでとう」の連絡をした。
毎年変わり映えしない文章(コピーライターなのだが…)だけれど、心からの尊敬の念と「大好き」の気持ちを込めた。
ややしばらくして、返信が来た。
SNSに流れているものではなく、わたしだけに宛てられた言葉たちにうれしくなる。

誕生日は、大好きな人に連絡をするためのすてきな口実だ。
これからも「誕生日おめでとう」に頼りながら、大好きな人とつながっていたいと思う。
そしてKさま、お誕生日おめでとうございます!

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