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あの男、聖なる日にも情けなし

皆さまごきげんよう、モコ・モンローです。
初投稿はどんな内容にしようかしらと考えた結果、昨年末のなんとも面白みありカオスなあの男性のことを、ぜひ皆さまに共有したいと思い指を動かす私です。

記念すべき初投稿の本日は、昨年の聖なる昼の出来事について綴らせていただきます。

あの昼、仕事の商談を終えた私は、その地域で人気のオムライス専門店でランチをすることに。平日とはいえクリスマスということもあり、予約も多く一人客が少ない店内。


案内された席は店全体が見渡せるソファー席。幸か不幸かこのソファー席のおかげで(せいで⁈)あの男性を知ることになるのだった。


着席した瞬間に目に入るあのカップルは、どことなく事情のありあそうな雰囲気を醸し出していた。
カップルはカップルでも、恋人…ではないであろう。

おそらく60代の中肉中背の男性は見るからにその女を欲している。その女は30代半ばであろう。ヒョウ柄のミニスカートに高めのヒール、巻き髪のロングヘアーに真っ赤なルージュ。まさにあの男が欲する「女」だった。

男と女がオムライスを食べ終わる頃に、男のアピールタイムが始まった。
「へーそーなんだー。すごーい。」
明らかに無関心そうな反応の女だったが、良きタイミングで男が待ち侘びた仕事についてのターンが来た。

「…そんなことからそれ以来、ここら辺の○○(某有名財閥企業)からの仕事はなぜか全部僕のところに頼まれるようになってさ。」

明らかに女の目の色が変わった。

「え~!すご~い!!いまはどんな内容の仕事してるの?」
そこから男は、もう、、饒舌だ。

あの男のお金の香りが女の気分を上がらせたのか?
それとも仕事で成功しているあの男に対する尊敬の現れなのか?

…なんてことを考えながら、私の観察は続く。

食後のドリンクが届いた。

その女は期待を裏切らない。
「ミルクティー」の入ったティーカップを両手で持ち上目遣いで男と話す。

「この後、どうしようか?漫画喫茶でも行ってまったりする?」
…はて、漫画喫茶でまったりとは⁈

これは大いに引かれるのでは…と思った私だが
「まぁそれもいいね~!」と全く嫌そうでない女。


え?私の見当違いで、もしや男と女は聖なる昼に漫画喫茶でまったりできるほどの長い仲なのか?
謎が深まるがそこまで長い仲ではないだろうと確信する出来事がすぐに起こる。


しばらくして男のスマホが大音量で響き渡った。スマホ画面を見た男のだらけた表情は一気に引き締まる。
電話には出ずに「休みの日なのに電話もがんがん入ってね~。」とどや顔なのかしかめ面なのか分からぬ顔で愚痴る男。

「大変だねー。ちょっとトイレ行ってくる。」
女が席を立つ。

壁一面の鏡がトイレまでの女の後ろ姿を映し出す。男はそれを見ながら女が完全に視界から消えるのを確認した後、すぐさま電話を取り出した。

「先ほどはすみませ~ん。えぇ、えぇ、そうでしたか~。」

ワントーンどころかスリートーンは高い声色で先方の様子をうかがう男。

女がトイレから戻るまでの時間で電話を済まそうと見積っていた男だが、見積以上になかなか電話が続く。
苛立ちだした男は貧乏ゆすりを始め、鏡を確認しながらもスリートーンアップは保ったまま早口になる。

振り返ってみると、なかなか器用な男だった。

「今日はちょっと今も他の仕事でバタバタしてて行けないので、また年明けすぐに確認にうかがいますね。すみませーん。は~い。失礼しますぅ~。」
女が席に着くギリギリで、無事電話を終えることができた。

ギリギリ男の見積通りに事は済んだ。

男の表情。まさにあの表情こそが「安堵」というものだ。
女が座るや否や、ここからが癇に障る言動のパレードだった。

「まったく嫌になるわ~。自分たちでやれよってな。結局俺がいないと何もできないんだよ。」
スリートーン下がった声で虚言を発するあの男。
「えーたいへーん。」無関心アゲインな女。

男ってやつは…と男を一括りにしてはいけない、と思いつつも呆れたのだった。

幾つになろうと色恋は人の本質を暴いてしまう。

正直に「仕事で少しミスがあったみたいで連絡あったんだよね。年明けに確認に行かないと。」と言えたらどれだけ素敵なのだが、多くがそれをできないであろう。


気持ちはわかるが、気持ちが悪い。

私の勘違いかもしれないが(いや、ほぼ確信だが)妻子ある60代男性の必死なデレ顔ほど醜いものはないのだ。それを逆手に上手く利用しようと試みる女に乗せられてしまっている男に呆れてしまうのだった。

聖なる昼に他所の女にデレる夫を、父を、はたまた祖父を。誰が見たいものか。

その後、浮かれたあの男はだらけた顔でその女と漫画喫茶へ向かったのだった。


私だってわざわざあの男とその女を見たくて人気オムライス店に立ち寄ったわけでは決してない。店内を見渡せるソファー席が、聖なる昼に私を観察させたのよ。そうしておきましょう。

モコ・モンロー

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