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鉄道事業法⑫:乗継円滑化措置

条文はこちらから。

前回記事はこちら。

◆乗継円滑化措置(法第22条の3)

乗継円滑化措置とは、複数の運送事業者間の乗継をスムーズにするための措置を言います。鉄道事業者は利用者にとって便利な鉄道施設となるように、乗継円滑化に努めなければなりません。その内容は、規則第37条の5に記載されています。意訳すると、

1.直通運転または同一ホームでの対面乗り換え
2.乗継円滑化のための改札口新設、その他の鉄道施設の建設・改良
3.貨物の載せ替えを円滑にするための配線変更、その他の鉄道施設の建設・改良
4.乗車券共通化または乗り換えに関する分かりやすい情報提供
5.その他

とされています。具体例を見ていきます。

1.直通運転または同一ホームでの対面乗り換え

・直通運転
西武池袋線・東武東上線⇔東京メトロ副都心線⇔東急東横線⇔みなとみらい線の5社直通が有名かと思います。東横線に関してはさら2023年3月18日から新線開業した新横浜線と直通運転を開始しました。

・同一ホームでの対面乗り換え
九段下駅における都営新宿線⇔東京メトロ半蔵門線のホーム改良が記憶に新しいかと思います。
もともとは島式ホームを壁で区切って2社局が別々に使用していました(通称バカの壁)が、現在は壁が撤去されています。

https://www.projectdesign.jp/201305/pn-tokyo/000535.php  より引用 バカの壁


2.乗継円滑化のための改札口新設、その他の鉄道施設の建設・改良

・改札口新設
東急東横線の綱島駅では、2003年のバリアフリー工事に合わせ、駅前バスターミナル側に改札口を新設しました。これにより鉄道⇔バスの乗り換えがスムーズになりました。

https://www.mlit.go.jp/common/000170309.pdf  より引用

・鉄道施設の建設・改良
富山ライトレール岩瀬浜駅では、2005年にホーム・駅前広場の改良工事を行い、鉄道⇔バスの乗り換えを段差なしでできるようにしました。


3.貨物の載せ替えを円滑にするための配線変更、その他の鉄道施設の建設・改良

・貨物のための配線変更
これに関しては具体例を発見できませんでした。1986年に旅客営業の一部としての貨物輸送が終了するまでは、荷物係による荷物の積み替えがあったそうです。(国鉄車掌が主人公の漫画「カレチ」にも積み替えのシーンがあった気がします。)この積み替えを考慮した配線変更のことを言っているのでしょうか?

これに該当するが不明ですが、JR貨物は中期経営計画2023において、貨物駅の作業効率化を目指して「スマートターミナル」を構築することを掲げています。

4.乗車券共通化または乗り換えに関する分かりやすい情報提供

・乗車券共通化
2001年にJR東日本のSuicaが導入され、その後各地で様々な交通系ICが出現するようになりました。現在ではICカードの種類を気にせず使える(相互利用)ことが多く、電車・バスなど異なる交通手段でも1種類のICカードだけで利用できる(共通化)ようになっています。

・情報提供
東京の都心部における駅構内案内サインについては、東京都が事業者間での共通化指針をだしており、複数事業者が入る駅においても統一デザインで分かりやすいサインシステムが用いられています。

新宿駅の共通デザインサイン https://news.livedoor.com/article/detail/11487335/  より引用


5.その他

・駅前駐車場の整備
郊外では駅前に無料駐車場があったりします。これはパーク&ライドという考え方で、公共交通でのアクセスが悪い鉄道駅までは自家用車、駅前に駐車してそこから鉄道利用をするフローのことです。これも自家用車⇔鉄道の乗継円滑化にあたります。

◆協議の裁定など

乗継円滑化措置を行うにあたり、事業者間で協議調整が必要になります。しかし常に円満に進むわけではなく、方法や金銭面で揉めて話が進まないことがあるようです。法第22条の3第2項以降では、協議が勧められない場合に、国土交通大臣が間に入って話を進めさせるためのルールが記載されています。

また法第22条の4では、事業者が単独で進めようとしている建設・改良計画についても、円滑化措置をした方が明らかに利便性が高まる場合には、国土交通大臣が措置の勧告をできるとされています。

参考

(2)公共交通の利用円滑化に向けた取組み (mlit.go.jp)
スライド 1 (mlit.go.jp)
新宿駅「ダンジョン化」の一因? 案内表記ようやく統一へ...改めて見ると、確かにバラバラ - ライブドアニュース (livedoor.com)
長期ビジョン・中期経営計画・事業計画 | JR貨物 日本貨物鉄道株式会社 (jrfreight.co.jp)
(2)公共交通の利用円滑化に向けた取組み (mlit.go.jp)

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