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中之条ビエンナーレ

「中之条ビエンナーレ」は2007年より2年に一度群馬県中之条町で開催されている国際芸術祭です。自然に恵まれ豊かな伝統と里山文化を育んで来たこの土地に日本全国・世界各地からアーティストが集まり作品展示やパフォーマンスが行われます。今年はコロナ感染拡大の影響で会期が予定の9/11-10/10から延期され、現在10/15-11/15の会期で開催されています。

中之条ビエンナーレの大きなテーマは「地域とアート」で、アーティストと地域住民との交流・地域文化との関わりなどが重要な要素になっています。地域に滞在して現地での制作を主に行うアーティストが多いのが特徴です。

この芸術祭のアーティスト公募に応募したのは2020年の夏、ちょうどコロナ感染拡大であらゆるイベントやコンサート、ライブが中止になっていた時期です。一旦立ち止まらずを得ない環境に置かれることになり先が見えない状況で、今後の音楽水車プロジェクトの活動について考えを巡らせる中、以前からトライはしていたものの結果に結びついていなかった、地域開催型芸術祭への挑戦に力を入れることを決め、ポートフォリオの作成やオフィシャルサイトのリニューアル、そして応募書類の作成に着手しました。あらゆる仕事がストップしてじっくり取り組む時間があったのはラッキーでした。

中之条町のある群馬県は全国でも養蚕が盛んだった地域として有名です。応募するにあたり、テーマは「農具ミュージック」、とりわけ養蚕業の中で使われた「座繰り」という道具を題材にしようと決めていました。養蚕はかつて中之条町全域で盛んでしたが、中でも旧六合村の赤岩地区は養蚕農家特有の家並みが保存された「重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)」に指定されていることから、展示のフィールドは赤岩に狙いを定め2020年7月にリサーチのため現地を訪れました。

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養蚕農家の重厚な建物や土蔵が数多く残され、美しい集落の風景に魅せられました。現地ガイドさんの案内のもと養蚕の資料館や旧養蚕農家のK三郎さんのお宅を訪ね養蚕に使われた民具をたっぷりと見せていただきました。

このリサーチを経て僕の頭の中では、「唐箕・脱穀機・座繰り」という3本立てのイメージが出来上がりました。ただ、中之条ビエンナーレはポートフォリオ(経歴や過去の作品など)による応募なので、具体的なプランを提示しての応募ではなくどういうものを作ってきたアーティストかで選考され、プランは選考に通ってから提示することになっていました。
選考に通った時は「パフォーマンス・アーティスト」の枠でだったのですが、僕が中之条ビエンナーレでやりたかったのは今まで「とびがもり水車音楽祭」などでやってきたコンサートイベントとは違う、作品の設置という形だったので、「展示+パフォーマンス」という形での参加をさせて欲しい、場所は赤岩でとの希望を出し承諾してもらいました。

その後も何度か現地に足を運び、ビエンナーレ事務局から地元の広報誌を通じて農具の提供を呼びかけていただき、唐箕をはじめいろんな農具が集まりました。座繰りはなぜか集まらず困っていたところ、地元の方との話の中から「資料館のテラスに置いてある壊れたものなら持って行っていいよ」ということになり、壊れた座繰りを一台いただくことができました。
脱穀機および連動する演奏装置はすでに岩手で製作していたものに手を加えることとし、唐箕は岩手でいただいたもの1台と中之条で提供いただいたもの2台を使いました。座繰りは赤岩地区から提供いただいた1台と、岩手の千厩町の古い蔵からいただいてきたもの1台、インターネットオークションで手に入れたもの2台の合わせて4台を使いました。

展示会場は赤岩地区の水車のすぐ隣の「赤岩ふれあいの家」の1階と2階を使わせていただくことになり、1階は『農』をテーマとして唐箕と足踏脱穀機、2階は『養蚕』をテーマとして4台の座繰りを使った演奏装置を設置しています。

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制作の様子やそれぞれの楽器についてはまた別の機会に紹介したいと思います。


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