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鉄道事業法④:認定鉄道事業者制度

条文はこちらから。

前回は鉄道の工事の流れについての条文を勉強しました。

今回はこれに関連して、認定鉄道事業者制度について勉強します。
あくまで筆者の勉強用ノートです。解釈に誤りがある可能性があります(違ったら教えてください)。かなり意訳している部分があり、用語も分かりやすく言い換えている箇所があります。必ず条文原文を確認するようにしてください。

認定鉄道事業者制度とは

大雑把に言うと、国が認めた十分な技術力を持つ鉄道事業者は、鉄道施設・車両の工事の一部を自社内でのチェックや簡略化された手続きだけで行うことができるという制度です。

昔は「設計管理者制度」が運用され、設計確認については技術力を保有する特定の人物に対して権限を与えていました。また竣工確認は国が行っていました。しかし手続きが煩雑、権限が属人的などの問題があり、平成11年の鉄道事業法改正で「認定鉄道事業者制度」が制定されました。これまでとは違い「組織」を認定対象とし、竣工確認についても権限を与えることで、手続きの合理化を図っています。

認定鉄道事業者は、下記の手続きについて、申請書・届出書の記載事項・添付書類の一部を省略したり、簡略化された手続きで実施することができます。

認定鉄道事業者制度で簡略化できる手続き

認定は、設計業務の種類ごとに行われます。(規則第23条)
・鉄道土木施設(鉄道線路・停車場・車庫及び車両検査修繕施設)
・鉄道電気施設(運転保安設備・変電所等設備・電路設備)
・車両の設計

認定の申請

認定をもらうためには、鉄道事業者から国土交通大臣に認定申請書を提出する必要があります。「業務の能力」が認定基準の一つとされています(規則第24条1項4)

認定基準

認定基準である「業務の能力」については規則第24条の2に記載があります。認定には2種類あります。

  • 一般認定(規則第24条の2-1号)
    鉄道施設の設計と竣工確認に関する手続きを簡略化できます。認定の更新周期は5年です。

  • 特定認定(規則第24条の2-2号)
    鉄道施設の設計に関する手続きだけ簡略化できます。認定の更新周期は10年です。

認定基準は、基本的には組織の中で権限・責任の所在が明確化され、適切な設計業務・竣工確認ができる体制であることが求められます。一般認定では下記の要員を配置する必要があります。(特定認定は設計管理者のみ)

一般認定のために必要な要員

※1 短大・高校で土木・電気・機械の学科を修めている場合は7年以上
大学で土木・電気・機械の学科を修めている場合は5年以上に短縮されます。

設計管理者の登録試験

認定基準において、前述のとおり設計管理者が技術士or電験1種or登録試験合格者であることが求められます。この「登録試験」については、規則第24条の3~19に記載があります。

登録試験実施機関とは(規則第24条の3)

国土交通大臣に「登録試験」を実施できるものとして「登録」された者を「登録試験実施機関」といいます。ややこしいですね。他の用語を使うなどして何とかならなかったのでしょうか。

登録試験実施機関として登録するための要件(規則第24条の4)

下記すべてに適合している必要があります。

  1. 試験内容
    鉄道施設・法規の一般事項と、土木・電気・車両の専門事項を問う試験を行う必要があります。(規則別表第7の2)

  2. 試験問題作成方法
    下記の要件に適合するメンバーを2人以上含む6人以上のチームで作成する必要があります。
    理学・工学で3年以上大学教授・准教授であった者
    理学・工学の博士号取得者
    登録試験合格者or技術士で設計実務5年以上の者
    大学・高専で理学・工学を修め、設計実務15年以上の者

「登録試験実施機関」の「登録」更新(規則第24条の5)

登録試験実施機関としては、5年に1度登録の更新を行う必要があります。

登録試験実施機関は、現状で鉄道総研のみです。
鉄道設計技士試験が唯一の登録試験です。

簡略化された手続き

認定鉄道事業者は、工事施行認可・工事計画変更認可・鉄道施設変更認可を簡略化できます。簡略化された手続きを実施する場合は、認定事業所が作成した設計確認書を添付する必要があります(規則第28条の3)。認定事業所が適切に鉄道施設を設計・確認したことを示すのが設計確認書です。

一般認定の簡略化された手続き・鉄道施設(規則第27条)

認定事業者が自力で設計確認等を行うため、申請すべき設備がグッと減る(別表第1→第5)、図面添付が省略できるなどのメリットがあります。
認可が必要なもの以外は届出で済むことになっています。

一般認定の簡略化される手続き

特定認定の簡略化された手続き・鉄道施設(規則第27条の2)

一般認定ほどではありませんが、申請すべき設備が減り、図面も省略できます。認可が必要なもの以外は、別表第7に従って事後届出します。

特定認定の簡略化される手続き

簡略化された手続き・車両(規則第28条・28条の2)

車両の確認等についても簡略化された手続きを取ることができます。特に車両の構造及び装置に関する部分が簡略化されます。

車両に関する簡略化される手続き

機構の設計

「独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)」が設計確認・竣工確認する場合は、一般認定と同様に簡略化された手続きを取ることができます(法第14条5項)。対象施設は「独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法」の第13条5項に記載される施設の建設・大改良です。(規則第29条)

独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法  第13条5項
国土交通省令で定める規格を有する鉄道(新幹線鉄道を除く。)又は軌道に係る鉄道施設又は軌道施設の建設及び政令で定める大規模な改良(以下「大改良」という。)を行うこと。

今回はここまで。

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