鉄道に関する技術上の基準を定める省令:11.線路構造・建築物 第21~26条
「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」の勉強ノートです。
条文は下記リンクで公開されています。
またこの解釈基準が国土交通省から示されています。
略称については、
鉄道に関する技術上の基準を定める省令 → 技術基準
鉄道に関する技術上の基準を定める省令 解釈基準 → 解釈
鉄道に関する技術上の基準を定める省令 解説 → 解説
と記載します。
今回は第5節線路構造(21~26条)を見ていきます。
◆線路構造
線路周りの構造を図にしてみました。
第21条 施工基面の幅
21条では施工基面(路盤の高さの基準面)の幅について規定されています。性能としては
軌道としての機能を維持できるもの
必要に応じて係員が列車を避けることができるもの
曲線においては車両偏倚、カントに応じて拡大したもの
が必要です。
解釈基準ではより詳細に規定されています。
▶直線区間
解釈基準における「盛土区間及び切取区間」は直線区間を指しているものと思われます。
▶曲線区間
直線区間の幅に加えて、車両偏倚やカントを考慮して拡大する必要があります。
解釈基準で計算式が示されています。
y:拡大量[mm]
C:実カント[mm]
α:係数
β:施工基面からガイドウェイ側壁の天端までの高さ[mm]
θ:カント角度[deg]
▶高架橋その他の構造の区間
通常の地上区間以外をまとめて規定しているものと思われます。
数値で定められていますが、待避等に支障がない場合は縮小できます。
▶新幹線の待避を行う側
新幹線の場合のみ、待避を行う側は風圧を考慮して3.5m以上に拡大する必要があります。
さらに250㎞/hを超える区間では、安全を確保するための措置が必要です。写真は見つけられませんでしたが、フェンスや手すりがあるようです。
超電導リニアはもっと速くて危ないじゃないかと思いましたが、もはや営業時間帯の軌道内歩行はしないのかもしれません。
第22条 軌道中心間隔
隣り合う軌道中心線の間隔を軌道中心間隔と言います。車両がぶつからないように一定の距離が必要です。車両のブレ、旅客が窓から出した手なども考慮する必要があります。解釈基準に詳細が規定されています。
▶直線区間
普通鉄道・特殊鉄道について「列車速度が160㎞/h以下のものに限る」とありますが、国内在来線の最高速度が160㎞/hのため、例外の該当はありません。
新幹線については300㎞/h以上の区間が存在しますが、規定が見当たりませんでした。別の文書で規定されていたりするのでしょうか。
またここで登場した時期誘導式鉄道ですが、IMTSとかいう自動運転の車みたいなものらしいです。愛・地球博で展示された際には法的には鉄道として扱われていたようですが、現在は国内にはありません。
▶曲線区間
車両偏倚に応じて拡大する必要があります。
W:拡大寸法
A:カント差による偏倚量
W1:当該線における曲線による偏倚量
W2:隣接線における曲線による偏倚量
第23条 軌道
軌道は車両の走行に支障がないようなものでなければなりません。
曲率半径が小さいなどの理由で脱線の恐れがある場合は、脱線を防止する設備が必要です。
リニアモータ推進方式の場合はさらに磁石の吸引力に対して安全な構造である必要もあります。
解釈基準では、設計標準以外の設計について、必要な性能を規定しています。
▶普通鉄道の軌道・分岐器
軌道・分岐器の設計は下記2パターンのどちらかで行う必要があります。
「鉄道構造物等設計標準(軌道構造)」
「鉄道構造物等設計標準(軌道構造)」以外
→発生応力・変形、長期安定性、座屈安定性に関する照査が必要です。
▶特殊鉄道(超電導磁気浮上式を除く)の軌道
鋼索鉄道以外
軌道桁・走行路は著大荷重・繰り返し荷重に耐えること
軌道桁の継目は伸縮継目を設けること
磁気誘導式では磁気誘導を支障しない伸縮継目とすること鋼索鉄道
500‰以上の勾配ではコンクリート道床とすること
▶無軌条・磁気誘導式以外の鉄道の分岐器
無軌条(トロリーバス)・磁気誘導式には分岐器はありません。
車両を円滑に案内・通過させることができる線形・構造を有すること
車両通過時の応力が材料の許容応力以下であること
また、分岐器を設置できない箇所があります。
緩和曲線・縦曲線
曲線逓減の緩和曲線において、運転速度・曲率・カント変化率が小さい区間は分岐器の一部を設けることができます無道床橋りょう
地形上やむを得ず、車両の安全な走行に支障しないための措置を講じた場合は設置できます橋りょうの橋台裏
地形上やむを得ず、路盤を強化した場合は設置できます
▶ガードレール
下記の場合は脱線防止のガードレール設置が必要です。
推定脱線係数比=限界脱線係数/推定脱線係数 < 1.2 の場合
その他脱線の恐れのある箇所
なおガードレールは3種類あるみたいです
脱線防止レール
→脱線防止のためのレールです脱線防止ガード
→脱線防止レールを敷設できないPCまくらぎ区間などで、L型アングルを設置するものです安全レール
→落石・積雪の多い箇所に脱線防止ガードを設置すると、レールとの隙間に挟まってしまう場合があります。そのため代わりに安全レールを用います。安全レールは脱線防止ではなく、脱線しても逸走などの大事故にまでは至らないようにする設備です。詳しくは保線ウィキへ。安全レール - 保線ウィキ (hosenwiki.com)
▶リニアモーター推進方式の軌道
リニアモーター推進方式の鉄道としては、都営大江戸線が挙げられます。
車体下部にリニアモーターがついていて、軌間にある銅板(リアクションプレート)との間の磁力によって推進力を得ています。解釈基準ではリアクションプレートの構造について規定されています。
車体下部モーター(リニアインダクションモーター:1次側)とリアクションプレート(2次側)は、安全な走行に必要な間隔を保つこと。
磁気による吸引でも壊れたり外れたりしないこと
モーターとの電磁的作用によって安定した動力を発生可能なものであること。
発生する動力が車体を動かすのに十分な大きさであること
TDKのWEBページにそれっぽい図解があるんですが、ちょっと怪しいな・・・リアクションプレートと1次側コイルがに垂直・磁力線は平行なのは合ってるんでしょうか・・?これだと誘導起電力が発生しないような・・・「周波数の向き」というのも・・・周波数はスカラーじゃないのかな?
▶超電導磁気浮上式の軌道
ガイドウェイ側壁・走行路は、列車走行による著大荷重・繰り返し荷重に耐えられるものであること
橋りょう端の走行路には必要に応じて伸縮継手を設けること
▶磁気誘導式の軌道
走行路の幅は磁気誘導装置の制御幅・車両偏倚を考慮した幅とすること
ガード壁は想定される最高速度・最大新入角でぶつかっても変形しないこと
分岐部の可動安全壁は、十分な強度で進行方向に従って円滑に動作し、車両を安全に通過させることができること
第24条 構造物
盛土切土などの土構造、橋りょう、トンネルなどの構造物は、列車荷重・衝撃を受けても列車走行を支障しないものでなければなりません。設計については、「鉄道構造物等設計標準」シリーズにまとめられています。
その他は別紙第6「許容応力度法による構造物の設計」によることとされています。
事故事例①:松野トンネル崩壊事故
1917年3月26日 官設鉄道岩越線 喜多方駅~山都駅間(松野トンネル) 事故事例②:福岡トンネルコンクリート塊落下事故
1999年6月27日 山陽新幹線 小倉駅~博多駅間(福岡トンネル)
第25条 著しい騒音を軽減するための設備
新幹線の線路には、騒音軽減のための設備が必要です。下記記事で触れているのでご覧ください。
第26条 建築物
鉄道関係の建築物は
予想される荷重に耐えることができる
車両の走行、旅客の利用に特に支障を及ぼすおそれがない
ものである必要があります。ここでいう「建築物」は
線路敷地内の運転保安に関する建築物
こ線橋
プラットホームの上屋
その他これらに類する建築物
とされています。建築基準法第2条1項には、建築基準法における建築物が定義されています。その中で(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)と除かれているものが、技術基準第26条の建築物です。
駅舎についていろいろと紹介されている記事があったので掲載しておきます。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jwpa/48/5/48_253/_pdf/-char/en
以上です。
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