映画『バニシング』を見た。
(ネタバレあり)
バニシングとは「失踪」という意味。
灯台守をしていた3人が失踪してしまった実話をもとにつくられた映画。
スコットランド沖のフラナン諸島にある無人島アイリーン・モア島に
交替でやってきた3人の灯台守。
前任者の3人もベテランの責任者と中堅と若者の新人の3人だった。
その若者の顔には殴られた跡があり
灯台守として6週間任務に就くことの厳しさがうかがえる。
・・・
3人で淡々と灯台守の仕事をこなしてゆく日々だったが
嵐の後から一転する。
流れ着いたボート、死んでいるように見えた人、その荷物と思われる木箱を発見した。
その確認のために、若者がロープを使って崖を降りていった。
死んでいると思われた人が起き上がり殴りかかってきた。
若者は海に沈められそうになりながらも、抵抗し石で殴り殺してしまう。
正当防衛であったけれども、その時代に通用するのかは疑わしい。
殺人は縛り首となるというセリフもある。
木箱の中には金塊が3本あった。
これを守るために殴りかかってきたのだ。
・・・
ここで人の所有物である金塊を
自分たちのものにしようとしなければ
厄介なことにはならなかったのかもしれない。
・・・
金塊を分けても
今までと同じような暮らしをし続けてゆくことが大事だと
ベテランのトマスが言う。
・・・
暗い影があったトマスには
自分の妻を見殺しにしたという罪深い過去があった。
落ち着きのない新人の若者のドナルドは
父親がいない子どもということで差別されて生きてきた。
経済的に苦しい思いをしてきたジェームズには
妻と子どもたちがいて守るべきものがあった。
・・・
そんな時に
一艘の船がやってきた。
ボートに乗った人やその荷物について尋ねてきた。
上手くかわすが
無線が壊れていることが分かると
嘘をついたことがばれてしまい
また船が戻り
そして、暴力を振るわれてしまう。
自分達の身を守るためにその2人を殺してしまう。
窓に人影があり、ジェームズ達は追いかけて捕まえてまた殺してしまう。
ジェームズの子どもと同じくらいの子どもだった。
そこから
ジェームズの心が壊れていく。
善人の心は、自分で自分を責め続けるために
壊れてしまう。
損得勘定ができる心はタフ。
・・・
そして
ジェームズは、ドナルドも殺してしまう。
船に乗り、ドナルドを海に沈め、
ジェームズも自ら死を選択する。
・・・
残ったトマスはどうなったのかは描かれていない。
金塊を持っていたので
ほかの土地でどうにか暮らすことはできたかもしれない。
・・・
実際にあった話から作られた映画。
人間は善人であろうとすることが難しい。
善人でいることが難しい時代。
過酷な状況の中では
善人から死んでゆくという話が多くある。
事実は小説より奇なりと言うけれども
実際に
そうなのだろう。
負の連鎖反応が
一度に起こってしまった。