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鉄道事業法⑧:輸送の安全の確保

条文はこちらから。

前回は運行計画・運輸に関する協定についての条文を勉強しました。

今回は輸送の安全の確保に関して勉強します。

◆安全管理規程

➢内容

鉄道事業において一番重要なものは・・・「輸送の安全の確保」です(法第18条の2)
輸送の安全を確保するために、鉄道事業者は「安全管理規程」を定め、国土交通大臣に届け出なければなりません(法第18条の3)。安全管理規程の内容を超要約すると下記のようになります(規則第36条の3)。

1.運営方針
 ・基本方針、法令順守、安全への取り組みに関する事項
2.管理体制
 ・経営責任者、安全統括管理者、運転管理者、乗務員指導管理者の責務に  関する事項
3.管理方法
 ・情報伝達、事故災害への対応について・運転・施設・車両の運用や保守について・鉄道従事員の資質維持について
4.安全統括管理者の選任に関する事項
5.運転管理者の選任に関する事項

➢安全統括管理者

輸送の安全を確保するために、一定の実務経験と経営決定権を持つ人材から選定されます。
安全統括管理者の要件として下記が定められています。

・鉄道安全に関する実務が通算10年以上(又は国土交通大臣に認められたもの)
・輸送安全の確保に関する業務を統括管理する権限を持っていること

➢運転管理者

運行管理、乗務員の資質保持などを行うために、一定の実務経験を持つ人材が選定されます。運転管理者の要件として下記が定められています。

・鉄道安全に関する実務が通算10年以上(又は国土交通大臣に認められたもの)
・運行管理、乗務員の資質保持などを管理する権限を持っていること

➢乗務員指導管理者

乗務員の資質管理のため、乗務員が所属する事務所ごとに選任する必要がある役職です。運転管理者を補助する立場です。

➢実際の安全管理規程

実際に安全管理規程を作成するにあたっては、国土交通省からガイドラインが示されています。

https://www.mlit.go.jp/unyuanzen/pdf/tebiki_guideline.pdf

鉄道各社はHPで安全管理体制を公開していることがあります。

(例1)JR西日本
安全管理体制:JR西日本 
安全統括管理者:鉄道本部長
運転管理者:運輸部長(在来) 新幹線運輸部長(新幹線)
乗務員指導管理者:乗務員所属の所属長

(例2)東京メトロ
安全統括管理者:鉄道本部長
運転管理者:運転部長
乗務員指導管理者:乗務管区長 検車区長

◆事故の報告

鉄道事業者は、重大な鉄道事故が発生した際・発生しそうになった際には、それを国土交通大臣に届け出なければなりません(法第19条)。
届け出の詳細は鉄道事業法施行規則には記載がなく、「鉄道事故等報告規則」に記載されています。
※法では「届け出」ですが事故報告規則では「報告」になっています。厳密に使い分けてはいないようです。

➢事故の種類

報告の必要がある事故をまとめると下記のようになります(鉄道のみ・報告規則第3条)。

1.鉄道運転事故
 ・衝突、脱線、火災
 ・踏切障害(踏切で人や車とぶつかる)
 ・道路障害(踏切以外で人や車とぶつかる)
 ・鉄道人身障害(人の死傷を生じる)
 ・鉄道物損(500万円以上の物損)
2.輸送障害
 ・輸送に障害を生じたもの
3.電気事故
 ・感電死傷
 ・電気火災
 ・感電外死傷(電気施設に関連する死傷で、感電以外)
 ・供給支障(受電3000V以上の電気施設の故障で起きた供給支障)
4.災害

また事故が発生しそうな事象についても報告が必要です(報告規則第4条)。ざっくりまとめると下記のようになります(鉄道のみ)。

1.閉そくや信号の取り扱いミスをしたとき
2.保守や工事をしている区間を走行したとき
3.車両が脱線したとき
4.線路や運転保安装置が壊れたとき
5.車両が壊れたとき
6.車両から危険品や火薬などが漏れたとき

➢報告の方法

事象に応じて報告の方法が定められています。(報告規則第5条)
条文を読むとあまり網羅的に記載されていない気がしますが、実際の運用はどうなっているのでしょう。

1.鉄道運転事故の場合
先ほど挙げたもの+下記が報告対象です。

 ・死者は1人以上
 ・ケガは5人以上
 ・遮断器の無い踏切の死亡事故
 ・係員のミス、施設の故障が原因のもの
 ・3時間以上運転支障したもの

①発生後速やかに地方運輸局長に電話or口頭で速報
②発生から2週間以内に鉄道運転事故等報告書を地方運輸局長に提出

2.輸送障害の場合
運転支障3時間以上のときは
①発生後速やかに地方運輸局長に電話or口頭で速報
②発生から2週間以内に鉄道運転事故等報告書を地方運輸局長に提出

・運転支障30分以上のときは
①発生の翌月20日までに鉄道運転事故等報告書を地方運輸局長に提出

3.電気事故の場合
①発生後速やかに地方運輸局長に電話or口頭で速報(供給支障は不要)
②発生から30日以内に電気事故等報告書を地方運輸局長に提出

4.災害の場合
①発生後速やかに地方運輸局長に電話or口頭で速報
②被害額が1000万円以上の場合、応急処置完了から10日以内に災害報告書を地方運輸局長に提出

◆安全報告書

ここまで述べてきたような安全の確保に関する取り組みについて、国土交通大臣は情報を整理して公表し(法第19条の3)、各社は安全報告書にまとめなければなりません(法第19条の4)。安全報告書は各社がHPで公開しています。

以上。

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