MAGAとオバマケア

まず、トランプ支持の方の記事を読んでいると、オバマは大統領として何もしなかったといった明らかな歪曲した情報がでていた。その言葉を鵜呑みにしてしまう人がいるかもしれないので、事実を提示しておこうと思う。

アメリカの歴史家の大統領の評価は、CBSニュースのサイトでみれる。
https://www.cbsnews.com/pictures/presidents-ranked-worst-best/

ワーストからベストに並べており、2022年９月の時点でトランプは下から3番目の43位。オバマは11位、バイデンは大統領就任後１年半時点での評価だが19位である。トランプは歴代の大統領としてはじめて不名誉にも2回も罷免された。罷免が成立した後、大統領職から引きずり降ろすには上院で3分の２に賛成が必要だが、２回とも３分の２に届かずかろうじて大統領職にとどまることができた。

オバマの一番の功績といえば、歴史上不可能とされた国民皆保険制度にあたるAffordable Care Act（ACA）「医療保険制度改革法」を成立させたことであろう。偉業を成し遂げたオバマに対し、共和党及びトランプは妬みから、蔑んでこの法律を「オバマケア」と呼び、廃止と置き換えを声高に叫び、何度か試みたが失敗した。この法律ができるまでは、私的健康保しかないので、保険料の一部を補填してくれるような、ある一定の規模以上の企業に務めない限り、健康保険を得ることはほぼ不可能だった。しかし、この法律によって、基本的に皆が健康保険に入ることが義務付けられ、保険料は収入に対する一定の割合を超えないように抑えられるので、所得が低い人、学生（２６歳になると扶養者とみなされず、企業に努めている親の私的保険は使えない）でも健康保険に入れるようになった。　

ここからは、YouTubeで閲覧したトップクラスの保険代理店を営む女性エージェントのつい最近の話である。ある白人の夫婦が、Affordable Care Actのもとでの健康保険に加入したいといって、オフィスを訪れた。夫は長年努めていた会社から解雇されたので、会社の福利厚生としての私的健康保険が打ち切られた。トランプに投票したこの男は、Affordable Care Actの保険に加入したいが、オバマケアは絶対嫌だと言う。エージェントの女性は、Affordable Care Actとオバマケアは同じものだといくら説明しても、頑として信じない。別物だと信じきっている。夫婦共々MAGA支持者で、黒人大統領であるオバマの名のつくものは嫌なのだ。エージェントがオバマケアが嫌ならオファーできる保険はないと言うと、わかった、オバマケアでもいいから保険に加入したいという。黒人であるエージェントは、まともな信頼関係を築くことは難しいということを丁重に説明し、別のエージェントを紹介してお引き取り願った。このオリジナルのビデオを見つけることはできなかったが、そのビデオを見て笑い転げてる人の話が、以下のビデオにでている。

Affordable Care Actとオバマケアが別物と理解している人の話は、あちこちでみられる。一般の人、特にプロパガンダのニュースにどっぷり使っているMAGA支持者の理解とは、この程度と思ったようがよい。トランプは、選挙中は保守派のアジェンダであるプロジェクト2025は自分は無関係といっていたが（いつもの見え透いた嘘）、すでにプロジェクト2025に関与している人物数名を次期大統領チームの要職への任命を発表している。　

プロジェクト2025は医療保険改革法（Affordable Care Act）の廃止を明確に求めてはいないが、ACAの主要な部分である65歳未満の低所得者・身障者向けのメディケード（Medicaid）を実質的に解体し、何百万人ものアメリカ人が医療へのアクセスを制限することを目論んでいる。アメリカでは解雇、離婚は当たり前、かなりの子供は高校生になると車の運転をはじめる。銃・麻薬・アルコールへの青少年のアクセスもいたって簡単だ。一般市民にとって、低所得者・身障者になるリスクはかなり高い。他人事ではなく、明日は我が身である。

次の４年間で、自分や家族の利益に相反する候補者に投票したことに対する痛みを、かなりのMAGA支持者は味わうことになるのであろう。まさに、自業自得。残念ながら、ハリスに投票した人々も道連れにして。そして、その痛みは 健康保険にとどまらず、一部の金持ちを除く皆が感じるであろう。