鉄道事業法⑤:線路の貸付・譲渡
条文はこちらから。
前回は認定鉄道事業者制度についての条文を勉強しました。
今回は鉄道線路を他事業者に使用させる・譲渡する際の決まり(法第15条)について勉強していきます。
他事業者に鉄道線路を使用させる場合
これは第一種・第三種事業者が第二種事業者に線路を使用させるパターンです。下記項目について国土交通大臣の認可が必要です。
使用料
使用契約書の写し、使用料の算出の基礎を記載した書類が必要です。(規則第30条)その他の国土交通省令で定める使用条件
使用条件の詳細は規則第30条に記載があります。
1.使用料及びその収受方法
2.使用の開始予定日及びその期間
3.管理の方法
4.鉄道事業の運営に重大な関係を有する事項(あれば)
線路使用料の算出方法はこれといって定められたものがなく、事業者の状況に応じてかなりのパターンがあるようです。例をいくつか挙げておきます。
(例1)JR貨物→JR各社への線路使用料
JR貨物は多くの路線で第二種鉄道事業者として運行しており、JR各社に線路使用料を支払っています。この場合の線路使用料は、アボイダブルコスト方式で算出されます。要約すると、
JR貨物が走ることで発生した費用のみを線路使用料とする
JR貨物が走らなくても発生する保線費など固定費は線路使用料に含めない
という内容です。配線略図.netさんの図が分かりやすかったです。
JR分割時にJR貨物が赤字になることが予想されたため、線路使用料を安く抑えるための算出方式です。
(例2)JR貨物→並行在来線事業者への線路使用料
JR貨物の走行区間の一部は、新幹線開業により上下分離された並行在来線区間があります。この場合は相反する2つの事情が存在します。
並行在来線事業者は一般的に経営が厳しい(新幹線に人を取られる)ため、線路使用料で稼ぎたい
JR貨物も経営状態が良くないので線路使用料をなるべく払いたくない
これらを解決するために、「貨物調整金」が設定されています。線路使用料は並行在来線事業者が稼げる額に設定し、JR貨物はアボイダブルコストで支払い、JRTTが不足分を「貨物調整金」として支払います。
なぜJRTTが肩代わりするのかというと、この問題はそもそも新幹線開業によるものだからです。JRTTは新幹線施設をJR各社貸して新幹線運行をさせており、「貸付料」を受け取っています。貨物調整金の財源はこの新幹線の貸付料です。
(例3)東京都交通局→東京メトロへの線路使用料
東京メトロ南北線の白金高輪~目黒駅間は、メトロが第一種・都営(三田線)が第二種として運行しています。厳密には施設ごとに細かく決められているようなのですが、ざっくりまとめると列車運行本数の比率に応じて保守費用や運輸収入を折半しているようです。
他事業者に鉄道線路を譲渡する場合
下記項目について国土交通大臣の認可が必要です。
譲渡価格
譲渡契約書の写し、譲渡価格の算出の基礎を記載した書類が必要です(規則第31条)。その他の国土交通省令で定める譲渡条件
使用条件の詳細は規則第31条に記載があります。
1.譲渡価格及びその収受方法
2.譲渡の期間
3.鉄道事業の運営に重大な関係を有する事項(あれば)
内容までわかる譲渡の例があまり見つからなかったのですが、北総線の譲渡の例を挙げておきます。
(例)都市基盤整備公団→千葉ニュータウン鉄道への線路譲渡
都市基盤整備公団とは、都市部の住宅建設・開発・整備を目的とした組織で、現在は都市再生機構(UR)となっています。また千葉ニュータウン鉄道は第三種鉄道事業者で、運行は北総鉄道(第二種)が行っています。
千葉を走る北総線は、もとは公団が建設した「北総・公団線」でした。公団が改組・URとなった際に線路譲渡が行われました。譲渡価格は12.5kmで193億円でした。
以上。
参考
第三セクター鉄道に支給される「貨物調整金」とは? - 現役鉄道マンのブログ 鉄道雑学や就職情報 (kys-honpo.com)
第三セクター鉄道に支給される「貨物調整金」とは? - 現役鉄道マンのブログ 鉄道雑学や就職情報 (kys-honpo.com)
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