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初めての1泊バックパッキング 1日目

すでに2カ月近く経ってしまったが、ずっと楽しみにしていた人生初のバックパッキングへ10月下旬に行くことが出来たので記録しておこうと思う。

今年の誕生日は1泊バックパッキングの二日目に迎えることになった。そういうつもりで計画した訳ではなく、一緒に行く友達夫婦と日程の相談をするのが遅かったため、行こうと思っていた日程ではキャンプサイトがいっぱいで取れなかったのだ。その結果、キャンプサイトが取れる日程がたまたま誕生日の前日になってしまった。

誕生日を家族とではなく友達と迎えるのなんて独身の時以来かもしれない。夫と子供達を家に置いて自分ひとりで遊びに出かけることに少し罪悪感を感じながら…でも一番自分がやりたい事をやって誕生日を迎えられるならそれでいいよね。夕方には帰宅するつもりだから家族とも当日過ごせるし。

大体の必要なギアは揃えたものの、肝心のリュックが間に合わず友人から借りることにした。ずっとこれと決めていたお目当てのリュックは大手のブランドではなく、オンライン販売のみ。人気があるため次回の生産分が出回るのが11月とのこと。誕生日には間に合わないが、オーダーできるようになったら誕生日のプレゼントとして買って欲しいと夫に頼んである。友達から借りたリュックは60Lの容量で4~5日のテント泊のハイキングでも大丈夫なサイズだから1泊の荷物は余裕で入る大きさだ。それでも荷物を詰めてみたら思いのほかいっぱいになってしまった。というのも、寝袋が大き過ぎて…。ギアを買い集め始めた2年前にアマゾンで購入した寝袋で、その時はあまり明確にバックパッキングへ行くというビジョンがなくキャンプをイメージして買ったものだった。秋の終わりころにキャンプに行ったときにとても寒く眠れない夜を過ごしたのできちんと温かい寝袋が欲しいと思い、SNSですごく温かいと評判の良かった限界使用温度でマイナス17℃のものにした。おそらく快適に過ごせる温度でも0℃くらいまで大丈夫そう。1泊の装備だから寝袋が多少重くてもどうにかなるが、とにかく大きくてかさばる。それだけでリュックのスペースの半分は埋まった(笑)。まあ今回はこれで出かけるしかないが、次回までにはちゃんとバックパック用の寝袋を買わなければ・・・。

土曜日の朝7時に友達夫妻が迎えに来てくれて、うちから出発して車で4時間ちょっとの目的地に向かう。目的地はテキサス州オースティンから西へ運転すること1時間のコロラドベンド州立公園。ヒルカントリーと呼ばれる地域にあり、多くの丘や湖や川があちこちに点在し様々なアウトドアアクティビティーに適している自然豊かな地域だ。公園内には長さ1キロ弱から7キロ程度の様々な難易度のハイキングトレイルが10コース以上あり、標高も一番高いところで400mあるとのこと。日本で山登りする人にしたら山とも言えない標高かもしれないが、普段どこまでも続く平地でしかハイキングできない私たちにとっては見晴らしの良い景色が見れるのではと期待が膨らむ。

到着する少し前に通りかかったサブウェイでサンドイッチを買って来たのでトレイルヘッドで昼食を済ませていよいよハイキングスタート!
トレイルヘッドには温度計がかかっており、気温は27℃。荷物の重さは水と食料を入れて10キロ。重いリュックを背負ってのハイキングも傾斜のあるコースを歩くのも初めてだからどんな感じになるか未知の経験。

トレイルヘッドの気温は26.6℃


歩き始めると緩やかな登りや下りの傾斜があることで足の運び方がいつもと全く違うしリュックの重みも一歩一歩足にしっかり感じられ、これが憧れのバックパッキングってやつなのかと体全身で実感する。気候は私の住むヒューストンエリアのじっとりと湿度の高い気候と違い、やや乾燥気味で空気がさらりと軽い。地質は乾いた肌色やオレンジがかった乾燥した砂利道が多く、高い木がほとんどない。高さ3メートルくらいの低い木がほとんどで、あとは木とは呼ばないような草と木の間くらいの茂みがまばらに広がっていて、サボテンなような植物が地面の近くに生い茂っている。

見晴らしの良いところへ出てきた

いつもは15Lくらいの軽量リュックでサクサクと平地を歩いていて週末のデイハイクでは10マイル(16キロ)くらい歩いている。長距離のトレイルを歩くロングハイクでは多くのハイカーが1日20マイル(32キロ)から多くて30マイル(48キロ)歩くイメージがある。私もいつかPCTで1週間から2週間のバックパッキングをするのが夢だから、その夢を叶えるときには1日20マイルは歩けるようになろうとイメージしている。
(PCT=パシフィッククレストトレイル:アメリカで2番目に長いトレイルでメキシコからカリフォルニア、オレゴン、ワシントン州を経てカナダまで延びる全長4265キロのロングトレイル)
だから今回のバックパッキングの計画では1日目10マイル、2日目は午後には帰路につかなくてはならないから5~7マイル歩くのを目標にした。

ハイキング開始から2時間近く歩いただろうか。体の疲労度からいつもの感覚的に5マイルくらい歩いたかなというところで一旦おやつ休憩。重たいリュックを背中から下ろし水分とおやつでエネルギー補給。そこでガーミンで歩行距離を確認するとなんとまだ2マイルしか歩いていない!ショック!!確かにいつものデイハイクのようにサクサク歩いていないからペースは遅めだけど。昼下がりの暑さと2マイルでこの疲労感は大丈夫なのだろうかと少し不安になる。

藻で覆われた池の辺りで休憩

気を取り直して歩き続け、この公園のハイライトであるゴーマンフォールズという滝を目指す。普段地形の変化に乏しい平地でハイキングしていると、山や川、湖、滝といった自然の景色の変化を拝めるというのがなんとも贅沢に感じる。滝に続くトレイルは急な下り坂になっていて、滑りそうな岩の急斜面の横には鉄柱と鎖で手すりが張ってある。狭くて傾斜の厳しい岩場を下から登ってくるハイカーたちにゆずり、一歩一歩慎重に足を下ろしていく。何しろ背中のリュックの重みで身軽には動けないしバランスをくずしたりしたら思わぬほうに体を持っていかれそう。

この時点で出発から5時間くらいは経過しているから暑さとリュックの重さと足の疲労で体全体もかなり疲れてきた。それでも滝の見えるところまで降りてきたら一気に気持ちが晴れやかに。滝の高さは21メートルとそれほど高くはないが、流れ落ちてくる水のしぶきや川へと流れていく水の様子は見ていて飽きない。重たいリュックを下すと背中が汗でびっしょり濡れている。滝から川の方へ降りていくと浅く流れの緩やかなコロラドリバーを望むことができる。深さ10~20センチくらいの浅瀬で家族や少人数のグループが川に入って遊んだり涼んだりしている。靴が濡れないように岩の上を渡りながら川の浅瀬を歩いていき、水を手で触ってみるとほんのり冷たくてホッとする。滝つぼ近くまで行くと水がより澄んでいてもう少し冷たかった。

川の浅瀬で涼む

しばらくリュックの重さから解放されて滝や川の写真を撮ったあと水分補給とおやつを食べて、また歩き始める。午後の一番熱い時間帯とあって、やはり日が当たるとじりじりと熱く体力を奪われる。それでも思っていた以上に日陰に覆われているところも多くて助かった。日陰に入るとひんやりし、ちょっとしたそよ風が吹くと今度はお腹あたりがスースーする。風があっても飛んでいかない顎ひものついた帽子を被ってきたけど、後頭部側のふちが背中に背負っているリュックにあたるから帽子がズレて顔に深く覆いかぶさり前が見えなくなってしまう。大きなリュックを背負ったことがなかったから、この帽子だとちょっと相性が悪いことに気づく。

大きな岩の壁

はじめは目新しかった石や岩だらけのトレイルだが、いつまでもだらだらと続く登りにはまだかなあという思いが頭をよぎる。途中もう一度座っておやつ休憩を取ったが、ここで気が付いたことがひとつ。エネルギー補給したいけど、疲れ過ぎると食べることすらめんどうになる。ポテトチップ、ナッツ、エネルギーバー、エムアンドエムズ、ガミーベア(グミ)などなど食べものはたくさん持ってきたのだが、なんかもう咀嚼するのがめんどくさい。水分補給も持ってきたスポーツドリンクを飲むものの暑さでぬるくなった飲み物を飲んでも体が回復している気がしない。とりあえずお腹にいれるためだけに食べて歩き始める。

緩やかな登りがつづく

出発したトレイルヘッドまで戻ってきてガーミンを見たら7.5マイル(12キロ)だった。だが体はいつものデイハイクのときの10マイル(16キロ)よりずっと消耗している。無事に歩き切れて良かった。とりあえず車に乗り込みトイレへ。バックパッキングだったら本当はトイレなんてないところで過ごすのだろうけど、ここは州立公園内なのでトイレが公園内に何か所かあるのだ。この公園のトイレは水洗ではなく全てぼっとんトイレなのだがそんなことはどうでもいい。バックパッキングしたいって言いながらやはりトイレがあるならトイレで用を足したい。誰かに見られる心配もなくゆっくりできるなんて素晴らしい!(笑)

それに公園のマップを見ると1箇所シャワーがあるらしい。そこで3人で地図で示されたあたりを探してみたがらしきものが見つからない。あきらめかけて近くでキャンプしている女性に聞いてみるとあっちの方にあるけど、ただシャワーヘッドのついた水道でお湯もでないわよ、とのこと。キャンプサイトの端にひっそりと鉄パイプにシャワーヘッドが付いているものを見つけた。なるほど、言われた通り囲いも壁もなにもないし、これはシャワーヘッドがついてるだけのただの水道だわ。

バックパッキングに来てさすがにシャワーを浴びようとは思っていなかったけど、友達夫婦は腕や足だけでも水で流してさっぱりしたいというので私も裸足になってひざ下だけ水で洗った。そうしたら思いのほかさっぱりしてとてもいい気持ち。汚れや汗と一緒に疲れが一気に取れた気がした。さっぱりしたところで車へ乗りこみ今日泊まるキャンプサイトのあるトレイルヘッドまで移動。トレイルヘッドからキャンプサイトまでは1マイルほど歩かなくてはならない。この時点でおそらく19時半を回っていたと思う。トレイルヘッドから歩き始めるころにはすっかり陽が落ちて暗くなってしまった。陽が落ちると急速に涼しくなり、お腹の弱い私はお腹周りがすーすーしてちょっと心配になってきた。暗闇の中ヘッドランプをつけて3人でトレイルを歩き続ける。1マイルのはずなのになんだかすごく遠く感じる。キャンプサイトに近づくと他のキャンプサイトのテントの灯りがちらほらと光っている。見えるのは灯りだけで人の姿などは暗くて全く見えない。灯りの方向から話し声が聞こえるのでそれで人がいるという気配を感じる。どのキャンプサイトも2人か3人くらいの少人数のようだ。

暗闇のなかキャンプサイトまで歩く

計画では夕方暗くなる前にキャンプサイトでテント張りを完了して明るいうちに夕飯、暗くなった後は星空を眺めながらのんびりして・・・と思い浮かべていた。だからこんな遅い時間にキャンプサイトを探して歩いているとこんなはずじゃなかったという思いが何度も頭によぎる。真っ暗な中テント張れるのかな。夕飯も遅くなってしまった。それにめっちゃ体力的に消耗してる…。やっとキャンプサイトへ到着し、ヘッドランプの光で何とかテントも張れた。家の庭で2回くらいテントを張る練習しておいて本当に良かった。昼間は暑かったが陽が落ちたらずっと涼しくなって長袖シャツにウィンドブレーカーでちょうどいいくらいの気温だ。テントの中で着替えて外に出てきたら、友達がちょうどいい大きさの岩を並べてくれてそれが椅子がわりの食卓が待っていた。

真っ暗な中、ヘッドランプの赤い光の中で夕飯の準備。私はお湯を注げばできあがるバックパッキング用のフリーズドライのパッタイ(タイ風の麵料理)を夕飯にするつもりで持ってきていた。REIではそれがフリーズドライご飯の中で一番人気っぽかったからそれにしたのだが、疲れ過ぎていると美味しいかどうかもわからないそれを食べる気がどうしてもおきない。結局予備で持ってきていたアルファ米の炊き込みご飯とフリーズドライのみそ汁にすることにした。温かい味噌汁がお腹に沁みる。疲れているときほど体が求めるのはやっぱり食べ慣れた味噌汁とご飯というシンプルなものだ。日本人で良かった。

友達夫婦はマッシュポテト、ソーセージ、ラーメンといろいろ用意していて、私にもおすそ分けしてくれたり、私もデザートに持ってきた大きなチョコチップがたくさん入ったクッキーを分けたりと楽しい食事の時間になった。あまりゆっくりする時間はなかったけど、まわりにポツポツと灯るキャンプの灯りがあるだけであとはなにも照明がないところで見上げる空には今まで見えたことのないくらいの数の星がちりばめられていた。夜の星空を眺めることが私のキャンプの何よりの楽しみなのだ。なんなら星の河が流れるように無数の星をぼんやり光る白い帯が包み込んで空をよこぎっているのが見える。この景色が見れただけで本当に幸せ。今日ここでキャンプできて本当に良かった!

始めて一人用のテントの中で眠るのもちょっとワクワクした。疲れたけど新しいこと、やってみたかったことに挑戦出来て、友達とミニストーブで夕飯作って、満点の星空を見て、すごく良い1日だった。満たされた気持ちでテントの中で横になる。隣のテントで友達夫婦がテントの中がなんか臭い、何のにおいだろう?とひそひそ声で話し合っているのを耳にしながら私は心地よく眠りに落ちた。

2日目につづく

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